各鉄道企業の駅構内には、乗り換えや出口で乗客が迷わないように案内標識・案内標示が昔から設置されています。
フォントや配色ルールなどをあらかじめ決めておき、案内標識に視覚的な統一感をもたせておくと、乗客を迷わせないようにする効果があります。
こういった体系的に定められている案内標識のことを、サインシステムといいます。
近年、こうした「鉄道サインシステムに興味を持つ趣味人」のことをもじ鉄と呼ぶことが増えてきており、書籍も出版されています。
今回はそんなもじ鉄の皆さん向けに、またデザイナーさん向けに、関西の鉄道各社のサインシステムで用いられているフォントやデザイン歴史を、写真と共に解説していきます。
Osaka Metro(旧大阪市交通局)
和文:ヒラギノ角ゴ
英文:Parisine
現行サイン採用年:2014年~
Osaka Metroのサインシステムには、和文にヒラギノ角ゴ、英文にParisineが採用されています。
ヒラギノはよく見ますが、Parisineは他では採用されていない斬新なものです。
歴史
ひげ文字(~1976)
Osaka-Subway.comでも度々言及していますが、大阪市交通局のサインシステムのはしりは「ひげ文字」と呼ばれるものです。
初代サインシステムが制定される1976年以前に設置されたものと思われます。
その独特なハネの書体に、魅了されていた方も多いのではないでしょうか。
「ひげ文字」は後述する本町サイン導入で姿を消しましたが、大阪市交通局の管轄でない私有地のビルにおいては2018年頃まで比較的残っていました。
しかし、大阪メトロ化(民営化)によって大阪市交通局を表す「マルコマーク」が実態にそぐわなくなったことを受け、一気に消滅していきました。
守口サイン(1977年)
ひげ文字からサインシステムへの移行期にオリジナル書体が登場します。これはどことなく国鉄の「JNR-L」フォントに近いものがあり、意識していた様子が伺えます。
正式な名称はありませんが、谷町線都島~守口延伸時につけられたものであることから「守口サイン」と呼ばれることが多いようです。
こちらも2018年までは千林大宮・守口で見ることが出来ましたが、大阪メトロ化によって消滅しています。現在は両駅構内のごくわずかに残るのみです。
本町サイン(1977-2014年)
先の「守口サイン」の後、本町駅にゴシック4550を使用したサインシステムを試験的に制定。
先の2書体と違って、デザインや配色などまでキッチリと設計された大阪市営地下鉄初めての本格的なサインシステムです。
これらは「本町サイン」と呼ばれています(公的な呼称です)。結果的に、この本町サインタイプが広く普及していくことになります。
これがうまくいったからなのか、その後はなんば駅を皮切りにこのサインシステムを展開していきますが、どのタイミングからか和文が見出しゴMB31に変更されています。
この大阪市交通局標準サイン(本町サイン)は、マイナーチェンジを重ねて2013年頃まで使用されていました。
最終改訂版となった2013年のサインシステム標準図によると、フォントは次のものが指定されていました。
和文
1~6・8号線:モリサワの写真複写見出しゴシック体MB31又は同等。
7号線 : KK写研のゴナB BNAG又はモリサワの新ゴシックMedium又は同等。
ニュートラム : KK写研の写植文字ナールD又はモリサワのじゅん34又は同等。
英文・その他
Helvetica Medium又はHelvetica Bold又は同等。
但し、8号線駅番号アルファベット[I]の文字はMonospace821とする。
DLC Hei-GB ゴシック体又は同等。
HY太ゴシック又は同等。
現行(2015年~)
そして2014年、新しいサインシステムとして「ヒラギノ角ゴ」が採用されたものが登場しました。
英文には、日本の鉄道事業者としては初めての「Parisine(パリジーン)」が採用されています。
これはジーエータップ社・日本サイン社・竹内デザイン社・ジイケイグラフィックス社、4社の特別共同企業体(JV)が担当したものです。
出典:大阪市交通局「3号線なんば駅案内標示改良工事」
大阪市交通局・大阪メトロのサイン変遷
ひげ文字 (1965~1976?)
