「電車ってどこで作ってるの?」
…と聞かれて即答出来る人は、あまり多くないのではないでしょうか。
基本的にはBtoBビジネスなので、私ら鉄道マニアを除くとあまり知名度が高いとはいえません。
そこで今日は、鉄道車両を作っている5つのメーカーを簡単にご紹介しようと思います。
近畿車輛
大阪府東大阪市に本社を置く近鉄・JR西日本系のメーカーです。
2021年度の業績は売上高385億円、営業利益21.7億円でした。
今年度はJR西日本、近畿日本鉄道の他、東京メトロ、東京都交通局、南海電鉄、および京都市交通局へも車両を製造しました。
【直近の製造実績】
・JR西日本 225系、DEC741
・近畿日本鉄道 80000系(ひのとり)
・南海電鉄8300系
・京都市交通局20系
・東京メトロ 17000系(有楽町線)、2000系(丸ノ内線)
・東京都交通局 6500形(三田線)
・香港MTR SP1900系
2022年以降は大阪メトロ30000A系、および北大阪急行9000形の製造が見込まれます。
海外の輸出実績には、昔からアメリカ向けの路面電車(LA・シアトルなど)や、香港への地下鉄車両などに実績がある他、近年はカタールやドバイメトロなど中東諸国へも実績を作り始めています。
川崎重工業
兵庫県神戸市に本社を置く重工業系メーカー。鉄道車両製造は子会社の川崎車両が担当しています。
車両セグメントは売上高1266億円、営業利益32億円となっています。
今年度は大阪メトロ御堂筋線向け30000系、および神戸市営地下鉄6000形などの地下鉄車両や、東武鉄道、JR北海道などの製造を手掛けました。
【直近の製造実績】
・大阪メトロ 30000系(御堂筋線)
・神戸市交通局 6000形
・横浜市交通局 4000形
・神戸新交通 3000形(六甲ライナー)
・京阪電鉄 13000系
・東武 500系「リバティ」
・JR北海道 キハ261系
・JR九州 YC1系
・JR貨物 DD200形、EF510形、EF210形
・あいの風とやま鉄道 521系
・小田急電鉄 5000形
・西日本鉄道9000形
・東京メトロ 9000系増結車
・ニューヨーク市交通局 R211編成
・ダッカ6号線都市高速鉄道車両
今後は福岡市交通局向け新型車両製造、横浜市交通局4000形(全42両)、および引き続きニューヨーク市交通局向け車両(全535両)、ダッカ都市高速鉄道車両(全144両)が見込まれています。
海外の輸出実績には、ワシントン地下鉄やニューヨーク地下鉄から継続的な発注がある他、シンガポールのMRT(都市鉄道、地下鉄のような路線)、台湾などがあります。
日本車輌製造
名古屋市に本社を置くJR東海の子会社。
鉄道車両セグメントは売上高479億円、営業利益は44億円でした。
今年度はJR東海のN700S系や315系、小田急や名古屋市営地下鉄の車両製造を手掛けました。
【直近の製造実績】
・JR東海 315系
・JR東海 N700S系
・JR東海 HC85系
・名古屋市交通局 N3000形(鶴舞線)
・名古屋鉄道 9500系
・小田急電鉄 5000形
・新京成電鉄 80000形
将来的には日立製作所と共に、リニア製造を請け負う予定です。
海外の輸出実績には、インドネシアのジャカルタ都市高速鉄道をはじめとした都市鉄道の他、台湾新幹線700T形も請け負っています。
日立製作所
日本人なら誰もが知っている重電系メーカー。本社は東京ですが、車両製造としての拠点は山口県下松に置いています。
鉄道事業は売上高1834億円、営業利益155億円となりました。
但し、この数字はIFRS(国際会計基準)なので、国内他企業の数字とは若干データが異なります。
【直近の製造実績】
・相模鉄道 21000系
・東京メトロ 17000系、18000系
・阪急電鉄 1300系
・大阪モノレール 3000系
・JR東海 N700S系
・JR東日本 E7系
・JR九州 N700S系
海外の輸出実績にはイギリス向け高速鉄道「アズマ」など、英国に強みがある企業です。
2015年にイタリアの鉄道車両メーカーである「アンサルドブレダ社」を買収して、現地法人「日立レール 」を設立したことで規模を拡大しています。
総合車両製作所
横浜市に本社を置く、J-TRECと呼ばれる「総合車両製作所」。JR東日本の子会社で、主に首都圏向けの鉄道車両を手掛けています。
こちらは非上場で詳しい決算が不明。
参考までに昨年度の決算は売上高497億、営業利益63億円と近畿車輛と同程度の規模を誇ります。
【直近の製造実績】
・JR東日本 E235系1000番台(横須賀線用)
・JR東日本 E129系
・JR東日本 E131系
・京成電鉄 3100形
・東急電鉄 5080系
・京浜急行電鉄 1000形1890番台(Le Ciel)
海外の輸出実績には、タイのバンコク向け地下鉄「パープルライン」やアイルランド国鉄に実績がありますが、上記4社と比較すると展開が遅れ気味。
出典:住友商事「フィリピン南北通勤鉄道の延伸事業向け鉄道車両304両受注について」
今後、フィリピン向けに自社ブランド「サスティナ(sustina)」304両を納入する予定です。
大手5社比較
売上高 | 営業利益 | |
---|---|---|
近畿車輛 | 385億円 | 21.7億円 |
川崎重工業 (川崎車両) | 1266億円 | 32億円 |
日本車輌製造 | 479億円 | 44億円 |
日立製作所 (IFRS) | 1834億円 | 155億円 |
総合車両製作所 (非上場の為、参考の数字) | 497億円 | 63億円 |
2021年度の実績では、川重・日立の2メーカーが1000億円台に売上高を載せており、その下に日車・近畿車輛が並ぶ形となっています。
ただ鉄道車両の製造は、比較的その年の受注状況に左右されるので若干の変動があります。
その他
今回ご紹介した5大メーカー以外にも、各種部門に特化したメーカーもあります。
・アルナ車両(路面電車「リトルダンサー」製造)
・新潟トランシス(小型車両製造、路面電車「ブレーメン型」ライセンス製造)
・大阪車輌工業(ケーブルカー製造や車両の改造が主事業)
2021年度の売上高は22.5億円
関連リンク
【コラム】近鉄電車に乗ってたら1300年前の奈良時代に来てしまった話
参考文献
近畿車輛「2022年3月期 決算短信[日本基準](連結)」
川崎重工業「2021年度決算説明資料」
日本車輌製造「2022年3月期 決算短信[日本基準](連結)」
日立製作所「2022年3月期 連結決算の概要[2021年度]」
官報「第9期決算公告 株式会社総合車両製作所」 2021年7月28日
リクナビ2023「大阪車輌工業株式会社」
今週の鉄道イベント情報
9月16日(祝) | |
---|---|
9月17日(火) | |
9月18日(水) | |
9月19日(木) | |
9月20日(金) |