【これはすごい】京阪京津線、80型保存車が蘇る…!!

【これはすごい】京阪京津線、80型保存車が蘇る…!!

撮影:82ちゃんねる様

御覧下さい。このピッカピカな京津線の80型電車を…!!!

80型の車両保存を有志で行う「82ちゃんねる」は、かつて京津線で運用されていた80型82号車の修復作業を終え、走行していた当時の美しい姿へ復刻させたと発表しました!

こうして見ると、50年前に誕生したとは思えないおしゃれな電車ですね…

 

80型とは

撮影:鉄道プレス編集部

京津線といえば、地下鉄・登山鉄道・路面電車のあらゆる環境に対応する超ハイテク電車「800系」が現在使用されていますが、その先輩である80型という電車がかつて運行されていました。

1961年に誕生した80型も後輩と同じく、登山鉄道・路面電車の両方に対応したハイスペックな電車です。

 

デザイン

撮影:82ちゃんねる様

冒頭にも書きましたが、大型の曲面ガラスを用いて丸みを帯びた先進的なスタイルは、20年後にデビューした600形よりも流麗でおしゃれなデザイン。

また京津線特有の急カーブ区間に対応出来るよう車体長は15mと短く抑えられ、道路にある停留場用にドア下に可動式のステップも備えられていました。

撮影:鉄道プレス編集部

カラーリングは、これまでの京阪電車にはなかった青緑色を採用

このカラーは長らく京津線特有の色となり、後輩である800系にも「スカイブルー」として引き継がれました。

 

撮影:鉄道プレス編集部

現在は、統一ブランディング化の一環で緑色になっています。

800系の色は「琵琶湖の色」をイメージしたものでしたが、80型の色は「京都東山の緑に融け込む色」として提案された色なのだそうです。

 

「最強の吊り掛け電車」

撮影:82ちゃんねる様

主電動機(モーター)にはデビュー当時最強の路面電車だった、大阪市電のPCCカー「3000形(41.25kW)」をも超える、定格出力45kWを備えた大馬力電車でした。

80型の駆動形式は、この時期でも旧型となりつつあった昔ながらの「吊り掛け駆動式」ではありますが、

・少ない待避駅(途中1駅<四宮>だけ、あとは終点しかない)まで逃げる為、脅威の加速度3.2km/h/s
・これを実現する為、歯車比は吊り掛け駆動車として異例の高ギア比(59:14 <4.21>)
・(吊り掛けなのに)回生ブレーキも搭載
・定速維持機能も搭載

…などなど、その辺の新型カルダン駆動電車を鼻で笑うほどのハイスペックぶりでした。

過去の鉄道史を振り返っても、間違いなく「史上最強の吊り掛け電車」(の1つ)といえるでしょう。

 

当時の走りの様子がこちら。

グオオオオ」という音を上げながら爆走している様子がよくわかる良い動画です。

 

後輩の800系共々、京津線へのハイスペ車両投入は(過酷な路線事情という背景があれど)伝統なのですね。

回生ブレーキが搭載された背景には、以下の事情があります。

1つ目は、ブレーキ力を確保する為。いわば、下り坂をエンジンブレーキで走る車と同じ原理で、摩擦ブレーキだけだと焼け焦げた時に止まれなくなる可能性がある為。

2つ目は、普通のブレーキだけだと、ただでさえ路面電車規格で小さい車輪が山岳路線の下り坂で多量に削れ、頻繁に交換する必要がありメンテナンスコストが上がる為です。

その後1997年に実施された京津線の地下鉄化を機に、先程掲載した800系へバトンタッチし、京阪三条~御陵間と共に廃止されていきました。

 

 

保存までの流れ

撮影:82ちゃんねる様

そんな80型は、先にも述べたように1997年の京津線三条駅~御陵駅の地下鉄化と1500V昇圧によって廃止されていきましたが、81-82号車の2両だけは、浜大津駅の側線で5年に渡り留置されてきました。

2002年9月、浜大津で長らく動きがなかった81-82号車が錦織車庫へ回送されます。

この動きに対し「解体の為に廃車回送されたのでは」という噂がネット掲示板で流れたことで、同車を保存しようと、現在の理事長の方が単身で京阪電鉄へ交渉のために乗り込まれます(行動力…)

