JR貨物は、第二四半期における決算の補足資料を発表しています。
その中において、僅かですが「貨物新幹線」のイメージ画像が登場しており、大きな話題を呼んでいます。

それがこちら。
ブルーを基調とした、シルバーとのツートン車両となっています。EF210形「桃太郎」や智頭急行のHOT7000形「スーパーはくと」に似ていますね。
従来の貨物列車のようなコキ形貨車にコンテナを積載するのではなく、車両内部へパレットを積み込む電車形のタイプに見えます。
かつてあった幻の計画
貨物新幹線は、かつて東海道新幹線が計画されていた際にも登場しています。

「61-20」とナンバリングが振られたこの車両は、クモル145系や「スーパーレールカーゴ」M250系のような形状をしており、電気機関車で牽引するのではなく、電車形にしてそこに積載する形が採られています。
この当時の構想では4M6Tで1ユニットを形成し、それを3つ並べた30両編成を予定していました。
積載部分には5tコンテナを5個載せることが出来、編成全体で750tの貨物を輸送することが可能です。
編成名 | 基本編成 ←新大阪 | 東京→ |
備考 | 所属 | |
---|---|---|---|---|
貨物新幹線 |
Tc
– M
– M
– Td
– M
– M
– T
– T
– T
– Tc
|
3ユニット繋いで30両編成で運転 | 鳥飼車両基地 (幹オサ) |
Tc…運転台付き付随車 M…モーター車 Td…パンタグラフ・変圧器付き電源車
主電動機は150~170kWのものを採用。夜間帯を走らせる計画だったこともあり、最高速度は130km/hとかなり控えめでした。
4 東京・大阪間の到達時分は、急行旅客において概ね3時間、貨物において概ね5時間30分を目標とすること(中略)
6 貨物については、ビギーバック及びコンテナー方式を積極的に採用して戸口から戸口への輸送を行い、なるべく大量の輸送を行って、現在線の負担を緩和すること。出典:「日本国有鉄道幹線調査会答申」昭和33年7月7日
本気でやる気だった…しかし…
ここまで密に計画をしており、またいくつかの構造物は先行的に建設されてもいました。
鳥飼車両基地近くには東海道新幹線を跨ぐ構造物が先行的に建設されていた他、現在のJR貨物大阪貨物ターミナル駅は貨物新幹線用の用地として買収された経緯があります。
しかしながら、この貨物新幹線計画は頓挫してしまいました。
国鉄が頓挫した理由を明確にしなかった為、「貨物新幹線は世界銀行の融資を得る為のダミー計画だった」という噂もありましたが、当時担当していたJR九州初代社長の石井幸孝氏が東京新聞の取材に対し明確に否定しています。
石井氏によれば、インフレで資金が不足した為「やりたくても出来なかった」のが事の真相のようです。
貨物新幹線は大阪~東京間を5時間半で結ぶ計画で、現在のスーパーレールカーゴに通ずるところがあります。
レールカーゴは在来線での運行ですが、貨物新幹線構想と同じ130km/hで東海道を爆走し、大阪安治川口・東京貨物ターミナル両駅を6時間で結ぶなど往時の新幹線計画に肉薄しており、間接的に「貨物新幹線の再来」と言えるでしょう。
レールカーゴは、これまで走ってきた東海道本線の車両の中で最も早い表定速度(約91km/h)を持つ電車となっています。
当初の計画から60年。今度こそ「貨物新幹線」は実現するのでしょうか。
関連リンク
参考文献
- 日本貨物鉄道「2023年3月期 第2四半期決算説明資料」、2022年11月11日
- 交通技術「東海道新幹線の貨物列車方式」(西尾源太郎)、交通協力会、1960年9月
- 十三のいま昔を歩こう「新幹線計画と弾丸列車計画の公文書」
- 東京新聞「幻の貨物新幹線 本気だった」(アーカイブ)
- ろくごれさんのツイート