「奄美・沖縄新幹線」という夢の構想がある?

「奄美・沖縄新幹線」という夢の構想がある?

「奄美大島・沖縄、なんで飛行機でしか行けんのやろ」
「新幹線があったらなぁ」

 

…なんて、皆さんは考えたことがありませんか?

現在、新幹線の南端は鹿児島中央までですが、新幹線が奄美大島を通って沖縄まで出来たらいいのにな……と、誰しも一度は思う(?)であろうこの話。

 

実現可能かどうかはわかりませんが、実際に学者さんがシンポジウム(研究発表会)で発表したプランはあります。

 

それが

SOME CONSIDERATIONS ON THE LINEAR SHINKANSEN LINE BETWEEN OKINAWA AND KYUSHU ISLANDS 」という論文。

訳すと「沖縄と九州島間のリニア新幹線に関するいくつかの考察事項」といったところでしょうか。

 

 

これは、土木に詳しい学者さん達が集まる研究発表会にて公開された「もし作るならこういうところを通れば出来るかもしれないんじゃない?」という、ある程度の技術的裏打ちをもって検討されたものです。

 

 

 

2つのルート

奄美・沖縄新幹線、もし駅を作るとすればどんな駅が出来るでしょうか。

先程の資料では、駅設置場所については示されていないものの、ルートは概ね定められています。

 

出典:「SOME CONSIDERATIONS ON THE LINEAR SHINKANSEN LINE BETWEEN OKINAWA AND KYUSHU ISLANDS」

ルート1は諏訪之瀬島まで西側を通るもの。途中口永良部島・硫黄島付近を通ります。

ルート2は諏訪之瀬島まで東側を通るもの。途中は屋久島を通過するのみで、それ以外に島はありません。

諏訪之瀬島からはどちらも同じルートで、奄美大島・徳之島・沖永良部島を通って沖縄本島に到着するルートです。

 

 

駅はどうなる?

この資料では駅について何も示されていませんが、今回は当サイトが独自に駅を考えてみました。

前提条件は以下の通り。

・新幹線の駅は概ね50kmに1つなのでそれを基準に設置する
・陸続きでない離島の場合で、かつある程度の需要が見込める場合は例外的に設置する
・それ以外の小島では非常出口が作られる

この考え方の下、仮定して引いてみました。

 

画像:国土地理院地図

鹿児島中央(既存駅)

屋久島(ルート2の場合)

諏訪之瀬島(非常出口?)

————–

鹿児島中央(既存駅)

硫黄島(ルート1の場合)

口之島

諏訪之瀬島(非常出口?)

宝島

奄美名瀬

徳之島

沖永良部島

与論島

(鹿児島県/沖縄県境)

国頭

名護

沖縄

宜野湾

那覇

太字は「みずほ・さくら」等、速達タイプの停車駅

鹿児島中央・奄美名瀬・那覇の3駅は利用客も多く、立地的にも主要な場所であることから確定でしょうか。

 

 

問題点

…と、ここまで「あったらいいな」を散々取り上げてきた奄美・沖縄新幹線ですが、現実には課題が山積みです。

問題1:コスト

まず青函トンネルよりも長いトンネルを掘削する必要があり、その建設費用・建設コスト・維持コストは莫大です。

このコストを回収すべく、高めの加算運賃が適用されることが予想されます。

同区間は900km程度もの距離があることから、元々の高額運賃(片道2万円ぐらい?)に更に上乗せされ、果たして利用客は乗るかどうかの懸念があります。

 

 

問題2:海中トンネルが出来るか?

更に、海中トンネルを作らねばなりません。

北海道と青森の間トンネルを通せたのだから沖縄にも通せるのでは?」と思いがちですが、実はだいぶ状況が異なります。

 

北海道~青森を結ぶ津軽海峡は水深が浅く海底の更に下を掘っているので、海中トンネルではなく海底トンネルなのです。青函トンネルは海の中にあるのではなく、土の中にあるのです。

一方で、鹿児島~沖縄の海域は広い上に海底が深い場所も多く、海底トンネルを通すのは不可能で、海底の上にトンネルを作る海中トンネルとなります。

海中トンネルはまだ実現した事例がなく、非常時の脱出口など課題は山積しています。

例えばルート2で挙げられた屋久島~奄美大島の間だけでも約270kmもの距離があり、途中数カ所に人工島などの何らかの中継ポイントを作る必要があります。

 

問題3:コスパ的問題

また、現在の新幹線の速度は300km/h程度ですが、鹿児島中央~那覇間は869kmもの距離があり、単純計算でも3時間程度の乗車時間となります。

九州新幹線で大阪から鹿児島中央まで行くと現在でも3時間半ほどかかりますが、大阪⇔沖縄を乗り通すと合計で6時間半程度の時間がかかることになります。

ただ新幹線ではなく、時速500km/hでの到達が可能なリニアならば、この問題は解決するでしょう。

 

 

まとめ

現在、日本各地では新幹線整備計画に基づいて各地で新幹線が出来てきています。

2014年には北陸新幹線が開業して石川県・富山県に、2016年には北海道新幹線で北海道に新幹線が通りました。今後、2022年には長崎県へ、2023年には福井県、2030年には札幌に新幹線が到達します。

四国でも徐々に新幹線誘致運動が活発化しつつあり、残るは沖縄へ…となるのは当然のことですね。

 

確かに、現状では山積する問題点を解決できておらず夢物語ではあります。

ただ、あの東海道新幹線も元はこういったシンポジウムから一気に加熱し、世論を動かして実現した経緯があるだけに、もしかするとこの論文がきっかけとなって奄美・沖縄新幹線が動き出すかもしれませんね。

 

日本で最初の東海道新幹線は、国鉄鉄道技術研究所が1957年に行った「東京 – 大阪間3時間への可能性」という講演会が初めて世間に公になったところからスタートしています。

この講演会に対して好意的に反応した市民や国鉄総裁、そしてそれを伝えた新聞によって瞬く間に報道されたことで、1959年に工事認可、1964年に東海道新幹線が開業することとなりました。

 

果たして今後100年の間に技術が大幅に進歩し、沖縄へ新幹線ができることになるでしょうか…?

 

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