当サイトで人気のフォント紹介シリーズ。
以前からサインシステムに使われるフォントやその動向などを、鉄道プレスやOsaka-Subway.comで紹介してきました。
今回はそんなサインシステム……ではなく、ちょっとフォーカスする部分を変えて電車の車番にまつわるフォントをご紹介したいと思います。
基本的には…
電車のフォントは、基本的に国鉄時代に制定された「貨車標記文字」「客貨車標記文字」をベースに表記されてきました。
国鉄時代のスタイルに忠実なJR東海ではこのスタイルが守られており、現在でもその姿を見ることが出来ます。
一方で、JR西日本・東日本を皮切りに徐々にそのスタイルを崩して近代的なフォントへ変わりつつある鉄道も多くなっていました。
今回はそんな個性ある鉄道会社の車番をご紹介していきます。
京阪-Frutiger
2007年からの塗装変更時より、京阪グループのCI刷新から採用されているのが「Frutiger」です。
車番のみに限らず、京阪電鉄のサインシステム全般においてもfFutigerが採用されています。
Frutigerはアドリアン・フルティガー (Adrian Frutiger) さんによってデザインされた書体で、フランスのシャルル・ド・ゴール国際空港のサインシステムとして採用された後、世界中へ広がっていきました。
相鉄-DIN
「ヨコハマネイビーブルー」をテーマに、イメージの刷新を図っている相模鉄道が2016年から採用したのが「DIN」です。
厳密にはDINをベースにした書体で、例えば「1」の表記はオリジナルとは少し異なります。
車体に表示するフォントは、ドイツの工業規格である「DIN 1451」をベースとしています。
「DIN」ははっきりとした字体のラインで高速時の視認性が高く、ヨーロッパの道路標識やドイツ鉄道(DB)の車体標記等に用いられるフォントであり、シンプルかつ明確なラインを持つフォントです。
出典:https://www.sotetsu.co.jp/design-pj/
JR西日本-ゴナ、新ゴ
JR西日本において、1991年に登場した207系から採用されているのが、「ゴナ」と「新ゴ」です。
写真の323系はおそらくゴナで、元のフォントよりも若干上下方向を圧縮した形となっています。
民営化第1号の新形式であった221系では国鉄と同じ書体でしたが、先述の207系からはこの書体が採用されたようです。
JR東日本-ヘルベチカ
JR東日本では「ヘルベチカ」を採用。
JR西日本と同じく、民営化当初に出た車両(例えば719系)には国鉄書体が用いられていましたが、いつ頃からかこのヘルベチカが採用され、今や大半のJR東日本エリアで見ることが出来ます。
JR四国-Serpentine/Enterprise?
JR四国では、1500系気動車において「Serpentine」らしきフォントを斜体にして採用しているという説があります。
また、「Enterprise」という説もあるようです。どちらもよく似たフォントですね。
更新された1200系気動車でもこの書体が採用されています。
名鉄-Engraved Roman
名古屋鉄道では、パノラマカーの時代以前一貫して「Engraved Roman」が採用され続けています。
アメリカンなスタイルのこのフォントは、まだ名鉄が「愛知電気鉄道」と呼ばれていた時代から用いられているのだそう。
「愛知電気鉄道」の名前は1935年まであったので、少なくともその時代から続いている由緒正しきものということになります。
余談ですが、名鉄の車番自体を製作しているのは名古屋市熱田区に位置する「株式会社成田製作所」さんだそうです。
以前は真鍮製でしたが、現在はステンレス製のものを用いていて、グラインダーで丁寧に研磨されているのだとか。
現在の最新系列である2200系や2000系ミュースカイにおいても例外なく採用され続けているなど、名鉄の伝統となっています。
近鉄-ヘルベチカ
近鉄ではアーバンライナーの時代から、JR東日本と同じく「ヘルベチカ」を採用しています。
南海-独自書体(旧)
南海では、かつて名鉄のローマン体と同じような書体が採用されていました。
しかしながら現行の8300系はもちろん、22000系「ズームカー」から支線用に改造された2200系に至るまで、1985年頃からその採用が途切れています。
おそらく最後に採用されたのは9000系で、その後イメージをガラッと変えて登場した2000系からは他の鉄道でよく見る「貨車標記文字」ライクな書体になっています。
神戸市営地下鉄
神戸市営地下鉄では、市電(路面電車)時代から採用しているかくばった書体を現在でも使用しています。
いつ頃からなのかは定かではありませんが、古い写真を見る限りでは300形の時代(1930年頃)から既にあるようです。
最新系列である6000形でも同じものが使われており、90周年を迎える由緒正しき書体です。
東京メトロ
東京メトロでは、営団地下鉄時代から用いられている独自書体が現在でも採用されています。ネットで探してみると「営団数字フォント」なんて呼ばれ方もされているようですね。
最初に採用されたのは営団地下鉄時代の丸ノ内線300形からで、1954年に登場。以後半世紀にわたって採用され続けています。
その他
この他、阪神電鉄でも独自の書体が採用されています。
関連リンク
参考文献
東京都営地下鉄「第3回手書きとトレースがつくった丸み「車両番号の文字」」
成田製作所「19. 名鉄の車号を作る」