↓
オリジナル書体(守口サイン・1977)
↓
ゴシック4550 / Helvetica (1977)
↓
見出しゴ MB31(モリサワ) / Helvetica (1978?~2014)
↓
ヒラギノUD角ゴ / Parisign (2015~)
特例:長堀鶴見緑地線
和文:ゴナB BNAG
英文:Helvetica Medium
現行サイン採用年:1990年~
基本的なサインルールは大阪市交通局標準スタイルに準じますが、長堀鶴見緑地線では特例的に「ゴナ」が採用されたものがあります。
従来の大阪市交通局におけるフォントは見出しコ゚MB31ですが、それよりも太字であるゴナが選ばれたのはミニ地下鉄で天井高さが低いことから、視認性・可読性に優れたサイン計画を行ったことによります。
特例:ニュートラム
和文:ナールD(誘導サイン)、じゅん34(駅名標)
英文:Helvetica Medium
現行サイン採用年:1981年~
ニュートラムも同様に、基本的なサインルールは大阪市交通局標準スタイルに準じつつ、和文に丸ゴシックである「ナールD」と「じゅん34」、英文に「Helvetica Medium」が用いられています。
これは、地下鉄ではなく「街作りのサイン計画」へ合わせたことに由来しています。
また、レイアウトについても細かく以下のような指定があります。
・日本語の字間は文字高の1/30、英字と数字は文字高の1/7とする
・英文は頭文字大文字とする
・日本時、英字を併記する場合は、日本字の文字高に対し、英字はその1/2とする。日本字は冗談に、英字は下段にし、それぞれの文章のセンターを合わせる
(詳しい経緯はOsaka-Subway.comを御覧下さい)
京都市交通局
和文:ゴシック4550
英文:Univers
現行サイン採用年:1981年~
監修:株式会社星光
京都市営地下鉄では、烏丸線では開業時からゴシック4550とUniversを採用。駅番号追加時に取り付けられたステッカーについてはHelveticaを採用しています。
地下鉄線内での視認性を意識してなのか、黒地にオレンジ色のデザインとなっています。
地下鉄全般における色彩計画については、以下の基本方針が示されています。
地下鉄烏丸線は機能性・合理性をテーマとして , 白色を基調としたシンプルな色彩計画を構成しているが , 歴史性・地域性をテーマとする東西線の色彩計画にあたっては , 積極的な色彩の導入を考慮する。
昨今の町並みに見られる無秩序な色彩は , 逆に町並みに混乱をきたしているのに鑑み , 色彩の仕様に
あたっては原則を樹立し , 地下鉄の基本的機能を第一義として明るく , 楽しい雰囲気の中に , 駅舎の個性化 , 識別化を演出する色彩計画とするものとし、但し屋外においては景観に配慮する。その基本的な考え方は以下のとおりである。1. 系統を明確にした分かりやすい色彩計画
京都市交通局の路線カラー , 社会通念上のカラー , サイン系のカラー等の序列を踏まえて , 混乱をきたさない分かりやすい色彩計画とする。2. 基調色とアクセントカラー
駅舎全体に共通した基調色と , 個性化・識別化のためのアクセントカラーを併用した色彩計画とするが , 基調色は明るい清潔な感じを表現するため白系統とする。3. 京都らしい色彩の採用
現代的な色彩感覚の中にも伝統的に使用されている色彩(例えば , 古代色)を採用し , 京都らしさの工夫を心掛ける。4. 空間と色彩計画
天井高が低いために人々に圧迫感を与えないように , 空間計画・内装計画・照明計画との調和を考慮し計画する。出典:京都市交通局「京都市高速鉄道 サインマニュアル」
余談ですが、烏丸線では路線カラーに緑色の「DIC-384」、東西線では烏丸線と識別できるよう、色相環で反対となるオレンジ色の「DIC-N-731」が採用されています。
サインシステムで用いられることはあまりありません。
後から開業した東西線でも同じフォントを使って設置。ただし配色は異なります。
東西線では駅別にカラーが制定されており、それぞれ以下のカラーが指定されています。
六地蔵 DIC-875
石田 DIC-869
醍醐 DIC-260
小野 DIC-27
椥辻 DIC-73
