広島電鉄では2018年5月10日から「グリーンムーバーLEX 1000形」にて、PASPYなどのICカードを用いた場合に限り、全ての扉から降車できる信用乗車システムを導入していますが、どうも雲行きが良くないようです。
広島電鉄のエリアにある中国新聞によると、このシステム導入後、1日150人もの不正乗車が横行しているとのことです。
広島市内を走る広島電鉄の路面電車の一部で、乗務員のいない扉から降車できるサービスに乗じた無賃乗車が増えていることが同社の調査で分かった。乗降をスムーズにするため昨年5月に始めた「全扉降車」方式の車両で起きており、中には意図的な不正もあった。無賃乗車は1日約150人に上るとみられ、広電は対応に苦慮している(中略)
広電は無作為に抽出した計約6千人分の運賃支払いの有無をビデオ映像で確認した。
その結果、無賃乗車の割合は、全扉降車を導入して間もない昨年7月に0・8%だったのが、同11、12月には1・1%に増えた。多いのはICカードを読み取り機にタッチした際、残高不足などでエラー音が鳴ったにもかかわらず立ち去るケース。他の客に紛れ、タッチせずに降りる客も目立った(中略)
広電の当初の構想では、全扉降車方式は導入後1年をめどに他の低床車にも拡大する予定だった。だが、現在は「仮に全車両に広げたとして1%の無賃乗車があれば年間約6千万円の減収になる。有効な対策を打てるまでは拡大は難しい」(塩田部長)と慎重な姿勢に転じている。
出典:『全扉降車で「ただ乗り」増 広電昨春導入、1日推定150人』、中国新聞α、2019年3月12日
https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=512161&comment_sub_id=0&category_id=256
150名x180円で一日27,000円の減収?
通常、ワンマン運転で前扉しか開かない場合、ラッシュ時などで乗降客の集中による遅延が顕著になりがちですが、信用乗車システムを導入することで利便性向上と乗降時間の短縮を期待され、ゆくゆくはすべての車両に導入したい…としていました
しかし実際に導入してみると、このような事態となってしまっています。今回のテストでは1日150人が不正乗車を行っている…ということですから、金額にすると27,000円、1ヶ月で81万円近くの減収となります。これは無視できない数字ですね。
この信用乗車システムは欧州で特に導入されているケースが見受けられますが、あちらは不正乗車をした場合には運賃の100倍もの罰金を支払うケースもあるのだそうで、性悪説に成り立った仕組みと言えます。
日本でも100倍の罰金を…と言いたいところですが、どうも法律(軌道法)では不正乗車の場合の罰金は3倍までと定められているそうで、180円程度の広島電鉄だとせいぜい540円程度にしかならず、あまり抑止力になりそうもありません。