【メモ】女性専用車両の法的判例「鉄道営業法34条2号」に関する備忘録

【メモ】女性専用車両の法的判例「鉄道営業法34条2号」に関する備忘録

ざっとメモ程度に。事の顛末はまた詳しくOsaka-Subway.comの方にて書いていこうと思います。

今回は、自分向けへの参考資料としてざっくり箇条書きに記載しておきます。

 

裁判所へ行ってみた

女性専用車両関係の訴訟には

①大阪市営地下鉄御堂筋線の導入時の訴訟(地裁の原審/高裁の控訴審)
(大阪地方裁判所平成15年(ワ)第8046号)
平成15年9月29日判決 / 平成15年(ネ)3203 控訴棄却 /平成16年(オ)685 上告棄却

②大阪市営地下鉄御堂筋線の終日実施時の訴訟(地裁の原審/高裁の控訴審)
(大阪地方裁判所平成16年(ワ)第12304号)
 平成17年(ネ)220 控訴棄却 /

③JR西日本に対する訴訟(地裁の原審/高裁の控訴審)

④つくばエクスプレスに対する訴訟
東京地方裁判所平成22年(ワ)41244号

の4訴訟、7つの審議があるのだそうです。

こちらの方が情報公開請求で入手したらしき、②の原審判決文をアップされていました。
https://blogs.yahoo.co.jp/sabetsu5555/32343565.html

一応これが本物かどうかを大阪地方裁判所まで確認しに行ったのですが、まさしくこの通りのものでした。

 

女性専用車両の法的根拠?鉄道営業法34条2号

女性専用車両に男性は乗れない、さらにそれには法的根拠があるというツイートがあります。

女性専用車両に男は乗れません。鉄道営業法34条2号「婦人ノ為二設ケタル車室」で男性の立ち入りは禁止される。大阪高裁 平成17年5月19日判決 大阪市営地下鉄御堂筋線の終日実施時の訴訟控訴審の判例。#法的根拠 #女性専用車両

出典:https://twitter.com/kewzy/status/868258748258598912

 

法的根拠とされる、鉄道営業法34条の全文は次の通り。

第三十四条 制止ヲ肯セスシテ左ノ所為ヲ為シタル者ハ十円以下ノ科料ニ処ス
一 停車場其ノ他鉄道地内吸煙禁止ノ場所及吸煙禁止ノ車内ニ於テ吸煙シタルトキ
二 婦人ノ為ニ設ケタル待合室及車室等ニ男子妄ニ立入リタルトキ
出典:http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=133AC0000000065

 

確かに、婦人の為に設けた車室に男性が立ち入った時は、10円以下の罰金…と記載があります。

尚、制定されたのが明治の話なので、10円の部分は現在の価値に換算されます。

これが控訴審の訴状に書いてあるそうなのですが…原審ばかり見てしまっていて、あいにく見忘れておりました。

但し、御堂筋線は鉄道営業法ではなく軌道法が採用されるはず…ですが…

 

【追記】見てきました

気になっていたので、後日もう一度見てきました。

 

結論から言うと、「婦人ノ為ニ設ケタル待合室及車室等ニ男子妄ニ立入リタルトキ」という文面があることから、女性専用車両は34条2号に該当するとの見解でした。

しかしながら、この法の立法趣旨や適用例は明らかでなく、科料…すなわち罰金を徴収する妥当性にはやや疑問もある。と結構どっちつかずな表現でした。

こちらの出典元については、②大阪市営地下鉄御堂筋線の終日実施時の訴訟(地裁の原審/高裁の控訴審)
(大阪地方裁判所平成16年(ワ)第12304号)です。

 

また鉄道営業法34条2号におけるこの科料(罰金)は、権限ある鉄道係員から制止を受けて初めて成り立つとしています。

”権限ある”鉄道係員……、この場合は大阪市交通局の駅長さんになるでしょうか。

今回の訴状では大阪市交通局は女性専用車両について、強制ではなく任意での協力を求めているに過ぎませんから、権限ある鉄道係員が強制していないので、34条2号には問われないことになります。

 

要点をまとめると

「女性専用車両は34条2号に該当する説」は正しい
・但し、権限ある鉄道係員の制止がないのであれば立ち入りは禁止されない。
・権限ある鉄道係員である大阪市交通局は、立ち入りを強制的に制止していない。
34条2号に該当しても、それが男性乗車禁止とはならない

ということでした。

 

また、鉄道営業法ではなく軌道法であるはずの大阪市交通局ですが、今回の訴状ではその点について一切触れられておらず、鉄道営業法前提での判決文となっていました。

 

 

日本国憲法はそれを否定

鉄道営業法よりも上位である日本国憲法の14条1項には

第十四条
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

法のもとで平等であり、性別によって差別されないとあります。

 

さらに、憲法98条には

第九十八条
この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

とあります。

鉄道営業法ではそう定められていたとしても、日本国法治の大前提であり最高法規である日本国憲法の解釈を優先するので、鉄道営業法34条2項は日本国憲法第14条、および第98条と矛盾するものとなります。

 

裁判所の判断

これらを踏まえた結果、裁判所としては女性専用車両について、次のような判断を下しています。

・女性専用車両については運送契約上の義務を追わせることはなく、任意の協力で行っている
・それは優先座席と同様のものと考える
・つまり、男性が女性専用車両に乗っても運送契約違反でなく、一般車両に移動する義務もない。罰則もない
・ただ、(名称を)専用車両でなく優先車両とすると、もしもの可能性を排除できない
・女性専用車両の導入には女性の8割弱、男性の7割弱が賛成している
・女性専用車両に男性が間違って乗車することは、女性の5割がやむを得ないと感じている

以上の事実から女性専用車両の導入は、あくまで罰則のない任意の協力で実施され、アンケートでも国民の多くの支持を受けている妥当性・合理性が認められることから、憲法14条の違反とはいえない。

 

「女性専用車両」は、性別によって差別されているわけではなく、あくまで任意の形をとっているので憲法14条に違反していない、というスタンスでした。

被告となった大阪市交通局や他の鉄道会社もこれらを関知しているからなのか、現在のところ「任意でのお願い」という形を取り、強制はしていません。

 

ちなみに、私は特に女性専用車両に対して賛成・反対などのポリシーはなく、今回はあくまで大阪市営地下鉄の事柄だったことで取り上げました。

 

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