東野 DIC-453
山科 DIC-N-106
御陵 DIC-455
蹴上 DIC-145
東山 DIC-146
三条京阪 DIC-271
京都市役所前 DIC-N-724
御池 DIC-N-731
二条城 DIC-81
二条 DIC-83
西大路御池 DIC-794
太秦天神川 DIC-806
神戸市交通局
海岸線
【海岸線】
和文:ヒラギノ角ゴ W5/W7
英文:Frutiger Bold/Roman
現行サイン採用年:2000年~
西神・山手線
【西神山手線】
和文:新聞特太ゴシック体(YSEG-L)
英文:Helvetica
現行サイン採用年:1975年~2019年頃(切り替え中)
監修:株式会社黎デザイン総合計画研究所、株式会社星光
参考リンク:http://www.rei-design.co.jp/fieldA.html に1975年に手がけたと記載
解説
初期に開業した西神・山手線には、日本語には新聞特太ゴシック体(YSEG-L)?、英文にHelveticaが採用されています。
初期の西神線4駅のサインシステムデザインを担当したのは、「株式会社黎デザイン総合計画研究所」というデザイン系の企業のようです。
こちらは海岸線仕様。和文に「ヒラギノ角ゴ」のW5/W7を、英文には「Frutiger」のBold/Romanを使用しています。
プリンターやプロッターの種類や機種を選ばずに出力できるよう、アウトラインデーターが公開されていること等を条件として、和文書体としては「ヒラギノ角ゴシック体」のファミリーを採用し、文字数が少なく大きく扱う表記にはW7を、情報量が多く文字数が多い時にはW5を使用することにした。
また、英文書体としては同じ理由から「フルティーガー」のファミリーを採用することとし、ヒラギノゴシック体W7にはFurutiger-Boldを、W5にはFurutiger-Romanを組み合わせて使うこととした
参考文献:『神戸市交通局八十年史』(2002年10月,神戸市交通局)
京阪電気鉄道
和文:新ゴ
英文:Frutger
現行サイン採用年:2007年~
監修:GKデザイン総研広島
解説
従来の京阪電鉄のサインシステムはゴナを使用したものでしたが、統一性があまりなく、広告との併記で極めて見難く不格好なものでした。
しかし、2008年のCI一新で実にスマートなイメージになりました。
駅名標をはじめ、各サインにはストライプを採り入れたデザインを採用。社内では「スマートライナー」と呼ばれるこのラインは、スピード感・軽快さ・継続性…といった意味が込められています。
非鉄道系の友人に聞いても「京阪はなんとなくカッコいい」と言わしめ、更に鉄道のブランドイメージ調査で2位に浮上するなど、着実に新しい京阪のイメージが根付いた、まさにCI一新がブランドイメージを向上した良い例となっています。
京阪ホールディングスのロゴ制定後は、企業名表記をロゴ付きのものへ切り替え。よりスタイリッシュなデザインになっています。
ちなみに同じ京阪でも、軌道線である石山坂本線では引き続き「ゴナ」を使用中です。
京阪電鉄のサイン変遷
ゴナ(写研)
↓
2007年~ 新ゴ(モリサワ) / Frutiger
南海電鉄
和文:ゴシック4550
英文:Univers(Helvetica?)
現行サイン採用年:1988年~
備考:第24回SDAシステム部門賞受賞
南海のサインシステムは、日本語にゴシック4550、英字にUnivers(Helvetica?)を採用した、どこか優しい印象を持たせながら、機能美を保った優秀なサインです。
1988年7月の関西空港と本線の結節点になる泉佐野駅においてテスト登場したのが最初で、1990年4月にはテストを踏まえて「南海電鉄旅客案内サインマニュアル」を制定。
駅舎をリニューアルした千代田駅を本格採用第一号とし、続いて難波・貝塚・みさき公園・極楽橋・高野山の各駅へ広がっていきました。
南海では平成元年4月より「南海電鉄旅客案内サインマニュアル」を制定し、主要な駅でこのサインマニュアルに沿ったサインシステムの整備が進められました。このサインシステムは、『第24回SDA賞コンテスト(日本サイン・デザイン協会主催。日本で唯一のサインに関係する賞)』の「SDAシステム部門賞」を受賞し、優れたサインシステムとして認められています。現在最新の駅名標はこのサインシステムに沿ったデザインのものです。
