皆さん、路面電車って好きですか? 私は地下鉄の先輩ということもあって大好きです。
2000年頃から導入されているLRT・超低床車と呼ばれる新型路面電車は、20年が経過し全国へ配備されるようになりました。オーダーメイドが基本であった時代とは少し異なり、現在はある種の規格品に沿った車両づくりが行われています。
概ね「インチェントロ(ブレーメン形)・コンビーノ・リトルダンサー・JTRAM」の4つに分けられるのですが…どれがどれかが掲載されているページが意外とないことに気づきました。
そこで!今日はそれらをざっくりとまとめたページを書いてみることにしました!
インチェントロ(ブレーメン形)
富山地方鉄道「セントラム」9000形現在、日本でLRTといえばこれを指すほど有名になった新型路面電車。
2006年に路面電車としては初めてブルーリボン賞を獲った富山ライトレールもこのモデルなので、「ライトレール」「LRT」というとこれを思い浮かべる方も多いと思います。
ドイツ製の路面電車「インチェントロ」を、新潟トランシスがライセンス生産。日本向けに使いやすいようカスタマイズしたり保守部品を新潟トランシスがストックしているので、鉄道事業者としても導入しやすくなっています。
「ブレーメンの音楽隊」で有名なブレーメン市へ最初に導入されたことから、俗称として「ブレーメン形」という名前がつけられていますが、正式な名前はありません。
ドイツ版Wikipediaでは「GTxN/M/S」とされているようです。
ブレーメン形の特徴
・ドイツ製
・…を、新潟トランシスが日本向けに使いやすくアレンジ
・ドイツ製でデザインがかっこいい
・現在日本でよく見る新型路面電車(岡山、富山、福井…宇都宮もこれになる予定)
ブレーメン形の導入都市
日本では現在、熊本へ初期に投入されたタイプと、現在投入されている後期モデルの「インチェントロ」と呼ばれる2種類が存在します。
初期タイプ
・1997年 熊本市交通局 9700形
後期タイプ・インチェントロ
・2002年、2011年 岡山電気軌道9200形 「MOMO」
・2004年 万葉線 MLRV1000形
・2006年 富山ライトレール TLR600形(ブルーリボン賞受賞)
・2009年 富山地方鉄道 9000形 「セントラム」
・2009年 熊本市交通局 0800形
・2013年 福井鉄道 F1000形 「フクラム」
・2016年 えちぜん鉄道 L形 「ki-bo」
・2022年頃 宇都宮ライトレール(予定)
コンビーノ
ブレーメン形と同じく、ドイツ製シーメンス社の路面電車。世代的には最も古い1999年に投入されたモデルになるのですが、非常にデザインが美しい。私の大好きな電車です。
ただブレーメン形と違ってこちらはドイツ・シーメンス社からの直輸入モデル。工場がドイツにあるので、部品調達に時間がかかったり、高温多湿な日本の気候に合わず故障してしまうケースもあるようです。
導入当時(1999年)は超低床車がコンビーノか先程のブレーメン形ぐらいしかなかった故の選択肢なので、今後シーメンス社が日本に代理店を作るなど便宜を図らない限り、普及は難しいでしょう。
現在5007編成が休車状態として部品取りになるなど、広電側も保守に苦労しているようです。
コンビーノの特徴
・ドイツ製
・デザインが極めて美しい
・採用は広島電鉄のみに留まる
・やや故障が多い
コンビーノの導入都市
・1999年 広島電鉄5000形「GREEN MOVER」
リトルダンサー
現在日本で最もよく見る、アルナ車両が作った国産の超低床車です。
上記欧州製2車両と異なりこちらは従来の路面電車に近い動力機構(左右の車輪を車軸で繋いだタイプ)を採用することで、メンテナンスしやすいのが特徴です。
例えばブレーキ。海外製路面電車は減速度の高いディスクブレーキが多いのですが、一方でそれは乗客の転倒事故に繋がりかねず、鉄道事業者としては敬遠する傾向にあります。
従来日本の路面電車が使っている鋳鉄製のブレーキだと、雨天時にも安定したブレーキ力が得られる・軽度な車輪の減りをブレーキで削って綺麗な状態に保てる(=フランジがなくなって騒音が抑えられる)などのメリットがあります。
それらもあってか鉄道事業者からも人気で、現在は「ブレーメン形」よりも多くその姿を見る車両となっています。富山では両方が採用され、両者の共演を見ることが出来ます。
ちなみに「リトルダンサー」の名前は、超低床車で電車の床が低い=段差が小さい=リトルな段差=リトルダンサーなんだとか。ギャグかーい。
リトルダンサーの導入都市
・2002年 鹿児島市交通局 1000形「ユートラム」
・2002年 土佐電気鉄道100形「ハートラム」
・2002年 伊予鉄道モハ2100形
・2004年 長崎電気軌道3000形
・2007年 鹿児島市交通局 7000形「ユートラムⅡ」
・2007年 函館市交通局9600形
・2008年 豊橋鉄道 T1000形「ほっトラム」
・2010年 富山地方鉄道T100形「サントラム」
・2011年 長崎電気軌道5000形
・2013年 札幌市交通局A1200形「ポラリス」
・2013年 阪堺電気軌道1001形「堺トラム」
・2015年 筑豊電気鉄道5000形
・2017年 鹿児島市交通局7500形「ユートラムIII」(ローレル賞受賞)
・2017年 伊予鉄道モハ5000形
・2018年 札幌市交通局1100形「シリウス」
・2018年 とさでん交通3000形「ハートラムII」
・2020年 阪堺電気軌道1101形
JTRAM
国産で初めて先の2社と同じ、独立した車輪式台車を採用した超低床車。三菱重工・近畿車輛・東洋電機の3社タッグで作られています。
コンビーノの項目でも書きましたが、ドイツ製では気候があわなかったりメンテナンスするために一々ドイツへ輸送したりと時間や労力がかかったり、また座席が少ない・冷房がイマイチなど日本の事情にあわせる為、日本のメーカーが立ち上がりました。
こちらは第2世代のJTRAM「5200形 APEX」。2019年より導入されています。
JTRAMは広島電鉄のみでの採用となっています。広島電鉄ではブレーメン形やリトルダンサーが一切いない代わりに、広島電鉄だけで見られる「コンビーノ」・「JTRAM」が共演しています。
JTRAMの導入都市
・2004年 広島電鉄 5100形「Green mover max」
・2013年 広島電鉄 1000形「PICCOLO・PICCOLA・GREEN MOVER LEX」
・2019年 広島電鉄 5200形「Green mover APEX」
ちなみに
冒頭で「こういう超低床新型路面電車のことをLRTと呼ばれることがある…」と紹介しましたが、厳密には意味が異なります。
ライトレールは「路線の大多数を専用軌道で走り、ちょっとだけ道路を走る電車のこと」を意味します。例えば広電宮島線や、阪堺電気軌道や東急世田谷線などが当てはまります。
また、こういった低床車両のみを表す場合は、LRV(ライト・レール・ビークル)と言います。
関連リンク
参考文献
田島 辰哉(アルナ車両)「純国産低床路面電車の開発について」