京都市交通局は現在、厳しい財政事情により数々の再建案が模索されています。
コロナ禍に見舞われた2020年度決算においては、地下鉄が54億円の赤字、バスも48億円の赤字となっています。
そんな中、本日発表された第4回「京都市交通局市バス・地下鉄事業経営ビジョン検討委員会」において、地下鉄・バスは10%程度の値上げが必要という答申が取りまとめられました。
これが適用された場合、京都市営地下鉄の初乗り運賃は240円~250円になります。(地元の京都新聞社や日本経済新聞は30円値上げと報じています)
運賃改定後(予想)
10%と値上げ…とはどの程度か、現行運賃と比較するとこうなります。
現行 | 改定後 | |
---|---|---|
1区(初乗り) | 220円 | 240-50円 |
2区 | 260円 | 290円 |
3区 | 290円 | 320円 |
4区 | 330円 | 360-370円 |
5区 | 360円 | 400円 |
現在でも「日本一運賃が高い地下鉄」として一部で有名ですが、更に加速することになりそうですね…。
運賃の変更には国土交通省の認可が必要になるので、早くとも2024年度以降になるようです。
このままでは地下鉄が止まる
仮に現在の運賃のままで経営を続けた場合、17年先の令和20年(2038年)度においても39億円の赤字となります。
企業債の元金償還が非常に多いことで、令和34年度まで資金不足に悩まされ続けます。
その額は、当初想定していた726億円を遥かに上回り、令和34年度には1,406億円にまで増大。もはや地下鉄の運転資金自体が枯渇、調達も困難になります。
資料では、「地下鉄の運行が止まる」との衝撃的な文面が記載されています。
・ 経常損益は,利用者数の回復により令和3年度の大幅な赤字から一旦赤字幅が縮小するものの,その後,国の制度に基づく一般会計補助金※が減少することにより悪化し,令和 20 年度においても 39 億円の赤字となり,その後も長期にわたり赤字が続く(中略)
・ 資金不足比率は,令和6年度には 20%未満となり経営健全化団体からは脱却※するものの,累積資金不足は,経常損益が赤字のまま推移することや企業債等の元金償還が多額にのぼることから,毎年度資金不足が生じ,令和 34 年度まで増加し続ける。最大値は経営ビジョン(2019-2028)で見込んでいた726 億円を遥かに超え,令和 34 年度には 1,406 億円にまで増大し,不足する運転資金の調達が困難な状況となる。(中略)
・ このまま事業運営を続け資金調達が滞れば,地下鉄事業の経営は破綻し,地下鉄の運行が止まり,市民生活における移動手段の確保ができなくなる。
出典:京都市『京都市交通局市バス・地下鉄事業経営ビジョン検討委員会 答申(案)』
もちろんこの事態を予測できなかったわけではなく、また人件費削減や駅ナカ事業の展開、東西線・烏丸線の終電乗継利便性向上など、公営企業として出来る限りの絶えず増収・経費削減の試みを実施してきました。
更にインバウンド観光客の増大は、京都市交通局にとってもこの上ない増収効果があったようです。
しかし、コロナ禍のせいでそれらの努力、および増収策が全てストップ。資料からは非常に厳しい文言が飛び出しています。
コロナ感染拡大の影響により,令和2年度決算では,市バス・地下鉄の1日当たりのお客様数は▲24万人以上減少,運賃収入は▲150億円もの減収となり,これまでの経営健全化,増収・増客の成果がわずか1年で消し飛びました。
出典:京都市交通局『令和3年度 京都市交通局経営レポート』
読んでいて、極めてつらい文章です。
このペースでいくと、ほぼ間違いなく運賃の値上げが行われる京都市営地下鉄。
値上げで本当にこの状況が改善すれば良いのですが、あまりズルズルと足を引っ張り続けると民営化など政治的な動きが強くなりそうな気もします。果たしてどうなるでしょうか。
関連リンク
「これだけ赤字、かつ運賃を値上げしようというのに何故新車を入れるのか?」という疑問については、以下のリンクから解説していますので、こちらをどうぞ。
参考文献
京都市情報館『第4回「京都市交通局市バス・地下鉄事業経営ビジョン検討委員会」について』
京都市交通局『令和3年度 京都市交通局経営レポート』
京都新聞「京都市営地下鉄30円、市バス20円値上げ方針容認、検討委が答申案」
日本経済新聞『京都市地下鉄・バス、有識者委「10%値上げ妥当」』