但し、取り換えスピードがかなり遅く、2015年までは樽井や我孫子道、蛸地蔵などに筆文字も残っていました。
サインシステム制定前までも本線は青、高野線は緑という色分け自体はなされていたようです。
ギャラリー
一つ一つに南海電鉄オリジナル(一部はJIS規格のもの)のピクトグラムが考えられています。
高野線は緑色、本線は青色で表記されます。
また2015年頃に樽井駅に登場したナンバリング入りのものから、マイナーチェンジが行なわれて、和文が「新ゴ」になっています。
南海電鉄のサイン制定変遷
ゴシック4550(鎌田経世 氏製作) / Helvetica
↓
新ゴ / Helvetica
南海電鉄のサインは、ネット上でも評判の良いサインの一つです。
当節の参考文献
http://yokochan.fc2web.com/i/line-color-nankai1.htm
「日本の私鉄 11南海, 第 9 巻」
阪急電鉄
和文:イワタUD丸ゴシック
英文:Helvetica
現行サイン採用年:2014年~
監修:アール・イー・アイ株式会社
大手関西私鉄では、唯一の写研フォント「ナール」を使用していることでデザイナー界隈にも有名でしたが、DTP化についていこうとしない写研に見切りをつけたのか、「イワタUD丸ゴシック」が近年採用され始めました。
見分け方は簡単で、英字部分が大文字なのがナール、小文字入りなのがイワタUD丸ゴシックです。
出典:https://matome.naver.jp/odai/2133883151920255301
ナール時代の駅名標。
よく似ていますが、うめだの「だ」の表記が大きく異なっているのがわかります。
こちらもナール時代の駅名標(河原町駅)
駅構内のサインもイワタUDゴシックへ、「り」と「3」の特徴的な表記で判別できます。
【参考】イワタUDゴシックのサンプル例
丸文字(ナール)が導入される前のサインはこんな感じ。基本的なデザインは現在と変わっていませんね。
阪急電鉄のサイン制定変遷
角ゴシック(1970?~)
↓
ナール(?~2013?)
↓
イワタUD丸ゴシックM(2013~)
近畿日本鉄道
和文:イワタUDゴシック
英文:イワタUDゴシック
現行サイン採用年:2014年~
監修:アール・イー・アイ株式会社
解説
駅名標の制定時から大阪に本社を置く「モリサワ」との関係が深く、早期から新ゴが見られました。
現在はイワタUDゴシックが用いられています。
近鉄では比較的早い1979年からサインシステムの設計を開始。80年代には取り付けが始まっていたようです。
当初は次駅名にローマ字が入っていませんでしたが、後のマイナーチェンジ時(時期不明)に採り入れられています。
フォントには、同じくモリサワの見出しゴMB31が使用されていました。 英字表記が全て大文字なのも特徴的です。
こちらはマイナーチェンジバージョン。書体にモリサワの新ゴが採用されています。
現行の津駅。駅ナンバリングも入り、イメージが大きく変わりました。
JRとの共同使用駅である吉野口駅では、JR式に則ったサインでの案内となっています。
JRらしい看板に近鉄式の駅番号が貼付されている姿がユニークです。
近鉄の昔の駅名標ってこんなんだったんですねぇ
割りかし普通だ… pic.twitter.com/LSqOQUmFLQ— Osaka-Subway.com/鉄道プレス (@OsakaSubwaycom) July 7, 2020
ちなみに、この前のサインについては白地に黒文字のオーソドックスなものが使われていたようです。
近鉄のサインシステムも沼が深い。
フォントはゴシック4550、MB101、ウイン、ゴナ、新ゴ、イワタUDとありとあらゆるものを使ってる。新ゴ試用期間中のある時を境に、サイン類が黒地から白地に一斉に変わったり。
— やたてつ/Yata-Tetsu (@yyyy_yatatetsu) August 25, 2017
【近鉄サインの変遷】
筆文字
↓
写植書体(白地看板)
↓
見出しゴMB31(1980年代~)
↓
新ゴ
↓
イワタUDゴシック(2008?)
