先日お伝えした201系のコラム。好評なようで嬉しい限りです。
201系といえば、長らくJR京都線/神戸線や東京の中央快速線などで用いられてきたこともあって、比較的駅間距離が長い路線向けの電車であると思われがち。
ところが、開発者いわく決してそうではなく、どちらかというと短距離区間向けな電車であるようです。
実は短距離用
冒頭でも書いたように、201系といえばJR京都線・神戸線、中央快速線など、比較的停車駅までの距離が長い路線を走っていたイメージもあり、よく「201系は駅間距離が長い路線用」と語られることが多い電車です。
【201系が新製投入された線区】
・[長]中央快速線
・[中]中央、総武線
・[長]東海道、山陽線(現在のJR京都、神戸線)
【転入した線区】
・[長]京葉線(元中央線)
・[短]大阪環状線(元東海道、山陽線)
・[長]大和路線(元東海道、山陽線・大阪環状線)
が、開発者の佐々木氏によればそれは適切ではなく、むしろ「201系は駅間距離が短い路線用の電車である」と語られています。
佐々木さんの弁
上記路線へ投入されたのはチョッパの特性の使い方によるものであり、本来は大阪環状線など駅間距離が短い線で使うのがぴったりなのだそうです。
チョッパ制御電車は回生ブレーキの特殊な成約から定格速度を高く設定せざるを得なかった。このことが逆に、力行時の高速性能に重きを置いた運用に供されることになってしまった。当時のスジ屋さんには、省エネ運転といった概念は、まだ理解されてはいなかった。この結果、本来の目的であった回生ブレーキの高頻度仕様とは異なる使われ方になってしまった。(中略)
チョッパ制御電車に相応しい線区としては、関東圏では山手線、関西圏では大阪環状線だと考えていた。
出典:JREA 1)
専門用語が多いので、ちょっと平易な文章に直してみましょうか。
チョッパ制御電車は、回生ブレーキ(電気を生み出すブレーキのこと)の特殊な成約から、モーターが無理をしない速度設定を高めにせざるを得なかった。このことが逆に、早い加速が必要な線への運用に使われることになってしまった。
当時のダイヤを作る人には、省エネ運転といった概念はまだ理解されてなかった。
この結果、回生ブレーキを頻繁に使ってたくさん発電をし、結果的に省エネになる…という本来の使われ方とは違う使われ方をするようになってしまった。
チョッパ制御電車に相応しい線区としては、関東圏では山手線、関西圏では大阪環状線だと考えていた。
確かに、たくさんブレーキを使えば使うだけ電気を生む機会が増えるので、短距離で何度も停車するような路線の方が向いているといえますね。
大阪環状線以外には山手線も適合路線と考えていたものの、当時山手線ではATCの導入を検討していて、その役目は後輩の205系へ譲ることになりました。
大阪環状線へやってきたものの…
時は流れて2005年。本来の最適路線とされた、大阪環状線へ201系がやってきました。
しかし、実際には大阪環状線にやってきた際に問題も発生したそうです。
大阪環状線の車庫である森ノ宮支所で検査を担当されていた方から、こんなエピソードが残されています。
東海道・山陽本線で快速運転をしていた201系が大阪環状線に入り、当初は車両トラブルが頻繁に発生したという。大阪環状線は駅間距離が短く、曲線も多いことから「加減速やカーブの多さからモーターや台車に負荷がかかりやすく、例えば台車から異音がするといったこともありました。そういったところに手を加えて少しずつ改善していきました。
出典:https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/1187999.html
意外にも、駅間距離が短いことが原因で201系の足回りを中心に負荷がかかっていたとのこと。
これまでJR京都線・神戸線などの駅間距離が長い路線で走り続け、データや機器的なクセが長距離向けとなっていたこともあったのでしょうか。
2005年~2019年の14年間、ようやく「本来の使い方」であった大阪環状線を走ることが出来た201系。
しかし、大阪環状線専用形式となる323系の投入で、現在では姿を消しています。
関連リンク
参考文献
- JREA Vol.53 No.6「らくがき帳 チョッパ制御電車201系、その誕生までの思い出」、佐々木拓二、2010年
- Shin-ya Ohnishiさんのツイート