冬です。ここ最近は大雪が観測されるなど、厳しい寒さになりつつありますね。
大阪に住んでいると雪は嬉しいイベントですが、雪国の人達にとっては除雪(雪かき)は相当な負担になります。
鉄道も例外ではなく、専用の除雪車両(ラッセル車)を用意して走らせています。
このラッセル車は物理的に雪を両端へとはねのける仕組みなのですが、物理的に雪がなくなるわけではありません。
そうではなく、もっとダイナミックなシステムがあってもいいと思いませんか?
例えばバーナーで雪を溶かしまくるとか、
例えばジェットエンジンで除雪する…とか。
実は60年前、この「ジェットエンジンで雪をぶっ飛ばす」というアイデアを使い、国鉄が実際に作ってみたことがあります。
実際にやってみた
それがこちら。な、なんじゃこりゃ……。
それはトキ15000形(17988号車)貨車にターボジェットエンジンを斜め下向きに取り付け、ジェットの風の圧力によって雪をぶっとばすという豪快なもの。名付けて「トキ17988改」です。
この無骨さ、この規格外感……めちゃくちゃカッコいいと思いませんか????
航空自衛隊千歳基地からわざわざジェットエンジンを借りてきて、埼玉の大宮工場で仕上げたといういわく付きの車両です。
(三月)一日午後、埼玉県大宮市の国鉄大宮工場で最初のテストをした。摂氏六百度の高温と秒速六百㍍の早さで噴出するジェット・エンジンの排気を利用して、線路を埋める大雪を一気に吹きとばそうというわけ。
この”除雪車”は北海道へ送り、九日から三日間札幌付近で実際の除雪試験をすることになっている。
出典:「エンジン使って除雪 国鉄でテスト」1961年3月2日 朝日新聞
ローアングルからの写真。
「男の子ってこういうのが好きなんでしょ」を地でいくスタイルに、もうハチャメチャに大興奮ですよ私は。
その結果は…
男のロマンが詰まりまくったこのジェットエンジン車両、結果は散々なものでした。
・ジェットエンジンの風力が強すぎて、雪以外にバラストや踏切の板までふっとばす
・当然ながら騒音がエグい
・燃費がめちゃ悪い
またこのジェットエンジン除雪車は、別仕立てで新幹線でも試験されたそうですが、結果的には先程のものと同じ結果になり実用化には至らなかったようです。
名古屋保線所米原機械軌道支所では九日夜から十日未明にかけ、昨年アメリカから購入したばかりのジェットエンジンつきの新鋭除雪車「ジェット・スノー・ブロア」を雪の多い米原以西へ出動させた(中略)
ジェット・スノー・ブロアは、国鉄が北海道の豪雪に使ったほか、本州では初登場だったが、騒音がひどかった(略)
百五十㍍離れたところで音量八十ホン程度のやかましさで、まるで、”飛行場なみ”。
出典:1967年1月10日 朝日新聞夕刊
ちなみにこの「ジェットエンジンで雪をぶっ飛ばそう」というアイデアは中国でも実際に行われている他、アメリカでは「ジェットエンジンで気動車そのものを走らせよう」というものまであったんだとか。
鉄道会社にジェットエンジンを持たせると規格外の何かがいつも出てくるのですね。笑
関連リンク
参考文献
Togetter「【ジェットエンジン】除雪機(融雪機)関連ツイート【ネタ含む】」
日本国有鉄道大宮工場「七十年史」
NPO法人科学映像館『雪にいどむ(日映科学映画製作所)』
斎藤雅男『東海道新幹線の雪氷害とその対策 (1)雪氷害の特質とその対策*』