この当時はTwitterなどの各種SNSはまだなく、ネット掲示板が最新の情報を得る場所でした。

その後、保存に賛同するメンバーを増やしていき、2003年にはNPO法人「京津文化フォーラム82」が立ち上がります。

驚くことに、同年には京阪電気鉄道との80型譲渡申し入れの契約を結び、移転先が決まるまでは錦織車庫にて留置されることになりました。

錦織車庫で保存する代わりに、京阪大津線のウェブサイト(keihan-o2.com)の管理やイベント運営の協力を行う関係が構築され、10年近くに渡ってこの関係が続きました。

 

撮影:82ちゃんねる様

しかしながら2015年。京阪側が持株会社化(京阪ホールディングス)を見据えて運営体制や方針が変わったことで、「錦織車庫でこれ以上の留置は出来ない」と突きつけられたことから、理事の方が急遽滋賀県高島市に土地を見つけ、2015年11月末に移転します。

しかし、2016年に移送に尽力された理事の方が48歳の若さで逝去され、また法人としての資格がなくなったことで運営不能となり、2017年をもって法人組織が解散してしまいます。

高島市に安住の地を見つけ、なんとか廃車の魔の手を免れた80型ですが、ここでまたしても危機に瀕します。

 

撮影:82ちゃんねる様

その危機の中、朝日新聞が2021年にこの顛末を掲載した記事を公開したり新たにWebサイトを公開したところ、手伝いをしたいと十数人の有志が集結。

2021年9月から、再び80型保存の為のアツいプロジェクトが動き出したのでした…!

下記節からは、プロジェクトが復活した後の具体的な作業内容を掲載していきます。

 

メンテナンスの作業内容

2022年4月

撮影:82ちゃんねる様

プロジェクトが開始した2022年4月の姿。塗装がところどころ剥げ落ちていて、かなり痛々しい様子ですね…

皆さんでいたわるように優しくパテを塗って、鉄板が露出しサビが浮き出ていた部分をまず修復していきます。

撮影:82ちゃんねる様

大きく剥離し、サビと段差が出来た部分をグラインダーで削っていきます。

サビ止めの為にパテと塗装を行う様子。  撮影:82ちゃんねる様

パテを塗りおわった後の様子。ひとまずは応急処置です。  撮影:82ちゃんねる様

また、サビは車体外板だけに留まらず、見えない車体下にも行っていきます。   撮影:82ちゃんねる様

 

 

 

 

撮影:82ちゃんねる様

パテを塗ったあとの80型全景。サビの部分が消えました。

 

2023年7月

撮影:82ちゃんねる様

2023年7月。台車枠の塗装が行われました。そう、全般検査を受けるとピカピカになるあの部分です

撮影:82ちゃんねる様

ハケを用いて細かく塗っていきます。保存会の方の愛を感じる一コマです

撮影:82ちゃんねる様

塗装のための下地塗りの様子。この時点でサビで痛々しかった箇所がだいぶ消え失せていますね…!

 

2023年11月~完成

撮影:82ちゃんねる様

2023年11月4日。修復作業も佳境を迎えます。

車体へ再塗装の為にマスキング作業と、前面部塗り分け部分の型取りを行っていきます。

マスキングとは

塗装時に色を塗らない場所を保護する為、シールやテープなどで一時的に覆う作業のこと。
大雑把に色を吹き付けても、その部分のシールを剥がせば元の状態のままを維持できます。

 

マスキングは尾灯や窓枠にはもちろん、車番・社章にも行われます。  撮影:82ちゃんねる様

 

撮影:82ちゃんねる様

マスキングも終え、ついに塗装がスタート。まずは車体の大多数を占めるアイボリーを塗っていきます

撮影:82ちゃんねる様

アイボリーを少し多めに塗って、あとから青緑色を上から塗るようです。

それにしても11月の滋賀県は寒そうですね…写真からも伝わってきます

撮影:82ちゃんねる様

11月26日。アイボリーの塗装が終わったので、最後の工程である青緑色との塗り分け部分のマスキングを開始します。

撮影:82ちゃんねる様

塗り分けの境界となる部分に粘着テープでマスキングを実施。80型の象徴でもある青緑色を塗っていきます。

完成まで後少し…!

