阪堺電気軌道は、現在210円均一である運賃を230円へ値上げする意向であることを明らかにしました。消費税以外での運賃改定は、1995年以来25年ぶりになります。
なお、国土交通省近畿運輸局への上限運賃申請は250円(実施運賃は230円を予定)としています。
当社の運賃は 2014(H26)年 4 月の消費税率改定に伴い、翌 2015(H27)年 2 月に転嫁を行いましたが、1995(H7)年 3 月以降、本格的な運賃改定は見送ってきました。
しかしながら、交通手段の多様化や少子高齢化による就労人口の減少等の要因から、1998(H10)年度に11,048千人にご利用いただいておりました輸送人員は2009(H21)年度に7,220千人まで落ち込み、赤字経営が常態化しておりました。そのため、自立再生可能な事業構造に向けた全般的な見直しを関係各所と行い、堺市より2010(H22)年度から10年間の支援を受けることになり、安全性と利便性の向上や利用者の拡大に資する施策に取り組みました(中略)利便性向上に資する施策を実施することで、2018(H30)年度の輸送人員は8,202千人まで回復いたしました(中略)
今後もバリアフリー化や旅客サービス設備の改善を実施し、利用しやすい交通環境を整備するため、老朽化した車両や施設設備の更新、サービス改善や安全性確保に資する投資に加え、大阪府における最低賃金の大幅な上昇により、従業員の確保や外注工事費の高騰による負担の増加が見込まれ、今後の収支見通しにおいて現在の認可上限運賃に変更しても収支改善を図ることが困難な状況にあります。
出典:阪堺電気軌道「軌道旅客運賃の上限運賃変更認可申請について」
https://www.hankai.co.jp/_wp/wp-content/uploads/2020/06/c35f3e663405c1e3da56379f58296411.pdf
値上げの理由
文中のプレスリリースでも触れられていますが、今回の値上げの理由としては
・バリアフリー化への投資
・老朽化車両、駅などの施設のリニューアル
・大阪府の最低賃金上昇
・従業員の確保や外注工事費の増加
を挙げています。これらは利用者としても納得するところであります。
またここには挙がっていませんが、堺市からの10年間の補助金制度が終わってしまうことも背景にありそうです。
今回の値上げ申請の背景としては、9月末をもって10年間続いてきた堺市からの補助が終了する、というのもありそうですね。https://t.co/AcKfZ5yEwA
— 彩葉 (@iloha_train) June 30, 2020
例えば阪堺の車両は、鉄道車両としては異例の経年90年というモ161形の存在があります。これらの車両は、現在超低床車両である1001形・1101形の投入によって淘汰が始まっています。
撮影:北河南様
車両については以前お伝えしたように、バリアフリーに対応した車両(1001形・1101形)を2028年までに4編成導入するとしていたことから、今回の運賃改定で更に車両の投入が進められるものと推測されます。
施設のバリアフリー化についても、2016年度に天王寺駅前・阿倍野電停、2019年度には恵美須町電停が施工されました。
また、アベノミクス効果でインフレ化が(ようやく)進行し、最低賃金が毎年のように更新されています。これらを受けて阪堺電気軌道としても給与を引き上げる必要があります。
阪堺電気軌道スタッフの皆さんがより良い待遇で働けるようになるのは、鉄道ファンにとっても願うところなのではないでしょうか。
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