東海に地盤を持つ鉄道車両製造の老舗「日本車輌」が、窮地に立たされているようです。
日本車両製造は22日、愛知県内にある鉄道車両や橋梁などの全3工場を、親会社の東海旅客鉄道(JR東海)に売却すると発表した。売却額は合計で210億円。売却後はJR東海と工場の賃貸借契約を結び、引き続き使う。売却で得た資金は長期借入金の繰り上げ返済に充て、海外事業の失敗で悪化した財務の改善につなげる(中略)
日本車両は米国やアジアなど海外事業で苦戦。特に米国で2012年に受注した新型鉄道車両の案件は試験車両が現地の基準を満たさず、基本構造も含めた設計見直しが必要になっている。設計・製造コストの増加で赤字幅が拡大し、17年3月期は139億円の最終赤字となる見通し。16年3月期に続き財務制限条項に抵触する可能性があった。
『 日本車両、国内全3工場をJR東海に売却 財務改善めざす 』<http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ22I3I_S7A320C1TJC000/> – 日本経済新聞 2017年3月22日
工場は売却するものの、あくまで業務的にはそのまま日車の製造部門として継続するようです。要はJR東海が工場をリースする形になります。
日本車輌は2008年にJR東海からTOBを受け、連結子会社になっています。
ここまでの経緯
日本車輌は、アメリカにある「カルフォルニア交通局(Caltrans、運行主体は「アムトラック」社)」の普通列車の製造を住友商事から受託。2階建て車両を合計130両製造する計画でした。住友商事の落札価格は3億5200万ドル。
ところが、日車は車両前後から衝突された場合の対衝突性安全基準に関して、連邦基準をクリアできず、基本設計の見直しを迫られていました。
この車両の製造については、2009年の米国復興・再投資法(バイアメリカン法)に基づく補助金を受ける予定になっていますが、この補助金の期限は2017年まで、日車はこの納期に間に合わせることができないことから、違約金を支払わなければいけないことになっています。
この問題は日車だけではなく、同じく受注したスペインにあるマドリード証券取引所に上場している鉄道建設会社、「CAF(Construcciones y Auxiliar de Ferrocarriles)」社も同じような問題を抱えているようです。
同業他社を見ると、「日立製作所」はイギリス向け高速列車の納入で絶好調、大阪地盤の「近畿車輛」も中東向けメトロ車両の製造で順調な成果を挙げているだけに、日車は難しいところを選んだなあ…というのが印象です。
海外事業展開もなかなか一筋縄ではいかず、むつかしそうですね。