よく「あの路線は赤字だ!けしからん!早く黒字化出来るようにしろ!」と息巻く方がおられるのですが、基本的に鉄道は30~40年間の運営で、はじめて元を取るように設計されています。
国土交通省のサイトでも次のように説明されれています。
鉄道事業の収支採算性を見込む上で前提となる償還期間については、鉄道施設の耐用年数を総合的に勘案し、現行の「30年」を「40年」程度に延長することが適当
出典:http://www.mlit.go.jp/kisha/oldmot/kisha00/koho00/tosin/tetuseibi/tetuseibi4_.htm
着工に向けて話が進んでいるなにわ筋線の資料についても、「40年で黒字転換」「償還期間40年」など、40年という数字が随所に散見されます。
また、鉄道の施設には減価償却という概念があります。
「減価償却費」とはどのような費用であり、なぜ毎年多額に発生するのかを説明していきます。
南北線の営業に欠かせないトンネル、電車、駅、信号などの資産は、長期にわたり使用可能です。そのため、こうした資産の取得に要した費用を1年の収益で賄うのではなく、使用可能な期間内に少しずつ費用がかかるものと扱います。また、一方で、資産は経年劣化などにより少しずつ価値が目減りしていきます。これら「費用を少しずつ配分し、その分価値が目減りしていく分」を減価償却費と言います。この減価償却費は実際に現金の支出を伴うものではないため、資産を取得した際の借入金の返済のための資金や資産を更新するときの資金等となります。
減価償却費の算出方法ですが、資産の取得金額を使用可能な期間(=耐用年数)に割り振ることによって算出します。耐用年数は、地方公営企業法施行規則により、トンネルであれば60年間、電車であれば13年間などと定められています。
「支払利息」のところでも説明したとおり、南北線には多額の建設費がかかっており、大きな資産価値が生じるため、毎年多額の減価償却費が発生することになります。
出典:https://www.kotsu.city.sendai.jp/kigyou/keiei/27subway_keiei_1.html#d
つまり、開業後数年で「あの路線は黒字だ赤字だ」という話をすること自体がナンセンスなのです。
大阪では長堀鶴見緑地線や今里筋線などがここにあたりますが、建設費をまだ返し終えていないのですから、40年が経過していない現時点では赤字で当然なのです。
鉄道の耐用年数は?
鉄道施設には様々なものがありますが、耐用年数はモノによって様々です。
これらを取得の費用÷この年数で割った数字が減価償却費になります。例えば…
・鉄筋コンクリートの隧道(トンネル)は60年
・停車場設備は32年
・軌条(レール)や第三軌条は20年、ポイントは15年
大阪の地下鉄路線も、1970年前後の万博時に揃うように建設された路線が多く、開業から40年が経過した2010年からは中央線・堺筋線が黒字化を果たしています。
長堀鶴見緑地線も、全線開業から40年の節目を迎える2037年にどうなるのかが注目されます。
また、40年を迎えても残念ながら採算に乗り切らない千日前線のような例もありますが、地下鉄はネットワークを形成してなんぼですので、多少の赤字程度ならば「都市政策においての必要経費」だと割り切る必要もあります。
例えば赤字だからといって千日前線を廃止してしまえば、難波から谷町九丁目・鶴橋に行く手段は近鉄電車のみになってしまい、利用者は2社分の割高な運賃を支払わなければいけないので負担がかかりますよね。
大阪市として、大阪メトロとしてトータルから見てプラスに働いているのであれば、多少の赤字は目をつぶる方が得策なのです。
最近つくばエクスプレスが僅か13年で黒字化を果たした事がニュースになりましたが、あの路線ももとは「36年での償還を見込んでいた…」とあります。
路線の黒字赤字談義をする前に、まずは40年を頭に入れてみてください。
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