昨年8月に運行中の南海ラピート(50000系)から台車の亀裂が見つかった問題ですが、本日国土交通省の運輸安全委員会によってその原因究明の結果が発表されました。
それによると、台車メーカー(日本製鉄)の指示ミスによるものだそうです。
情報修正協力:泉和様
事の顛末
出典:運輸安全委員会「鉄道重大インシデント調査報告書 RI2020-2」、令和2年11月26日
2019年8月23日。運行中の岸和田→堺を走行中の南海特急ラピートβ41号から「金属が擦れる音がする」と車掌さんが異音を探知。
その日は万が一を考えて検査作業員さんを乗せてそのまま運行を行い、23時34分の運用終了後に住ノ江にある車庫へ回送して外から台車を検査したところ、台車に亀裂が見つかったのです。
ラピート用の50000系は全6編成が在籍していますが、この他4つの台車で同じような亀裂が4箇所発見されています。
この原因について、事故調査報告書では次のように記載されています。
車両の台車枠の横ばりと主電動機受座背面の補強リブとの溶接部に発生した亀裂が、疲労により進展し、外表面まで達したものと推定される。
横ばりと主電動機受座背面の補強リブとの溶接部に亀裂が発生したことについては、本件台車メーカーで主電動機受座背面に本件補強リブを取り付ける際に、開先加工を実施せずに溶接を行って取り付けたことにより溶接欠陥ができ、これを起点にして亀裂が発生したものと推定される。
開先加工が実施されなかったことについては、本件台車メーカーの台車技術管理室から開先加工を行う溶接職場に対し出された作業方案に、開先に関する記載がなく、明確な作業指示がなかったため、溶接職場の作業者が開先加工を行うことを知らなかったことが関与したものと考えられる。出典:運輸安全委員会「鉄道重大インシデント調査報告書 RI2020-2」、令和2年11月26日
また南海電鉄側でも今回亀裂が発生した場所が重要検査の部分に指定しておらず、もし今回のインシデントがなかったとしても、発見が遅れたものとされています。
車掌さんの動き
それにしても、この異音を検知した車掌さんの弁が事故調査報告書に次のように書かれていますが…いやはや、なんともすごい。
車両の揺れに合わせて「キーキー」という金属音が鳴っていることに気付いた。初めて聞くような音ではなかったが、いつもより音が高いと感じた。
出典:運輸安全委員会「鉄道重大インシデント調査報告書 RI2020-2」、令和2年11月26日
さすがプロ。
異音検知のあと、即指令に報告→その日の晩に亀裂発見…という流れ。
今回の台車亀裂と異音は無関係だったんですが、結果的にはこの車掌さんのおかげで台車亀裂を早期に発見する事ができ、事故に連なる可能性を未然に防げたのですね。
関連リンク
参考文献
運輸安全委員会「鉄道重大インシデント調査報告書 RI2020-2」、令和2年11月26日