キハ120形にトイレがついたのは「女子高生が原因」?都市伝説を検証

キハ120形にトイレがついたのは「女子高生が原因」?都市伝説を検証

JR西日本のローカル区間輸送向けに活躍しているキハ120形。18切符で旅をなさる鉄道ファンの皆さんなら、一度は乗車されたことがあるのではないでしょうか。

関西だと、加茂駅から先の関西本線で乗車することが出来ます。

 

そんなキハ120形。毎時1本程度のローカル線を走るにも関わらず、なんと当初トイレがついていませんでした。

ところが一転、2007年3月までに全列車へトイレの増設工事が行われたのです。

 

この理由についてインターネット上でまことしやかに語られているのが、「女子高生が木次線のキハ120形で失禁してしまったから」という話。

朝日新聞が掲載していたというこの話は、果たして本当なのでしょうか。それとも都市伝説なのでしょうか。

 

(情報提供:ぃょぅさん

 

本当だった

結論から言うと、この話は本当に掲載されていました

当時の朝日新聞には次のように記載があります。

 

列車にトイレは絶対必要」と主張するのは、浜田市議の坂田幸男さん(六八)。

四年前の夏、高校総体の応援に来た県外の女子生徒がトイレに行きたくなり、運転士に頼んで無人駅で降りたが、その駅のトイレは撤去されたばかりで、次の駅のホームに降りたとたん我慢の限界を超えた悲劇的な「事件」があったという。

出典:朝日新聞『JR山陰線(ふるさと鉄道の旅:2)【大阪】』、1999年8月26日

 

1999年の4年前ですから1995年。ちょうど鳥取総体が行われた時期になります。

木次線ではなく山陰線と書かれている点が噂話とは異なるのですが、両路線とも1993年~1995年頃よりキハ120形が配置されているので、おそらく車両型式はキハ120形で間違いないでしょう。

 

悲劇は益田駅で…

もう少し調べていくと、浜田市議会にその詳細が記載されていました。

平成7年高校総体がありましたね。あれは8月の日にちははっきりは覚えませんが、恐らく8月9日だったんじゃないかと。浜田が柔道と卓球の会場になった。そのときに応援に来た学生や父兄の方は、浜田には泊まることができないんで40キロ西の益田市へ宿をとられた。したがって、益田から浜田へ応援団は通っておったわけなんです。そのときに事故が起きたんですね。50分です、浜田の駅から益田まで。もう学生が我慢できないということで津田駅でお願いをした。運転手にとまったときにお願いをしたら、既にそのときには2か月ぐらい前に津田駅のトイレは撤去されておった。運転手がもうしばらくだからということで、我慢に我慢をしてホームへおりた途端我慢しきれなくなった。女子学生ですよ。こんなことは言いたくはないんですけれども、そういう人権にかかわる問題をJRはなぜ放置しておるのか。また、行政側ももっとなぜ強く言わないのか。今回特に私はチャンスだったと思うんです。金を出すチャンス、この時期を逃したらもうないんじゃないですか。

出典:浜田市議会「平成11年第377回( 9月)定例会 09月13日-02号」浜田幸男議員

 

浜田市議会の議事録を見てみると、事件が起こったのは1995年8月9日。

(石見)津田駅にトイレがなかったので次のターミナル駅である益田駅まで我慢した、しかしダメだった…というのが、今回の詳細のようです。

時期的にも1999年(平成7年)と一致しますし、やはり山陰線での事件でしょう。

 

 

ただし政治的な決着

ただ「この女子生徒一人が粗相してしまったからトイレ増設がスタートした…」というわけでもなく、あくまで一因なだけです。

 

前述の坂田市議は、「JR車両にトイレ設置を求める利用者の会」という利用者団体を結成。

1万2000人もの署名を集め、社会党(現在の社民党)や国鉄労働組合などと一緒に陳情を行っています。

つまり、あくまでJR西日本と政治的な交渉を重ねた上での設置であったようです。

 

このダイヤ改正に伴う新型車両の導入について浜田、益田、三隅などの関係沿線自治体としてJR米子支社に対しトイレ設置の要望書を提出いたしております。また、関係自治体の議会も当時トイレ設置の要請などについて議会決議等を行っていただきました。さらに利用者の会としても島根県議会に対して請願等を行ってきたところでございます。特に昨年3月1日には島根県知事、JR米子支社に対しそれぞれ1万2,000人の署名を添えて利用者の会、社会党島根県本部、国鉄闘争支援島根県共闘会議、国労米子地本の4団体で陳情及び要請を行ったところでございます(中略)

これまで新型車両にはトイレは取りつけられないと考えていたが研究検討の結果、改造は技術的に可能であると図面を示しながら説明をされました。しかし、トイレユニットの設置の経費見込みとして一つには取りつけ費用の問題、1車両当たり約700万円、取りつけ車両数浜田鉄道部15両、木次鉄道部8両計23両、合計すると約1億6,100万円となる。
2つには、汚物処理装置の設置が必要であり、これの工事費が約1億5,000万、設置箇所は浜田と木次の2か所必要だと。したがいまして、これで3億円総合計4億6,100万円となる。したがって、改造は可能ということは判明したが莫大な資金が必要であり、今後さらに資金面のこともあるので実施時期は明確にはできない。

出典:浜田市議会「平成8年第362回(12月)定例会 12月10日-03号」、坂田幸男議員

 

トイレ設置の費用は車両側が700万円x23で1億6100万円、車両工場側が4億6100万円(浜田・木次)。合計6億2,200万円とかなりの高額です。

ちなみにこの坂田市議、この後も極めて熱心にトイレ問題に関して追及されています。平成11年の377回議会では30回も「トイレ」というワードを発言しており、いかに問題視していたかが伺えます。

 

これらの結果、2004年からキハ120形へトイレ設置改造工事を実施2007年までに全列車への設置が完了しました。

 

結論

つまり、今回の都市伝説は以下の結論となります。

・「女子高生がキハ120形で失禁してしまった」→事実

・「木次線で起こった」→フェイク。現場は山陰本線益田駅

・「上記女子高生が原因でトイレがついた」→半分フェイク。あくまで浜田市議会の議員さんが1万2000人もの署名を持って陳情し、政治的に解決した。

「女子高生が失禁した」というのはある種センセーショナルな話なので、そこの話だけが先行したのかもしれませんね。

市議会でももっぱらこの話が取り上げられていることから、説得力がある話なのは間違いありません。

 

それにしても、トイレ設置に尽力された坂田幸男議員には頭が下がります。

私も山陰線でお腹が痛くなった時は、坂田議員に御礼を言いながらトイレに駆け込もうと思います。

 

 

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