旅するマネージャーさんがツイートされていた、南海電鉄の値上げに関するパブリックコメントの中に、なかなか面白い資料がありましたのでご紹介します。
それは「南海本線は南海高野線よりも維持コストが高く、それ相応の理由が3つある」というものです。
詳しく見ていきましょう。
1つ目:支線が多い
高野線(汐見橋~極楽橋間:64.5㎞))の営業費用が、南海線(難波~和歌山市等:89.5㎞)と比較してローコストである構造的な理由について
(御回答)
1.南海線には、本線の他、老朽化した支線の高師浜線、多奈川線、加太線、和歌山港線を維持するための費用が含まれており、営業キロあたり費用が高くなっています。出典:国土交通省 1)
南海電鉄の路線別決算は、本線とそれに連なる支線とで計算されているようです。確かに南海本線には3つの支線がある一方、高野線は支線が0ですね。
扱い上は支線級である汐見橋~岸里玉出ですが、ここでは本線として計算されているようです。
南海本線 | 南海高野線 | |
---|---|---|
営業費用 | 333.8億円 | 175.2億円 |
営業キロ | 89.5km | 64.5km |
在籍車両数 | 390両 | 302両 |
駅数 | 58 (支線を含む) | 41 |
従業員数 | 1,161 | 777 |
営業費用/営業キロ | 3億7300万円 | 2億7161万円 |
※2019年度のデータ
2つ目:空港線の絡み
先程の支線とも近い要素ですが、南海本線には泉佐野~関西空港間を結ぶ「空港線」が存在します。
車両運用的にも一体的に運営されていますが、コスト計算としても同じ会計として計算しているようです。
すなわち空港線へ従事する従業員と、新関西空港株式会社がりんくうタウン~関西空港間に作った連絡橋へ支払う線路使用料の費用を、南海本線の費用として計上していることが負担額が大きい理由のようです。
3つ目:高架線が多い
南海線の難波・泉佐野間には、高架区間が複数個所存在することから、減価償却費が大きく、高架区間の少ない高野線と比較して営業費用が大きくなっています。
出典:国土交通省 1)
南海本線は高架線が多い=高架線は減価償却費(維持費)が高いことから、営業費用が嵩んでいる…とのことです。
減価償却費とは
税金計算上、国が定めた年数によって固定資産を分割し、その年ごとに費用として計上するルールを指します。
事細かに定められており、今回のような高架線については「鉄道業用又は軌道業用のもの、
橋りよう、鉄筋コンクリート造のもの」で57年と定められています。
例えば1億円で高架線を作った場合はその経費を57年に分割するので、毎年175万円の費用がかかっているという計算をし、それに応じて税負担金が算出されます。
南海だけでなく
意外な形で知れ渡った、南海本線と高野線の関係。
南海電鉄だけが特別そうだとも限らないと思われますので、全国の高架鉄道や支線を多く持つ路線にはコストがかかっているということですね。
高架だけでなく地下もそうだと思われ、最近では京都市営地下鉄の危機が取り上げられるようになっています。
関連リンク
参考文献
- 国土交通省鉄道局「南海電気鉄道株式会社における運賃改定申請について(運輸審議会ご説明資料)」