『株式会社イワタ イワタUDフォント』
http://www.iwatafont.co.jp/ud/jirei_14.html
阪神電鉄
和文:ロゴG
英文:ロゴG
現行サイン採用年:2009年~
監修:株式会社 星光
解説
歴史をたどると、現在では普遍的なモリサワのフォントを最初にサインシステムに採用したのは、1970年の阪神梅田駅だそうです。
この当時、和文には「モリサワ写植正体ゴシック」、英字に「ノイエ・ハース・グロテスク(Neue Haas Grotesk)」が使われました。
モリサワは大阪が誇る文字フォントの会社ですが、サインシステムにフォントを使うという先見の明があったのは、大阪の阪神電鉄でした。
またNeue Haas Groteskは、世界一著名なあのフォント「Helvetica」の元となったフォントです。
ただ、サインと広告の分離が徹底されているとは言いづらく、梅田以外の駅では、京阪と同様に広告が併記された見づらいものでした。
2009年のなんば線開業を機に、サインシステムもリニューアル。
和文には鉄道としては珍しい「ロゴG」を採用しています。
阪神電鉄サインの変遷
モリサワ写植正体ゴシック(梅田のみ?)
↓
ゴシック4550
↓
ロゴG(2009年~)
参考文献:中西あきこ『されど鉄道文字』 252p
神戸高速鉄道
現在は阪神電鉄の子会社ですが、以前は神戸市が筆頭株主の「神戸高速鉄道株式会社 」と独立した存在でした。
このこともあり、駅名標などのサインシステムについても独自のものが使用されてきました。
マイナーチェンジ版。神戸電鉄をモデルにしたものと見られます。
2010年から運営形態が変更されており、花隈駅のみが阪急式、その他の駅が阪神式の駅看板に架け替えられています。
JR西日本
和文:新ゴ B/M
英文:Helvetica/Frutiger_
現行サイン採用年:1988年~
JR西日本では「新ゴ B」と「Helvetica」を採用しています。
近年リニューアルが行われた駅については、基本的なデザインはそのままに英文が「Frutiger」へと変更されています。
近畿圏のいわゆる「アーバンネットワーク」では路線ごとにラインカラーが制定されており、例えば画像の阪和線はオレンジ色です。その他、このような使用例があります。
・阪和線…オレンジ
・大阪環状線、桜島線…レッド
・大和路線…グリーン
・JR京都線、神戸線など…ブルー
・JR東西線…ピンク
・JR学研都市線…黄緑
・JR宝塚線…イエロー
それ以外の路線では、JR西日本のコーポレートカラーである青色になっています。
ちなみに大阪環状線だけはイメージアップ戦略の一環から、駅名標が黒地になっており、この関係で一段細いウェイトである「新ゴ M」が使用されています。
神戸電鉄
和文:メイリオ Bold
英文:メイリオ Bold
現行サイン採用年:?
神戸電鉄では、和文/英文フォントにWindows標準の「メイリオ」を採用しています。
現行はメイリオですが、基本のデザインはこのままにフォントのみ時代によって色々用いられているようです。その他「角ゴシック」もありました。
能勢電鉄
和文:HG丸ゴシック
英文:HG丸ゴシック
現行サイン採用年:2014年<公式リンク>
能勢電鉄は、2014年頃から各駅オリジナルデザインを用いた駅名標へと交換されました。
公式によると「里山などの自然あふれる沿線風景をモチーフとした緑色を基調とした意匠」とのことです。フォントにはHG丸ゴシックが用いられています。
北大阪急行
2024年に開業する箕面新線にあわせて、北大阪急行電鉄では駅名標・サインシステムが一新されました!
