JR東日本はダイヤ改正日である2021年3月13日から、自社線初となるATO(自動列車運転装置)による電車の運行を開始すると発表しました。
第一弾となるATO導入路線は、常磐線(各駅停車)の綾瀬~取手間です。
JR東日本で初となりますが、あわせてJR路線でも初めてのATO導入事例となります。(試験ではJR九州が先行)
このたび2021年3月13日から、当社で初めて常磐(各駅停車)線にて自動列車運転装置
(ATO)を順次使用開始します。
○自動列車運転装置(ATO)の導入および今後のホームドア整備により、常磐(各駅停車)線のさらなる輸送の安全・安定性向上を図ります。出典:東日本旅客鉄道『JR東日本で初めてとなる自動列車運転装置(ATO)の使用開始について』
ATOとは
ATOとは自動列車運転装置(Automatic Train Operation)のことで、運転士がボタンを押すと電車が出発。その後停止させるまでを全自動で行う装置のことを言います。
JR東日本では初めてとなりますが、他社では1976年の札幌市営地下鉄から既に導入されている確実性の高い技術でもあります。
大阪では長堀鶴見緑地線や千日前線で、東京でも丸の内線や南北線などでも既にATOが導入されています。
常磐線へのATO導入は2019年10月に発表済みで、1年半の歳月を経て導入されることとなりました。
今後はホームドアの導入も進められる予定で、JR東日本の「スマートトレイン構想」を実現する第一歩の施策となります。
スマートトレイン構想とは
JR東日本は2027年の中期経営計画で発表した構想。新エネルギーを活用したり360km/h運転をする新幹線の実現、安全性向上やマンパワーの削減など。
運行面では「ドライバレス(自動運転)の実現」「ICT活用による輸送障害時の列車ダイヤの早期回復」などを目標として掲げている。
かつてあった「CBTC」構想
実は、常磐線は今回のATO導入前に「CBTC」導入構想がありました。
CBTCとは無線列車制御システムのことで、従来とは異なり
・軌道回路(レールに弱い電気を流して場所を確認する方式)が不要
・無線による情報通信
・閉塞がなく、列車の間隔を無線で制御する方式
と、これまでの概念とは異なり全く新しい方式。
2014年にフランスのタレス社と基本設計契約。2020年頃にCBTCを導入するとしていました。
しかしながら、技術課題の多さと既存の「ATOS」と整合性をあわせるためのコスト面から実現が困難と判明。2017年に断念したと報道されていました。
JR東日本が仏タレスと進めていた常磐緩行線への運行管理・列車制御システム(CBTC)導入を断念したことが分かった。欧州企業が国内の鉄道システムを手がける初の事例として注目されていた(中略)
JR東日本は2020年の導入を目指してタレスと設計作業を進めていたが、技術課題と費用の面から実現困難と判断した。既存の運行管理システム「ATOS(アトス)」との整合性や鉄道無線で使う周波数の違いなどを克服するには設備投資がかさみ、費用対効果が見込めなかった。
CBTCは無線式列車制御と運行管理機能を併せ持つ国際規格対応のシステムで、海外の地下鉄など都市鉄道に普及する。自動運転に展開できる技術で、国内の鉄道システムメーカーも開発や海外での営業に力を注ぐ。国内の鉄道事業者は22年に東京メトロが丸ノ内線で導入する計画だ。
JR東は運行管理にATOSを使い続ける方針。列車制御のみを従来の地上信号方式から、地上と車両との間に無線を使うATACSに更新していく。
出典:日刊工業新聞『首都圏のICT列車制御、JR東が海外方式導入を断念-国産「ATACS」推進』
仮にCBTCが導入されていれば、これを前提とした自動運転システムが出来上がっていたことでしょう。
今回のATO導入は、あくまで既存システムである「ATOS」ベースの自動運転システムということになります。
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