JR学研都市線 住道~野崎間(どちらも大阪府大東市)に、新しく新駅を設置する構想があるのをご存知でしょうか。
この謎の新駅について、現地の写真も織り交ぜながら紹介していきます
新駅のおおまかな概要
ホーム形状:相対式2面2線 地平ホーム(島式1面2線プランもあり)
駅舎:橋上駅舎を予定
停車両数:7両編成
新駅は橋上駅舎・地平ホームで想定されていますが、費用節約の観点から地平駅舎も提案されている状況のようです。
技術調査を委託されたJRコンサルタンツ案では島式ホームを提案していますが、実際に運行をするJR西日本は安全性の観点から相対式ホームで工事費を算出していることから、相対式ホームが有力でしょうか。
場所はどこ?
新駅の場所は、現在の野崎徳洲会病院の周辺(大東市谷川・深野・平野屋付近)で、住道・野崎の両駅から半々程度の距離の位置になります。
ちょうど大阪府道8号線(阪奈道路)と交差するあたり…、阪奈教習所の近くといえば、地元の方ならおわかりになるでしょうか。
現地を見ると、いかにも島式ホームが設置できそうな空間が確保されていますね。
ちょうど207系の区間快速が通過していきました。
素人目には、左側の電柱を移設してホームを置けばすぐに駅として機能しそうな感じに見えます(そんな簡単ではないんでしょうが…)
駅へのアクセスは、東口がゆるい登り坂を上ったこの橋から、西口が徳洲会病院周辺からの地平アクセスの2箇所が予定されています。
「東住道駅」が昔あった
実はこのスペースは、かつて東住道駅(東住道仮乗降場)という駅が1945年~1947年まで僅か2年だけあったそうで、その跡地なんだとか。
これは松下電器が日本軍に依頼されて作った「松下飛行機住道工場 5)」への輸送用だったようです。
東住道(仮乗降場)
S20(1945)0501営業開始
片町線野崎住道間仮乗降場新設の件
取扱 旅客 ただし定期券所持のものに限る
旅客営業粁を設定せず 外方駅運賃を収受する
住道駅長管理とす
【S20.04.12大達63号(大鉄局報5069号)】
S22(1947)0421廃止
昭和20年4月大達63号「片町線野崎住道間仮乗降場「東住道仮乗降場」 昭和22年4月20日限り廃止する
【S22.4.16大達(号不明)】出典:鉄道フォーラム、原文は大阪鉄道管理局報(大鉄局報)より 3)
つまり今回の新駅構想は、実質「東住道駅の復活」ということになりますね。
現在の進捗状況
2024年現在、この新駅設置に関しては大東市が動いてはいるものの、具現化した計画は見せていません。
高校野球で有名な「大阪桐蔭高校」を持つ学校法人大阪産業大学を中心に、駅結成の同盟会が作られています。
大東新駅期成同盟会のメンバー
学校法人大阪産業大学(事務局)、野崎徳洲会病院、阪奈病院、阪奈自動車教習所、扶桑薬品、周辺自治会(平野屋・寺川・中垣内・龍間・深野・南新田・泉町)
平成16年には、この期成同盟会が2万3500票の署名と共に陳情書を議会へ提出されました。
この陳情を受け、大東市も駅設置実現へ向けて国へ要望書を提出したり、直近(2023年)の都市マスタープランでも言及するなど、数度アクションを見せています。
・JR住道駅・野崎駅間における新駅構想については、東部地域だけでなく市全体の活性化につながることから、連続立体交差事業と合わせて検討し、市民・関係団体・鉄道事業者等で設置に関する合意がなされるよう調整に努めます。
出典:大東市 4)
価格高騰中…
駅設置費用は、平成22年の見積もり時には当初20億8000万円でしたが、物価高や労務費の高騰を踏まえて平成31年時点で34億8000万円へと増額しています。
請願駅ではありますが、大東市が予算をつけるのは駅周辺の広場や駐輪場の整備のみで、駅舎・ホームは期成同盟会のみが全額出資する意向のようです。
【駅設置費用に関わる増額の詳細】
①物価や労務費の高騰により約2.6億円
②駅設備の高度化により約3.4億円
-運行状況案内用の大型ディスプレイ設置
-列車ダイヤ、運用、乗務員配置などの輸送計画業務の支援システム
-自動進路制御システム、券売機、自動改札機などでの運賃収受や入・出場処理システム
-保線作業時の保安度向上のため、GPS位置情報を活用した作業員に列車接近を通知するシステム
新駅設置によって、これら各システムを書換える為の改修費用
③駅利用者の安全性向上に関する設備の増加により、約6.2億円
-転落検知マットやスペースライト、信号機の再配置費用など
④工事費増加に伴う管理費等の増額により約1.8億円
合計14億円の増額(ホームドアは含まず)
今後もこの傾向は強まるので、早期に着工しなければさらに建設費用は高騰するものとみられます。
大阪産業大学と野崎徳洲会病院は、このうち10億円近い資金を拠出する意向であるようですが、早く建設しないとまた価格が上がりそうですね…。
以上、大東市の住道~野崎間に設置される新駅についてのご紹介でした。
また動きがあればこちらに追記しますね!
