PiTaPaを発行しているスルッとKANSAIは、今月末をもって「保証金預託制PiTaPa」の新規申込受付を終了すると発表しました。
尚、申込みを終了するだけで現在通用している「保証金預託制PiTaPa」については引き続き利用ができるとのことです。
そもそも知名度がかなり低く、券面も通常のPiTaPaと何ら変わらないことから知る人ぞ知るどマイナーなカードでした。
保証金預託制PiTaPaって?
保証金預託制PiTaPaとは、なんらかの理由でPiTaPaが発行できない人向けに事前にお金を積むことで発行が可能となるPiTaPaカードです。
事前に積むお金(保証金)は1ヶ月の利用予定額の4倍必要になります。つまり1万円で設定すると事前に4万円の入金が必要です。
更にこの保証金は利用額には充てれず、後に変更も出来ず、カードを解約するまで返金されません。
PiTaPaはクレジットカードと同じく信用制度を用いており、自己破産をした人や収入がない人には審査落ちして発行することが出来ませんでした。
そもそも自動車を持てない程に経済的不自由をされている方が多いので、公共交通機関で移動することになるのですが、そういった方がPiTaPaを利用できない状態をなんとか解決するために編み出されたカードです。
確実に持てないのは自己破産者・無収入者ですが、それ以外にも「消費者金融でお金を借りた」「クレカの支払いが日常的に遅れている」人も審査落ちするという報告があります。
一方で、クレジットカードよりも審査が緩いと言う人もいます。いずれにしても審査はブラックボックスですし、そもそも公共交通機関の利用においてブラックボックス化する事項があること自体がおかしな話でもあります。
ICOCAで代替
ただ、PiTaPa発行時の事情と違って
・プリペイド形のICOCAがかなり普及し
・最後まで頑なに対応しなかった阪急系列が、2018年からようやくICOCAに対応した
ことで「非接触型ICカードを利用する」ことが不自由なくできるようになった事が、今回の発行終了に至ったものと推測されます。
PiTaPaは何故信用システムに?
後払いというのは、先に書いた通り審査が必要になるので公共交通機関にはあまりふさわしくない仕組みなのですが、そもそも何故PiTaPaはこのシステムを採用したのでしょうか。
この辺の事情はOsaka-Subway.comでも書いたのですが、次のような理由であったといいます。
磁気式を導入してから3年しか経っていませんでしたから、ここで(同様のサービスとして)ICカードをやろうと言い出したら、各社局が『もう、やってられへんわ』という事になる。特に私鉄・バス会社は厳しい経営状況の中で、(磁気式のために)設備をすべて入れ替えて、多額の設備投資をしています。当時はバブル崩壊後の一番厳しい時期で、そうでなくても年2~3%の利用客減少が起きていた。その中で無理して磁気式に投資していただいる中で、ICカードシステムの検討を始めたのです」(中略)
ポストペイ方式を採用することで“投資コストは改札機の改修だけ”で済み、“様々な割引サービスの対応もしやすくなる”わけです」(中略)
「ポストペイ方式での導入で試算したところ、(非接触IC対応が)改札機だけならば、投資コストは1/5ですむことがわかりました。
出典:PiTaPaはなぜ“ポストペイ方式”なのか――スルッとKANSAIに聞く(前編)
http://bizmakoto.jp/bizmobile/articles/0604/10/news015_2.html
関西私鉄系はちょうど数年前に改札機を新しくしたばかりであり、その後で突然ICカードのムーブメントがやってきた。ここでまた改札機を全部変えると投資コストが莫大になってしまう。
だから必要最低限の改修で済む後払い式を選んだというわけです。
関連リンク
参考文献
スルッとKANSAI『新規申込受付終了のお知らせ』