和文・英文共に「イワタUDゴシック」が用いられているようです。
和文:イワタUDゴシック
英文:イワタUDゴシック
現行サイン採用年:2024年
先代は1993年~
<参考ツイート>
尚、先代の駅名標は1993年に制定。紺地のものでした。
泉北高速鉄道
2017年11月4日の泉ヶ丘駅リニューアル工事(改札移転日)から、新型のサインが使用され始めました。
和文にやや細目なフォントの「UD新ゴL」、英文に「ClearTone SG」が採用されています。
和文:UD新ゴL
英文:ClearTone SG
監修:株式会社 星光
現行サイン採用年:2017年
歴史
泉北高速鉄道は当初大阪府が親会社になっており、駅名標もどこか堅苦しいお役所チックな白地のものを使用していました。
その後接続する南海電鉄にあわせたのか、ゴシック4550を採用。ナンバリング採用後から4ヶ国語表記を採用しています。
ユニバース(ヘルベチカ?)を採用する英字は、南海と同じく大文字のみの表記です。
駅柱に掲示するタイプ。上部に泉北高速鉄道のロゴが入っている他は、南海のサインシステムに準拠しています。
その後、先述の泉ヶ丘駅を皮切りに現在新型サインヘと移行中。
番線表記もこのようになっています。「1」の部分のみがFrutigerでしょうか
おはようございます(*^_^*)
泉北高速鉄道の駅では、駅名標が、駅改装時に順次新デザインに変更されていますが、あの波みたいなデザインは何?と思われているでしょうか。
「泉北」「泉ケ丘」「和泉中央」などの【泉】をイメージしています。 pic.twitter.com/6MqmR2Os3y
— せんぼくん【公式】泉北高速鉄道 (@srw_sembokun) April 16, 2020
ちなみに泉北高速鉄道の公式Twitterによると、新デザインは「泉」をイメージしているとのことです。
京福電鉄(嵐電)
和文:ロダン、ヒラギノ角ゴ Upr
英文:Helvetica
駅番号:Avenir
現行サイン採用年:2016年
解説
旧サインについては、サインシステムではあまり見られないダイナコムウェア製「太丸ゴシック」を採用していました。
2016年頃から、新しいサインシステムへと置き換わりつつあります。
和文は「ロダン」、ひらがなが「ヒラギノ角ゴ」、英文が「Helvetica」、駅番号が「Avenir」ではないか…とのこと。
嵐電は二路線が運営されており、嵐山本線が赤色、北野線が紫色となっています。
阪堺電気軌道
和文:ヒラギノ角コ゚ W6
英文:Arial Bold
駅番号:Arial Black
現行サイン採用年:2013年
2013年の天王寺駅周辺緑化事業以来、新しいサイン様式が採用されています。
この駅名標では、「ヒラギノ角コ゚ W6/Arial」が用いられています。
従来のサインは親会社の南海電車と同一スタイルのものでした。こちらは「ゴシック4550/Helvetica」が使用されています。
神戸新交通
ポートライナー
和文:じゅん 34
英文:Century Gothic bold
駅番号:Century Gothic bold
神戸新交通ポートアイランド線では、和文に「じゅん34」が用いられています。
おわりに:フォントを作る2大企業
こういった鉄道のサインシステムで使用されているのは、ほとんどが「モリサワ」と「写研」の2メーカーのものです。
どちらもルーツは同じですが「モリサワ」を立ち上げた森澤信夫氏は、写研から独立した経緯があります。
モリサワは、個人PCでも使えるデジタルフォントの製品化に積極的な素晴らしい企業です。代表的なフォントには「新ゴ」「見出しゴ」「フォーク」などがあります。
それに対し、「ナール」「ゴナ」などを持つ写研はフォント製品化に消極的…というかもはや否定的で、2011年に製品化を一度は公言したものの、9年経った現在でも未だに実用化されていませんでした。
しかし…
2021年1月、ビックニュースが舞い込んできました。写研がモリサワと手を組んでフォントを2024年からリリースすると…!!
こういう事情もあって、近年の鉄道サインについては、誰もが簡単に使えるデジタルフォント化したものがラインナップにある「モリサワ」製のものを採用する事業者が多くなっていましたが、今後また写研フォントが駅名標で見れることが増えてくるのかもしれません。
フォント製作者まとめ
ゴシック4550:鎌田 経世(営団地下鉄で初採用)
国鉄すみ丸ゴシック:佐野 稔
関連リンク
参考文献
- 「もじ鉄 書体で読み解く日本全国全鉄道の駅名標」石川 祐基、2018年
- 「されど鉄道文字」 中西あきこ、2016年
- 関西の鉄道 No.60 2012 新春号 – 関西鉄道研究会、2012年
- 関西の鉄道 No.43 2002 盛夏号 – 関西鉄道研究会、2002年
- 「駅におけるサイン計画」「駅におけるサイン計画Ⅱ」近畿日本鉄道技術研究所技報 1979年、1980年
- 大阪の鉄道会社が何かと使用しているフォントまとめ – NAVERまとめ(リンク切れ)
- 南海電気鉄道株式会社広報課「なんかい No.190」、1989年5月
- 株式会社星光「沿革」
- アールイーアイ「鉄道駅 サイン計画 阪急電鉄 サインシステムマニュアル2013」
- 大阪市交通局「大阪市中量軌道南港ポートタウン線ニュートラム建設記録」、1983年12月