「ひえい」は、近年の来訪者の増加に呼応して「比叡山・びわ湖観光ルート」をさらに振興させるために、出町柳と八瀬比叡山口を14分で結ぶ叡山本線の観光用として、732号車を改造した車両です。
車体は台枠や骨組を残して大きく改造を施しました。外観の光沢ある深緑色は比叡山の深い森を想わせ、多用されている印象的な「楕円」は沿線の「神秘的な雰囲気」や「時空を超えたダイナミズム」などのイメージを表現しています。側面の金色のストライプは比叡山の山霧を表わしています。
前照灯2基が前面楕円リング内側の上部と下部に分かれて設けられ、尾灯は下方の曲線に沿う位置にあります。このようなデザインは極めて独創的で、改造車両であることを感じさせない一方、風情のある洛北の街並みとも十分に調和しています。
車内では濃緑色の壁と黒色の吊輪、黄色のシートを橙色のLEDダウンライトが照らしだし、優美な雰囲気を醸し出しています。
ロングシートの採用によって通勤通学輸送も兼用しています。深い座り心地のシートは一人あたり525mm幅のバケットタイプで、背もたれとヘッドレストが車外展望を妨げないように楕円形固定側窓の間柱部に配置されています。また、八瀬比叡山口寄車端部は折り畳み式で、乗客の多寡に柔軟に対応しています。
改造以前の車体中央の窓付近は立席スペースにし、楕円形大型固定窓を同様に設けて、ワイドな眺望を楽しめるように工夫しています。
主電動機と台車は京阪電気鉄道5000系の既使用品、空気圧縮機は大津線車両と同型品、集電装置は下枠交差式にするなど、保守面で定評のあるものに一新を図っています。デオ730形「ひえい」は、おもに鞍馬線用の展望車両デオ900形「きらら」に引き続き、叡山本線にも新たなデザインの特別料金不要な観光列車を定着させて国内外からの来訪者に対応し、同時に沿線の通勤通学輸送に潤いをもたらすよう貢献していることから、ローレル賞に選定しました。
出典:2019年 ブルーリボン・ローレル賞選定車両
https://www.jrc.gr.jp/award/bl/bl2019
鉄道友の会は、毎年選定している「ローレル賞(第59回)」「ブルーリボン賞(第62回)」を発表しました。
2019年の今年は、ローレル賞に叡山電鉄の「ひえい」と相模鉄道の20000系が、ブルーリボン賞にはお馴染み小田急の70000形が選定されました!おめでとうございます!
叡山電鉄としては、1998年に新造されたデオ900形「きらら」に続いて2例目になります。
デオ730形の受賞理由について
「ひえい」は、デオ700形からの改造車両です。ブルーリボン賞・ローレル賞は新造・改造共に選定理由になるために今回の受賞にも繋がりました。
ローレル賞・ブルーリボン賞とは
鉄道友の会という鉄道愛好者団体とその会員が、その年における最も優秀な車両を選定する制度です。当該年度の前年(今年なら2018年1月1日~12月31日まで)に新造・改造車両から選び出されます。
ブルーリボン賞は大方近鉄・小田急などの「華がある特急」が選ばれがちですが、ローレル賞については技術的に優れていたりデザインや先進性が優れた車両が選び出される傾向があります。
2019年のブルーリボン賞・ローレル賞授賞候補としては、
・札幌市交通局1100形(シリウス)
・JR東日本209系(B.B.BASE)
・小田急70000形(ロマンスカーGSE)
・東急2020系
・東急6020系
・東京都交通局5500形
・相模鉄道 20000系
・叡山電鉄デオ730形(ひえい)
・大阪モノレール 3000系
・神戸新交通 3000形
・とさでん交通 3000形
があり、叡山電鉄730形ひえいは唯一の関西勢として健闘しました。また、この候補だと小田急GSEのブルーリボン賞授賞は確実であったともいえますね。
何はともあれ、おめでとうございます!!