鉄道でよく見る「回送」という言葉。みなさんも駅などでよく目にすることと思います。
回送が設定されるのは、主に車庫から出てきたり戻したりする場合や、折り返し運転を実施する場合に車内を空にして点検が必要な場合など、要は「お客さんが乗れない」という意味合いで設定されます。
しかし「回送」という文字だけでは一見どういった意味なのかわかりませんし、おそらく鉄道やバス、タクシーなどの輸送機関のみでしか使わない、比較的ニッチな言葉ではないでしょうか。
フォロワーさんの遅れ通過貨物さんがこんなことを仰っていたので、私もちょっと気になって調べてみることにしました。
回送って何?
意味合いとしてはなんとなく「乗れない電車」程度には理解していると思いますが、ちゃんと説明をすると「空車のまま他の場所へ移動(=回して送る)させる」という言葉になるそうです。
冒頭にも書きましたが、意味合いとしては
・車庫から出庫し、指定駅まで送り込む場合
・終点に到着した電車を、車庫へ戻す(入庫)場合
・折り返し運転を行う際に、一旦車内を空にして点検する場合
…など、いずれも乗客がその電車に乗れないというケース時に用いられます。
いつから使われている?
輸送機関以外ではあまり使われないこの言葉、いつから用いられているのでしょうか。
現在確認できる中では、1903年(明治36年)の文献にこのような言葉が出てきます。
車輌費に多額の資金を要するに反し回送列車には收入尠きを以て營業收入をして車輛費額に達せしむるは甚だ困難なり
出典:帝國鉄道協會「帝國鉄道協會會報 4(5)」、1903年10月
日本で鉄道が生まれたのが1872年(明治5年)ですから、鉄道誕生後30年の時点で既に使われていた言葉ということになりますね。
語源はどこから?
日本の鉄道は英国から学んだものなので、専門的な用語もイギリス英語から多くを学んだと思われますが、現代の英語で回送を意味する言葉には
・Dead mileage(デッド・マイレージ)
・Dead in tow (デッド・イン・トー)
・Empty Coaching Stock (エンプティ・コーチング・ストック/ECS)
など、どちらかというと死を意味するDeadという言葉が多く用いられ、あまり「回送」という言葉につながるようなものはありません。
当時の英語ではまた違った言葉で表現していたのかもしれませんが、どのような変遷を辿って「回送」という言葉に行き着いたのかは謎に包まれています。
郵便や内務省の文章でも「回送」という文字が鉄道より前に使われた例があるようですから、もしかすると郵便側からやってきた言葉なのかもしれません。
例えば警察関係では
・飛騨国高山三ノ町村平兵衛召捕届刑法官へ回送(明治元年)
・伊勢山田二俟町佐伯某菊御紋章ヲ付スル売薬看板由緒届回送(明治元年)
・戸籍取調雛形回送ノ儀往復(明治3年)
があり、鉄道と似た正確の船舶関係でも
・三菱商会ヘ洋鉄神戸港迄回送達(明治7年)
・本局ヨリ神戸税関ヘ船長崎ヘ回送云々往信(明治7年)
という文献が引っかかります。
(この節の情報提供:彩葉様)