当サイトでも何度か取り上げていますが、埼玉にあった「写研埼玉工場」が解体されはじめています。
話は聞いていたのですが、現場が関東ということもあって(私が関西住みなこともあり)なかなか行けず、先日ようやく足を運ぶことが出来たので見てきました。
写研埼玉工場の今
写研埼玉工場は、副都心線の終点である和光市から徒歩15分程度の場所に立地しています。
長年工場自体はありましたが、稼働はなされていなかったようです。
これについては、こんな文献があります。
2月9日、Y3部長は、埼玉工場に勤務する全従業員 30 名に対して、仕事がないことを理由に同月 13 日から自宅待機とすることを通告した。
写植機の販売台数の減少により、機器の組立て作業等を行っていた埼玉工場では出荷量が減少していたが、(筆者注:平成)14 年ころからは人件費も賄えなくなったため、本来業務とは関係のない請負作業(内職)を取得して従事させていた。18 年に入ると写植機の出荷量がさらに減少し、請負作業を増やしていたが、19 年にはこの請負作業もなくなった。出典:東京都労働委員会「命令書」
https://www.mhlw.go.jp/churoi/meirei_db/mei/pdf/m10406.pdf
埼玉工場で行う仕事がない、さりとてこの工場を売却するほどでもない…といった具合でしょうか。
埼玉工場は10年程度に渡って全く動きがなかったそうですが、平成19年から全く仕事がなくなった…というこの文献の情報とも一致します。
解体工事自体は2020年4月15日から始まりました。
既にかなり解体工事が完了しているようで、周辺道路からは守衛室と一部の壁ぐらいしか建物が確認できません。
隙間から一部姿が見えます。
元は6階建ての立派な建物だったようですが…、今はもう2階部分までしか建物がありませんでした。
公開されている建築計画のお知らせを見ると、敷地面積は9931平方メートル、地上3階建ての建物とのこと。
新しく立つのは「ヤオコー」という関東地方を中心に出店するスーパー(もしくは敷地面積が広いので物流センターの可能性もある?)のようです。
建設期間は2021年1月15日~9月末まで。つまりこの建物は、1月までに完全解体されることになります。
写研本社
ところで、ついでに東京都大塚にある写研本社の方も見てきたのですが、こちらは特に何も変化はないようでした。
50年前ぐらいに建てられたような、なんともレトロなビルですね…。
タクシー運転士さんの話
余談ながら、道中で利用したタクシーの運転士さんがなんと元デザイナー系(!)のお仕事に就かれていたそうで、興味深い話を色々と聞かせてくれました。
「昔は写研さんも羽振りがよくて、こうして駅から何度か社員さんを送迎したこともあるんですよ。お客さん知ってます?写植って。今はデジタルで簡単だけど、昔は一つ一つを……今どきはもうそんなことしないですよねぇ」
和光市は、写研文化が根づいた街だったのかもしれませんね。