和歌山に「紀三井寺」という有名なお寺が存在します。
紀勢線の駅名にもなっているこのお寺、境内の階段が231段もあってめちゃくちゃ急なのが特徴なんですが、実際登るとかなりキツイ。
…が、世の中はバリアフリー化の流れということもあり、先日なんと新しくケーブルカーが開業したんです!これはすごい!
このケーブルカーへ乗るためだけに、前回の予告通りわざわざ和歌山まで行ってきました
新規ケーブル敷設!
紀三井寺ケーブルは2022年4月にデビュー。日本国内では現在最も新しいケーブルカーです。
こちらが紀三井寺に敷設された新しいケーブルカー、その名も「文左衛門」です。し、しぶい……
シブい名前の由来には、このような経緯があります。
このケーブルが出来るまで、高齢者や足の不自由な方々を寺から遠ざけていた、あの急な石段には、「結縁坂」という別名があり、それは昔、紀伊国屋文左衛門が母を背負って参詣した故事に由来します。海南市の宮本修志さんと、東京都の女性、T・Uさんのお二人が、紀三井寺に出来たケーブルを「現代の文左衛門」と見抜いて応募下さった命名です。
出典:紀三井寺「紀三井寺ケーブルのニックネーム決定!「文左衛門」」
なるほど、昔にこういう事例があったことからこの名前になったんですね。わからなくもないかなぁ
他にも「きみちゃん」「KIMMY」など紀三井寺を愛称化した名前や、「キミーブル」「紀三井寺オーシャンスカイケーブル」など、境内に設置した応募箱から総数548件の応募があったようです。
オレンジのゴンドラが降りてきました……ん?
こ、このケーブルカー、なんとホームドアが設置されている…!!
大阪メトロと同じような筐体のホームドアがわざわざケーブルカーにあるってすごくないですか?
ケーブルカーでホームドアあるのは多分ここだけでは…
山梨県の身延山久遠寺という場所にあるケーブルカーにもホームドアがついているようです。
乗車時にはホームドア横の「ご乗車」ボタンを押すと上からやってきます。
車内の様子
早速乗り込んでいきます。キャビン内の様子はこんな感じ。
わずか70秒程度の乗車時間ですが、ちゃんと椅子も用意されています。
車内にはつり革や…
更にエアコンも完備…!!70秒だけなのにすごいなぁ
運転士はおらず、エレベーターのように「上る」「下る」のボタンがありました。
定位置は上のようで、一定時間何もしてないと勝手に上へ動き出します。(上にいる時は留置されます)
傾斜角は20度。時速は5.76km/hで、先程も書いたようにわずか70秒(1分10秒)で山頂まで駆け上っていきます。
システム自体は日本ケーブル製、キャビンは南海高野線のケーブルカーも手掛けたスイスCWA製です。定員は18名、着座9名となっています。
車内には小さなモニタも設置。紀三井寺のPR動画が流れます。
紀三井寺ケーブルは完全に鉄道システムですが、法的には鉄道事業法にはあたらないものとなっています。
バリアフリー目的なので、どちらかというとエレベーター的な扱いなんでしょうか。
運賃など
ケーブルカーの運賃は上り600円(うち参拝料400円、運賃200円)、下り200円です。
比叡山ケーブルカーでは税制上から寄付という形を採っていますが、ここは一般的な利用運賃となっています。
山麓駅は清水建設が施工。木材は地元産である紀州材を使用しており、紀三井寺の寺紋である「三つ盛り井桁」をモチーフとした木格子梁で構成されています。
この駅舎全体で2022年度のグッドデザイン賞を受賞するなど、何かと話題に事欠かないスポットですね。
新規参拝効果も
このケーブルカーは、紀三井寺が開創して1250年の記念事業として起工。
整備費用は信徒からの寄進(寄付)や、お寺の持つ財産などを財源としている他、バリアフリー関係整備ということで観光庁から補助金が出ています。
ちなみに、開業に先立って鉄道友の会関係のイベントが開催されたそうですが、神主さん曰く「これまでの参拝客以外に、このケーブルカー目的で新しい参拝客が増えた」とのこと。鉄オタかな…?
戦後開業したケーブルカーは車両や巻取り機の更新時期に来ており、出資できないケーブルカーは淘汰される傾向にあることから、日本国内のケーブルカーは減少傾向にあります。
先日廃止が発表された妙見ケーブルなどがこのケースに当たります。
が、このご時世に敢えて新しいケーブルカーを敷設する意気込み、大変素晴らしいものだと感じます。
皆さんも和歌山へお越しの際は、是非一度紀三井寺に訪れてみてくださいね。
関連リンク
参考文献
日本ケーブル「「紀三井寺ケーブル」が完成しました。」
清水建設「紀三井寺ケーブル山麓駅」