阪急電鉄が車内にて「毎月50万円もらって生きがいのない生活、30万円だけど仕事が楽しい生活、どっちがいいか」という広告列車「ハタコトレイン」を出して、あまりにも時代錯誤な内容に「やりがい搾取である」などの批判が相次いて炎上しました。
阪急電鉄の中吊り広告といえば、低俗的な週刊誌の扇動広告は扱わないということでも有名なのですが、今回は自己啓発本を出す出版社の広告という予想外な方向からの広告出稿で物議を醸しました.
ブランディングやマーケティング戦略がうまい阪急としては珍しく炎上という形になりましたが、いったい何がダメだったのか、そして炎上した際の広報としての対応を、後学のためにも簡単にまとめてみました。
当該編成は?
この列車の当該編成は
宝塚線…1006F
神戸線…1008F
京都線…1304F
の3本。京都線の1304Fは大阪メトロ堺筋線にも乗り入れる車両です。
https://t.co/bndwoPzccs
神戸線の当該も車両交換らしいです— Yuu Saigyoji@いろいろ (@2huPH) June 10, 2019
フォロワーさんからの情報によると、この騒動を受けて急遽運用中だった車両を全交換したとのこと。炎上騒ぎが大きくなってきた夕ラッシュ前には全て車庫内に引き戻されたようです。実に火消し対応が早くお見事。
【対応策】
・問題点はすぐさま目立たないようにする
当日の流れ
この阪急の広告のイヤなところは逃げ切った世代の人が現状を理解せずに発言してるところ。この半額が俺たちの標準だ。 pic.twitter.com/OETkqHW1fN
— kenkirihara (@kenkirihara) June 9, 2019
騒ぎになったのは、このツイートを投げた9日22時頃から少したった10日の朝頃。
いよいよ今週末の6月16日(日)に『スルッとKANSAI バスまつり』開催!
昨年・一昨年と2年連続で台風による中止に見舞われ、今年こそ!通常の雨天ならイベントは決行です。
◎6月16日(日) 10時~16時
(雨天決行・荒天中止)
◎京都・岡崎公園
☆公式ページ
→ https://t.co/Ag2YIafuoM https://t.co/E71fbdZF6Y— 阪急電鉄 【公式】 (@hankyu_ex) June 10, 2019
10日、この日のTwitter阪急公式アカウントは12時から沈黙。
業務日である平日には比較的多くのツイートを投げる同アカウントとしては珍しく、ひたすら他アカウントのRTのみをする状態でした。
明治から数えて5つ目の元号を走り始めた令和の節目に、働く全ての人を応援する企画列車「 #ハタコトレイン 」を運行します。
様々な業界・世代の働く人々の思いを紡いだ言葉集「はたらく言葉たち」とコラボし、仕事に誇りと志を見出す人々の言葉たちで電車内をジャックします!https://t.co/1BSYuvXC2t pic.twitter.com/7XEh6cxCet— 阪急電鉄 【公式】 (@hankyu_ex) May 30, 2019
また、阪急の広報アカウントは間接的にしか関与していないので、「謝罪する」というのも違うように思えることから、この対応はギリギリ出来るベストだったのではないでしょうか
【対応策】
・炎上騒ぎをこれ以上増やさないためにもツイートしない
しかし、公式アカウントへの批判リプライが集中。
「やりがい搾取」などの批判がありました
「月50万円で生きがいない生活か、30万円で仕事が楽しい生活か」 物議醸した阪急電鉄の広告が中止に https://t.co/MMXIckM1mb @itm_nlabから pic.twitter.com/NMPrTfRHpK
— ねとらぼ (@itm_nlab) June 10, 2019
20時53分頃、謝罪という形で終止符を打ちました。
個人的には謝罪するようなことではないように思えますが、同社としては「公共交通機関の広告として内容が不適切だった」とのこと。
阪急梅田2階中央改札内にて
『UMEPAN-うめぇぱん-阪急梅田店』が期間限定オープン!昨年の第1弾に引き続き、第2弾も大好評♪
バラエティー豊かなパンたちが売場に勢揃い!
この機会にぜひお立ち寄りください!☆詳しくはコチラ
→https://t.co/ZQdwHbAF8P
(駅ナカ担当) pic.twitter.com/D7bqln0w6Y— 阪急電鉄 【公式】 (@hankyu_ex) June 11, 2019
その後公式アカウントとしては特に何も言及せず、11日の19時から再び再開した模様です。
何が問題だったのか
観察していると、どちらかといえば阪急側はとばっちりのようにも見えます。
確かにこの広告を通した、意思決定をしたという意味では阪急電鉄にも責任がありますが、有責の割合でいうとどちらかといえば「稟議上どうしようもない」立場であり、また広告は代理店である株式会社阪急エージェンシーとそれを依頼した株式会社パラドックスにあるので、そちらの方が有責度合いが大きいように思えます。
まぁ、阪急公式Twitterもこの宣伝をした手前、無関係ではありませんが…
広告内に過労で自殺に追い込んだワタミ社長のような発言(ありがとうを集めるために仕事をする)があったことや、氷河期世代以降とバブル世代以前とで世代の分断が起きていることも、今回の炎上に寄与したように思います。
私たちの目的は、
お金を集めることじゃない。
地球上で、いちばん
たくさんのありがとうを
集めることだ。外食チェーン 経営者/40代
(掲示された阪急広告より)
現役世代は、給料の上昇は見込めないのに、所得税、住民税、健康保険、厚生年金、雇用保険、介護保険が負担になる…と、必ずしも待遇は良くありません。
そういう世相にもかかわらず、80代のご老人からの上から目線(と感じる)な説教臭く、時代錯誤な内容の広告は大きな反感を買ったのでしょう。
(調査中)阪急のアカウントはどこの課なのか
お電話で広報部へお問い合わせいただいたようで、「柱があってもよければ」という回答なのですが、会話の中で柱の太さまでは、双方認識していなかったことでしょう。途中の柱がこんなに太いんですよ。
(ちなみに中の人は広報部ではありません) pic.twitter.com/l7zGH9d1GK— 阪急電鉄 【公式】 (@hankyu_ex) January 29, 2015
阪急公式アカウントの方は広報部ではない、とのことですが、神戸新聞のインタビューによると
ーお1人での運用ですか?
「開始当初からずっと私1人が担当しています」
ー投稿主のキャラクターが変わったのでは、と感じさせる時期がありました。
「人は固定ですが、ツイッターを活用した情報発信やアカウントの活かし方は常に手探り状態です。開始当初に比べるとアカウントの雰囲気もまるっきり変わっています。今のような少しユルい系になったのは、2014年度中頃からじわじわとですね」
ー普段はどんなお仕事を?
「阪急沿線のおでかけ情報をホームページで発信しています」
出典:https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201904/0012284020.shtml
Webでおでかけ情報を発信しているところにいるとのこと。これは広報ではないんでしょうか…
関連リンク
「月収の基準ずれてる」 阪急電鉄の中づりに批判殺到 – 朝日新聞(20:53)
https://www.asahi.com/articles/ASM6B6FJ9M6BPLFA00Q.html
「月50万円で生きがいない生活か、30万円で仕事が楽しい生活か」 物議醸した阪急電鉄の広告が中止に(20:53)
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1906/10/news130.html
ブラック企業を肯定?阪急電鉄の中吊り広告に批判の声 – BLOGOS (14:34)
https://blogos.com/article/383274/
「毎月50万円もらって…」 阪急車両ジャックに「時代の違う感性」と批判 – Jcastニュース(13:14)
https://www.j-cast.com/2019/06/10359646.html?p=all