年表
・1945年 現在の新駅位置に東住道仮停留場を設置
・1948年 東住道仮停留場を閉鎖、撤去
・2004年5月 大東新駅期成同盟会を設置
・2004年8月 約23.500名の署名による陳情書を、大東市と大東市議会へ提出
・2005年3月 神戸新聞から「新駅を検討中」の報道
・2005年12月 新駅設置に関する調査研究を行う特別委員会が設置
・2006年10月 新駅設置に係る調査業務の委託を実施
・2007年10月 野崎参道商店街振興組合(8月)、野崎参道商店街振興組合が駅設置反対を表明
・2010年4月 期成同盟会と市議会議員により「片町線新駅設置要望書」を提出
・2010年5月 大東市長よりJR西日本へ新駅設置要望書を提出
・2015年 大東市、駅整備効果の調査を民間企業へ依頼
・2018年2月 東坂浩一市長・伊佐進一衆議院議員(公明党)・熊野正士参議院議員(公明党)、その他複数の府議・市議が石井国土交通大臣に要望書を提出
関連リンク
参考文献
- 公明党「石井国交相らに要望」、2018年2月27日
- 西日本未来地図「大東市新駅計画」
- 鉄道フォーラム「梁山泊会所告示 号外(2015.8.15付)」
- 大東市「大東市都市計画マスタープラン 大東市都市計画に関する基本的な方針 ~地域がつながる 魅力を伝える 未来へ届ける 幸せのまち大東~」、2022年12月
- Panasonic「75. 軍の要請で松下飛行機(株)を設立 1943年(昭和18年)」
大阪府大東市は、JR住道駅~野崎駅間に計画する新駅について、2015年度に整備効果などの調査を実施する。15年6月16日にこれらを含むまちづくり調査検討業務を入札し、ランドブレインに委託した。また、新駅設置を求める期成同盟会では、費用負担などの資金調達について関係者間で協議を続ける。新駅は、かつて仮設駅・東住道駅があった野崎徳洲会病院と扶桑薬品工業に挟まれた大東市谷川2、平野屋新町に計画している。駅舎は島式1面のプラットホームを持つ橋上駅を想定している。請願駅となるため、補助を除けば市が事業費の大半を負担しなければならないが、地元の商業団体が反対していることなどを踏まえ、市議会は駅舎など駅関連施設の費用負担を期成同盟会に求めている。期成同盟会の構成員は、大阪産業大学、徳洲会野崎病院、阪奈病院、阪奈自動車教習所、扶桑薬品。事業が実現すれば、駅前広場や駐輪場、自由通路などの公共施設は市が整備する。委託業務では、新駅に関する候補地周辺の現況把握や需要予測などを行うほか、市域全体の土地利用の方向性検討、市街化調整区域の土地利用検討を行う。
出典:https://ugoki.kensetsunews.com/ugoki/guest/news/731754