元国鉄の車両設計者として、201系の開発に当たられたのが佐々木拓二氏です。
1969年に国鉄に入社後、回生ブレーキが使えるチョッパ技術を載せた新型車両(201系)を投入すべく奮闘された、鉄道史に残る偉大な人物です。
それだけに、201系への愛も本物。こんなユニークなエピソードが語られています。
ピー音は最高のサウンド
電子音がうるさいとの苦情もあった。私にとってはチョッピングの際に出る「ビー」という音はチョッパの動作を示す快い音であったが、 これが快音に聞えるのはお前だけだと叱られた。音への苦情は関西地区で起きたものの、関東地区では何故かさほどは騒がれなかった。
出典:JREA 1)
流石開発者というだけあって、一般的にうるさいと言われるあの音にも愛着を感じておられますね(笑)
201系のピー音といえば、チョッパ作動時(チョッピング時)に鳴動している、あのうるさいノイズのことです。
丸窓電車さんの動画にて、わかりやすい例があったので掲載しておきます。
動画内にて、201系が加速・減速する両方の時にずっと「ピーーーーーー」という音が鳴っているのがわかるかと思います。
201系が大阪環状線へ在籍していた時に私もよくこのピー音を聞いていましたが、正直あまり好きになれないノイズでした…。
201系開発にあたって
201系は、国鉄としては初めてチョッパ制御(電機子チョッパ制御)が採用された電車です。
チョッパといえば現在のVVVF制御に連なる新しい電車の制御技術で、回生ブレーキが使えるようになるメリットがありました。
回生ブレーキとは
これまでの電車では、減速する際に回っている車輪をブレーキ用の金属で押さえつけ、その摩擦によって電車を止めていました。これは運動エネルギーを熱エネルギーに変換することを意味します。
熱エネルギーは結果的に大気へ放出されるので、単純にエネルギーを失うだけでした。
しかし回生ブレーキは、回っている車輪のエネルギーを電気へ変換して発電所に戻すことで、他の電車が動くエネルギーとして再利用できるメリットがあります。
現在はこれをVVVF制御で行っていますが、この当時はまだVVVFが確立されておらず、営団地下鉄(今の東京メトロ)6000系でチョッパ制御が確立されようとしていた時でした。
当時の国鉄は労働組合が強くなりすぎ、新車製造がしづらくなっていた時期。
佐々木さんと201系についてもその状況は同じで、当時「現場の協力が得られないので現車試験がしづらくなり、1年経っても試験ができなかった」と回顧しています。
それでも佐々木さんは様々な機転や奮戦の末、1977年まで設計の任にあたり、最終的に201系の竣工まで漕ぎ着けました。
全車引退までまもなく
現在の201系は、全国で唯一大和路線のJR難波~加茂間における普通電車にてその姿を見ることが出来ますが、2024年度末をもって引退することが明らかとなっています。
チョッピングを行っている最中に放たれる、あのやかましい……失礼、快い「ピー」音も、聞ける内に聞いておきましょうね。
201系についてはもう少し面白い話があるので、今後何度か記事にしたいと思います。
関連リンク
参考文献
- JREA Vol.53 No.6「らくがき帳 チョッパ制御電車201系、その誕生までの思い出」、佐々木拓二、2010年
- Shin-ya Ohnishiさんのツイート