なぜ「志摩磯部駅」は志摩スペイン村の最寄駅から外されたのか?

なぜ「志摩磯部駅」は志摩スペイン村の最寄駅から外されたのか?

三重県にある近鉄系の「志摩スペイン村」。最近では、バーチャルYoutuberの周央サンゴさんと壱百満天原サロメさんがコラボして話題になりましたね。

そんな志摩スペイン村の最寄り駅は、以前ご紹介した志摩磯部駅…だったのですが、2007年からアクセスルートが鵜方駅へと変わっていたのを皆さんは御存知でしたでしょうか。

何故あそこまで作りに凝った駅が外されたのか?今日はそれを追ってみます。

 

現在の様子

こちらが現在の志摩磯部駅。

志摩スペイン村へのアクセス駅としてふさわしくする為、1994年に再整備され、駅舎は志摩スペイン村と一体感がある華やかな作りになっていました。

近畿圏民は修学旅行や遠足で訪れることも多いそうで、なんとなくこの楽しそうな駅で下車されたことを覚えておられる方も少なくないのではと思います。

志摩磯部駅の写真は別記事で挙げたのでそこに譲るとして、ここまで凝った志摩磯部駅が、何故15年程度で放棄されてしまったのかを探りました。

 

議事録を探る

地元自治体である志摩市の議会から探ってみました。

株式会社志摩スペイン村から市に対して、志摩地域における交通ネットワークの整備についてということで考え方が示されまして、その中でスペイン村が開業以来、志摩磯部駅に全特急を停車をさせまして、そして志摩スペイン村の最寄り駅としてPR化されてきたということでございます。志摩スペイン村の入園者以上に、志摩磯部駅の定期以外の乗車人員が減少しているということなどから、鵜方駅を志摩市の交通ネットワーク拠点として位置づけまして、スペイン村の最寄り駅を鵜方駅に変更し、ほかの観光用バス路線との乗り継ぎの利便を向上させるために、関係機関と協議をしている旨の内容の文書をいただきました。

また、最寄り駅を鵜方駅に変更する場合でも、全特急を磯部駅に停車をさせるということがありました。そういったことで、拠点のネットワークというものを見直していくという作業の中で、市全体の観光への効果というものも期待できるということから、志摩市の商工会、また観光協会からも同種の要望をいただいているところでもあります(中略)

近畿日本鉄道株式会社としましては、あくまでも志摩エリア全体の二次交通、駅からの課題、交通アクセスの問題をどのように解決をしていくかという視点で、今後、市や関係機関の皆さんと十分議論をしていく必要があるというふうに考えられておりますし、市としても市全体の交通体系を考えていく必要があることから、「交通体系のあり方に関する懇談会」というのを現在立ち上げまして、市民生活の足としての交通体系について意見をちょうだいしておるということでございます。

出典:志摩市「平成18年 第1回定例会(第6号 3月 9日)」

意外なことに、志摩磯部駅からのアクセス実績があまり良くなかったことが議事録から浮かび上がってきました。

 

志摩スペイン村は志摩磯部駅の南東側に位置しており、そこまで遠いというわけでもないのですが、とはいえ鵜方駅からも確かに行けなくはない距離ですね。

 

谷口覚議員「次に、2点目ですが、いま一度確認をしておきますが、市長のところにあった申し入れは、志摩スペイン村からの申し入れでございますか。もしそうであったら、我々旧磯部町は、近畿日本鉄道との間で開発協定書を結んでいて、スペイン村への拠点駅は志摩磯部駅となっているわけでありますから、お断りをしたらいいんではないかと思いますが、お答えください。」

竹内千尋市長「今の申入書でございますけども、志摩地域における交通ネットワークの整備ということで、申入書をいただいております。この申入書をいただいている先につきましては、株式会社志摩スペイン村からということでございます。先ほど申し上げたような事情を述べられて、最寄り駅を変更したいという旨の申入書が、株式会社志摩スペイン村からいただいておるということでございます。

出典:志摩市「平成18年 第1回定例会(第6号 3月 9日)」

また、当時志摩市の合併前の自治体である磯部町と近鉄で協定を結んでいた関係で志摩磯部駅を最寄りとしていたものの、その変更申し入れが近鉄側からあったことも浮かび上がってきました。

 

結論

すなわち、時系列に追うとこういう事情になります。

・1994年に当時の磯部町の協力で近鉄が「志摩スペイン村・パルケエスパーニャ」を開業させる
・この時、近鉄と磯部町とで「志摩スペイン村の最寄り駅を志摩磯部駅にする」と開発協定書を結ぶ
・この協定の下、志摩磯部駅からのバスアクセスルートを整備。特急も停車化
・志摩磯部駅からはバスの他、クルーズ船航路も準備される予定だった(頓挫)

・志摩スペイン村の入場者数は開業時の半分以下に
・志摩磯部駅の定期外利用者は、志摩スペイン村入園者の減少数よりも減っている
・2004年に磯部町が周辺自治体と合併して「志摩市」に

・志摩市の商工会や観光協会は、交通拠点を鵜方駅にして市全体への観光効果を増やしたい意向
・近鉄も磯部町の後継自治体である志摩市に協定変更を申し入れ
・市が承諾し、2007年から鵜方からのアクセスに変更

と、いわば地元の志摩市と近鉄の利害が一致した結果、鵜方へ変更されたという訳ですね。

せっかく志摩磯部駅があれほど華美な作りで出来たのに、残念ではありますね…。

 

関連リンク

【近鉄】ミジュマルトレインの運用、固定化して公表へ

【近鉄】DH01編成に「志摩スペイン村ラッピング」を施工・運行へ

 

参考文献

志摩市議会議事録

 

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