【コラム】破産した天牛堺書店の”その後”を見てきました

【コラム】破産した天牛堺書店の”その後”を見てきました

先日お伝えした、18億円もの負債を抱えて倒産した天牛堺書店

その後を報じた東京商工リサーチによると、決算における経営陣の誠意のない対応が銀行側の不信を買い、最終的に売上高が入る預金口座を差し押さえられて、その2週間後に資金繰りがつかず倒産、一斉閉店した…ということのようです。

その後、2020年12月25日に法人格が消滅しています。

 

なぜ閉店に至ったのか

(株)天牛堺書店(TSR企業コード: 630132046、堺市南区、藤吉信彦社長)が1月28日、大阪地裁堺支部に破産を申請した。負債総額は17億4,144万円だった(中略)

ピーク時は25店の出店に加え、学習塾も2教室経営し、1999年5月期の売上高は約29億900万円を計上した(中略)

次第に不採算店舗が増加。そこにのしかかるように1998年2月に購入した本社不動産への投資も重荷になっていった。
不採算店は順次閉鎖したが、収支とキャッシュフローは好転せず、2016年中旬になると最大の仕入先である書籍取次大手(株)トーハン(TSR企業コード:291105009、新宿区)への支払いに支障をきたすようになった。
トーハンには所有権留保が付いた在庫商品の返品で対応した。また、商品の継続供給を目的に2018年5月期に入るとトーハンから役員を受け入れ、新体制で改革を目指した。
不採算店の閉鎖を進めた結果、12店舗まで縮小し、経費の大幅削減に一定の成果をみせた。だが、採算を確保できていた店舗は「天下茶屋店」と「粉浜店」のみ。規模縮小だけでは深刻な経営改善には結びつかなかった(中略)

2017年8月、金融機関に借入金の返済条件の変更(リスケ)の交渉に入り、同年9月の返済分から元金返済を停止した。
2018年8月には再生支援協議会に私的整理を相談していた。支援には全取引金融機関の同意を条件とされたため、バンクミーティングを開催するなど、同意の取り付けに奔走した。
こうして一部の金融機関からはプロパーと保証協会分をあわせた融資については、2019年4月1日まで元本返済の猶予に応じる回答を得ることができた。だが、他の金融機関からは提示した私的整理案に賛同を得ることができなかった。
金融機関が私的整理案に難色を示したのは、決算処理への根強い不信が背景にあった。

1. 2014年5月期から2017年5月期にかけて受けた役員借入金の債務免除(合計約2億6,200万円)を売上に計上していた
2. 2015年5月期に店舗の耐震工事に係る売上補償(約1,200万円)を売上に計上していた。また、同期は店舗の耐震工事負担金(約2,000万円)を地代家賃と相殺処理していた
3. 2016年5月期に退職年金収益(約1,100万円)を売上に計上していた。また、同期の書籍等の仕入を過少申告(約8,000万円)していた
4. 当社代表者が別途経営する企業へ貸付などの金融支援を行っていた

2018年5月期は、売上高が16億8,062万円、営業損失が2億6,511万円、経常損失が2億8,808万円、純損失が5億1,741万円と厳しい決算になっていた。同期末で2億4,256万円の債務超過に転落したが、その後の財務デューディリジェンスで債務超過額は6億1,637万円に達していたことがわかった。
業績改善も見込めず、金融機関から新規の資金調達もできないまま、1月17日に一部の金融機関が預金差押を実行。ついに事業継続を断念し、破産を申請した

出典:「【破綻の構図】(株)天牛堺書店~なぜ私的整理は頓挫したのか~」株式会社東京商工リサーチ
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20190219_02.html

 

難しい言葉が並んでいますが、簡単な言葉にこれを言い換えると

・1999年の段階では29億900円の売上があり、この時期に本社用地を購入していた
・しかしこの用地負担が後々に重荷(ローンや固定資産税の支払い?)に
・売上が下がり始める
・利益の出ない店舗を閉店して25店→最終的に12店に
・2016年に本の仕入れる先へのお金の支払が出来なくなっていく
・2017年に銀行から借りているお金の返済を待ってもらう交渉に入る
・しかし一部の銀行がこれを拒否。拒否した理由には「書店側への不信」があった

 

(不信の理由)
①:役員の借入金返済を免除したのに、それを会社の売上として数えていた
②:店舗の耐震工事をするにあたって、建物側から貰ったお金を売上として数えていた
③:退職年金収益を売上として数え、また本の仕入れ代を少なめに書いていた
④:書店の代表が(このような状態なのに)別に経営している会社(「民芸 藤よし」を運営する株式会社藤吉商店?)へお金を貸し付けていた

・銀行が売上の入る銀行口座を1月17日に差し押さえ。その2週間後にどうにもならなくなり閉店。

の流れだそうです。

 

本社の今

天牛堺書店の今(3月時点)を見てきました。場所は大阪府堺市南区泉田中17-2になり、駅でいうと泉北高速鉄道の栂・美木多駅から20分程度の場所になります。

本社前のフェンスには「告 示」と書かれた破産したことを示す書面が提示されていました

本社社屋のシャッターや

車のガレージにまで、同様の告示が掲示されています。

おそらく裁判所からの告示による資産保全命令が出されているのか、構内にある営業用のトラックや多数の車がそのままの状態で留め置かれていました。

 

「天牛堺書店」の刻印入りのトラックがそのままの状態になっているのが妙に生々しく破産を物語っていました

 

北野田店

ついでに北野田店も見てきました。北野田店は、南海北野田駅に直結するビルの2階に入っていました。

ここも、かつての天下茶屋店と同様に「ありがとう」メッセージが書かれた付箋が多数貼られており、地元に愛された書店であったことがわかります

記事によると粉浜・天下茶屋は黒字運営だったそうなので、どこかの書店が引き取って再運営してくれれば…と願うばかりです

 

関連リンク

【速報】天牛堺書店、負債18億円を抱えて破産宣告。突如全店舗を閉鎖

破産した天下茶屋の天牛堺書店、別れを惜しむメッセージが70通以上集まる

 

【天牛堺書店】大阪地裁堺支部へ破産申請。南海電鉄沿線を中心に店舗を展開。新刊と古本を両方扱う希有な書店でした。」- 阪和線の沿線から

駅ナカで古本探し 天牛堺書店、悲願の難波「ekimo(エキモ)」に出店」- 産経WEST

かつて大阪市交通局のなんばekimo内に店舗を展開していました。

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