「大阪駅前ビル」は何故ボロのままなのか?

「大阪駅前ビル」は何故ボロのままなのか?

大阪駅前に立地する、4つの「大阪駅前ビル

ここは紛れもなく大阪一等地に位置するのですが、多くはボロのまま……失礼、レトロなままです。最も古い大阪駅前第1ビルは1970年の竣工で、今年で50年になります。

この地は一時期、元市長の橋下さんが「緑地にする」と言ったことでも注目を集めましたね。

 

この一等地に立地しているにも関わらず、何故建て替えが行われずにレトロなままなのか…を考えたことってありませんか?

何か闇の勢力が動いているのかな」と変な邪知をしてしまったんですが「区分所有者がたくさんいるからでは?」というご意見を、いつもお世話になっているぷにぷにさんから伺いました。

 

 

ということで、登記簿を取って調べてみました。

 

 

土地の区分所有者は833

大阪駅前ビルの地番は次の通り。(この地番は住所とは異なるものです。)

第1ビル…大阪市北区梅田1丁目20
第2ビル…大阪市北区梅田1丁目10
第3ビル…大阪市北区梅田1丁目3
第4ビル…大阪市北区梅田1丁目5

 

登記簿をとってみたところ、今まででありえないほど非常に時間がかかりました。

何この遅さは…?」と妙な不安に駆られながらPDFファイルを開きます。

 

第1ビルの登記簿がこれなんですが、8,833…!?!?

この他、第2ビルは765、第4ビルは647もの所有者がおられました。

 

第3ビルに至っては「多すぎてオンラインでは取得できない」とのこと。闇深……

 

 

要するに、大阪駅前ビルってオフィスビルとしては珍しい分譲(=買っている)の区分所有方式なんですね。ビルのテナントは借りているわけではなく、所有者として入居しているようです。

例えば、鉄道関係企業でもレールボンドの製造を行っている「柳生電気工業株式会社」がここに名を連ねており、本社もここに位置しているようでした。

 

 

ボロのままなのは「区分所有法」が理由

「建て替えには4/5の所有者の賛成がいる」という区分所有法という法律があるのだそうで、今の第1ビルだと666人・法人の所有者が賛成に回らないと建て替えが出来ないようです。

こういう区分所有で身動きが取りづらい例としては東京の六本木ヒルズなども同じケースだったそうで、都心部が抱える特有の問題なんですねぇ。

 

ちなみに、こういう資料もありました。

「駅前ビルはすべての区画を分譲、または等価交換で引き渡した。もう市に主導する権限はない」

出典:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55513430S0A210C2AA1P00/

建て替えに大阪市は関与できず、あくまで土地所有者の自発的な行動がないと動かないようです。

 

この地の歴史

元々このあたりは「戦後の闇市が梅田の土地を不法占拠した」のが始まりだそうです。

市の第1期区画整理が完了して、私が戦争に行った時には、この区域は全部広っぱでした。今の駅前のマルビルの所も広場だったんですよ。帰ってきたら、ドブロクとかやみ物資のやみ市でした。俗にいう梅田村ですね。私の所有地である現在マルビルの建っているところもそういう状態やったんで、地代を取りに行くと、”日本の国はもう戦争で負けたから 日本の土地は全然ない、われわれ占有しているものの土地や”という。だから”地代を払う必要はない” 言うて払わない。なかにはピストル持って応対するものもおる。

(筆者注:梅田の大地主である吉本晴彦氏の回想)

出典:「北区史」追録座談会、1980年

 

 

その後、土地の権利が闇市の主催者に移った…のかは定かではありませんが、外国人が多かったという文献があります。

大阪市は、土地地権者と土地を借りていたお店(借家人)に同じ権利を付与することで、この地の(かなり強引な)再開発に乗り出します。

もっとも基本的な問題は借地権者と借家人の権利割合に関することであった。家主は、自己の財産(権)が借家人に奪われることに対する不満、また借受人は、家主の多くが生活習慣が違った外国人であったことも関係して、これまでの営業権の保証が危いという死活問題に直面したことである。

出典:大阪市都市整備局「大阪駅前市街地改造事業誌」昭和60年3月、91p

 

地元説明会がこうして回を重ねて進められ、事業の内容が次第に住民に浸透するにしたがって、権利者の事業に対する考え方、意見がはっきりしてきた。すなわち、土地所有者はおおむね賛成で、借地・借家人が事業に反対

出典:大阪市都市整備局「大阪駅前市街地改造事業誌」昭和60年3月、89p

 

 

 

 

 

 

関連リンク

【寂れた穴場の梅田夜景スポット】大阪駅前第3ビル展望台

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