 

 

撮影:82ちゃんねる様

そして……2023年12月。ついに80型の再塗装が完成しました。ピッカピカですね…!!

本当は電鉄のプロの方がやることを、保存会の皆さんだけでやっているのが本当にすごい。

 

マスキングされた部分も綺麗にまっすぐ塗り分けられています。いやはや、美しいなぁ…  撮影:82ちゃんねる様

 

保存の会よりメッセージ

撮影:82ちゃんねる様

最後に、保存の会である「82ちゃんねる様」からメッセージを頂いたので、下記にて掲載させて頂きます。

京阪82号保存会『82ちゃんねる』です。
2021年の朝日新聞の記事をきっかけに参集したメンバーで82号の修復、清掃、維持管理を行っております。

このたび、継続実施していた車体の塗装が完了いたしました。
夏季と積雪期の休止期間を挟むため実質およそ半年しか稼働できない中で、月1-2回の会合と作業を行い、車両工場では通常2週間程度で完了する車体修繕と再塗装に
2年かかってしまいましたが、このたび塗装完了の運びとなりましたのでみなさまにご報告する次第です。

最初の会合の段階で、車両の保存継続を断念せざるを得ないほどの致命的な傷みがなかったことは確認していましたが、著しい錆びの進行をとかく止めることが先決であり、
少ないメンバーがそれぞれに課題箇所を見つけ、課題と進行状況を共有し、一方でこだわりすぎて作業に時間を取られないことも考えながら、楽しんで作業をすることができました。
外板の塗装は完了いたしましたが、車内はほぼ手付かずで残っているため、清掃や修理を今後も引き続き継続して参ります。

朝日新聞の記事公開以来、クラウドファンディングをというお声もたくさん頂いていることは重々承知していましたが、技術を有した少数精鋭のメンバーが結集し手弁当で作業を進める
体制が整っており、自分たちで塗装する場合に必要な資材自体は特段高額なものではない(いっぱんに電車を1両外注で塗装すると60万円ほど掛かります)ことと、みなさんからお金を
頂いてしまうと作業に義務感が発生し出資された方の期待に応える必要が出てきてしまい私を含む彼らが「楽しみながら」作業を進めることを阻害してしまう懸念があったため、
今回は実費と手弁当で作業することをメンバー合議のうえ決定しておりました。

昨今、名車の引退の報に触れるたび、「保存するべきである」「解体してはならない」と仰る方がたくさんいらっしゃいますが、鉄道会社・運送会社との調整ならびに
土地探しの手間を鑑みてもこれらは決して簡単なことではありませんし、そして実際に保存されたとしても「保存されてよかった」と評論に終始してしまい
現地に足を運ばない方も多いのではないでしょうか。
人の思いと縁と少しの幸運があって保存された車両たちも、時間と人の手をかけ続けなければたちまち鉄くずに帰してしまいます。
既に私有地に静置されている車両に関しては、修繕に必要なのはむしろ人の手と時間です。
今回の82号の保存活動をご覧いただき、保存車両に少しでも興味があるみなさまが、お近くの保存会の門戸を叩き、修復作業に参加されるようなことがあればこれほど嬉しいことはありません。

もちろん弊保存会「82ちゃんねる」でもご参加希望の方をお待ちしております。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

増大するサビを食い止め、綺麗な保存状態を維持すべく、有志で行われた80型の保存プロジェクト。

いまどきのクラファンではなく、皆さんが手弁当で行われるアツい企画がこれまでにあったでしょうか…。

上記にも記載されていますが、今後は車内の修繕・清掃を継続して行っていくとのことです。

 

関連リンク

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参考文献

  1. 82ちゃんねる 京阪80型82号保存プロジェクト最終章
  2. 京津文化フォーラム82
  3. 煤式自動連結器
  4. 朝日新聞「京阪の名車、解体まぬがれたが痛々しい余生 尽力も維持管理難しく
  5. 朝日新聞「京阪80形、保存プロジェクトが始動

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