1日1本だけ運行されている、近鉄南大阪線の下市口行き特急。
過去15年を振り返っても定期での設定がなく、歴史的に見ても非常に貴重な行先です。
2003年頃には吉野線の保守工事に伴い、臨時的に設定されていたことはあったようです。
設定されたのは1年前になりますが、夜の阿倍野に行くこともないのでなかなか撮影できていませんでした。
そこで今回、意を決して阿倍野まで出て撮影してきました。
…とのんびりしていたら、なんと2024年3月で廃止されることが決定しました。
この記事は、廃止が告知される前に書き始めたので、幾分のんびりした記事になっていますが、ご笑覧いただければ幸いです。
夜中の阿倍野橋駅
本命の前に
下市口行き列車の到着前に、先に6番ホームへ到着したのは、準急/大阪阿部野橋行き(22:18着)です。
この日は、たまたま2023年12月に改造を受けたばかりの、6400系(Mi04編成)の更新車両がやってきていました。
従来上にあったヘッドランプを下に、テールランプを上に改造した車両で顔つきがイカつい。
近鉄電車といえばヘッドライトが上にあるイメージが強いだけに、尚の事違和感を感じていました。
尚、この顔の魔改造に関しては以前にも記事(大阪線VG23編成)でお伝えしています。
この後「準急/河内長野」行きの表示を出して去っていったのが不思議だったんですが、どうもこのあと4番線22:34発の河内長野行き準急として運用する為のようでした。
空き番線がないからか、一旦特急用ホームに入線させておろした後、転線させて再度大阪阿部野橋駅へ入るようです。
5209レ
そして…22時25分、特急下市口行きが到着しました。「Y」と呼ばれる16000系が担当しています。
この運用(列車番号5209レ)には、原則的に「Y08+Y51」という4両編成列車が固定で入るダイヤとなっているようで、この日もY08+Y51が担当していました。
近鉄には電算記号という概念が存在し、形式ごとにそれぞれアルファベットからなる記号が付与されています。
今回ご紹介する16000系には「Y」、さくらライナーには「SL」という記号が付けられています。
下市口行き特急の運用はこんな感じです。
【下市口行き特急のダイヤ】
[回送]河内天美 夕方出庫(回7680)→大阪阿部野橋駅
[特急橿原神宮前行き|4609レ]大阪阿部野橋16:40発→橿原神宮前17:15着
[特急大阪阿部野橋行き|8808レ]橿原神宮前18:47発→大阪阿部野橋19:24着
[特急吉野行き|4909レ]大阪阿部野橋19:40発→吉野20:56着
[特急大阪阿部野橋行き|2108レ]吉野発21:04発→大阪阿部野橋22:23着
[特急下市口行き|5209レ]大阪阿部野橋駅22:40発→下市口23:44着→六田車庫入庫
このY編成こと16000系は、1974年製の御年50歳。まだ喫煙車が普通にあった時代から運行されている車両です。
全面禁煙移行後も、ほんのりタバコの匂いと古い特急とを合わせた独特の匂いが漂います。もちろん禁煙化にあたって匂いは除去しているのだとは思いますが、ヤニの匂いってなかなか取れませんね…。
ちなみに、近鉄特急では2024年3月から喫煙ルームが廃止されるそうです。
喫煙室はこの位置。設置はされていたものの、締切扱いで利用は出来なさそうでした。何故…?
閲覧者さんから補足を頂いたのですが、どうも大阪阿部野橋駅を出発後に使えるようになるそうです。それまでは駅の喫煙室で…ということなんでしょうか。
ちなみにこの下市口行き特急ですが、1車両10人ぐらいの乗車率とまずまずの利用率でした。
16000系は古き良き近鉄特急の伝統である折戸を採用しています。今どき懐かしいなぁ…。
車掌さんが確認を終えて去っていきます。
16000系は方向幕がないので、前面窓の下部分に行き先表示を提示しています。これだと「下市口」の設定も楽でいいですね。
ちなみに日によっては新しいタイプの車両も来るようで、16600系「ACE」が運用に就く姿も見られました。
16600系には方向幕がありますが、以前運行されたことがあるからか「下市口」の表示にもしっかりと対応していました。
駅の表示
発車まで思ったより時間があるので、このチャンスを機に駅表示や各種を撮影していきます。
6番線の発車標。LCDディスプレイということもあり、下市口行き表示にもしっかりと対応しています。
続いて東側改札に設けられているLED発車標。こちらも対応していますね。
一瞬しか表示されない英文もばっちりです。
駅改札部分の発車標も当然ながら対応。
…と、のんびりしていたらまもなく発車時刻なのでホームに戻ります。
22:38。特急用の発車メロディ「水上の音楽」が鳴動しはじめました。
「下市口行き特急、下市口行き特急が発車します」のナレーションの後、ブザーを鳴らして発車していきました…。
附録:南大阪線特急の種類
南大阪線特急は現在、10本が運用に就いています。
・旧型の16000系は3本、改良型の16010系が1本
・さくらライナーの26000系が2本
・新型「Ace/ACEタイプ」が4本
このうち、今回下市口行き特急に入る可能性がある列車は、さくらライナー以外の8本です。
先にも書いたように原則的にはY08+Y51の固定編成となっていますが、稀に検査の関係で代走運用などを行う場合があり、別編成が運用に就く場合があります。
編成名 | 基本編成 ←大阪阿部野橋 | 吉野→ | 竣工 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
16007F(Y07) | モ16007 – ク16107
| 1970.12.3 | ||
16008F(Y08) +16051F(Y51) | モ16008 – サ16151 – モ16051 – ク16108
| 1974.3.15 | ||
16009F(Y09) | モ16009 – ク16109
| 1977.12.22 | ||
16011F(Y11) | モ16051 – ク16151
| 1981 | ||
26101F(SL01) | モ26401 – モ26301 – モ26201 – モ26101 | 1990.1.25 | さくらライナー | |
26102F(SL02) | モ26402 – モ26302 – モ26202 – モ26201 | 1990.12 | さくらライナー | |
16401F(YS01) | ク16501 – モ16401
| 1996.3 | ACE | |
16402F(YS02) | ク16502 – モ16402
| 1996.3 | ACE | |
16601F(YT01) | ク16701 – モ16601
| 2010 | Ace | |
16602F(YT02) | ク16702 – モ16602
| 2010 | Ace | |
16201F(SY01) | ク16301 – モ16251 – モ16201 | 1978 | 青の交響曲 |
表だけではわかりづらいので、下記に写真で簡単に解説します。
旧型車両
吉野線で初めて登場した、特急専用形式の16000系です。
最も古い形式ながら、2024年現在最も本数が多い編成でもあり、大阪阿部野橋駅などで比較的よく見る存在です。
こちらが16000系のマイナーチェンジモデルである16010系、Y11編成です(写真は旧塗装時代)。
16000系とは微妙に顔つきが違うのがおわかりになるでしょうか…?
さくらライナー
南大阪線特急の花形「さくらライナー(26000系)」です。この車両だけは形・塗装が他の車両とは異なるので区別が付きやすいですね。
新型車両
「ACE」と呼ばれる16400系(YS編成)。平成初期に登場した比較的新しいタイプです。
最新形式の16600系「Ace」です(写真は旧塗装時代)。先代「ACE」よりもまるっこくなりました。
最後に観光列車「青の交響曲」専用形式のSY01編成をご紹介。厳密には特急車両とは異なります。
この記事を書いている間に、残念ながら今回の「下市口行き特急」が消滅することが発表されてしまいましたが、残り1ヶ月の間に是非ともこのレア運用を抑えておいてくださいね。