写真:宗方 湊
新幹線が通るという近代的な現実と、スイッチバック遺構というギャップ。そして奥羽本線開通直後から販売が続く、「峠の力餅」という存在、それが『峠駅』です。
山形新幹線の通過駅には秘境と言える駅があり、場所は福島駅と米沢駅の間に位置します。
異世界にあるような不思議な雰囲気
写真:宗方 湊
奥羽本線にある峠駅は、米沢駅が管理する無人駅。
駅の利用客は1日に10人程度で、周囲には娯楽施設は一切なく、登山客と湯治客が利用するだけです。その湯治場も冬季は積雪のために閉鎖してしまい、なおさら人が立ち寄りません。
撮影:鉄道プレス運営
この峠駅は、標高626mの位置にあり急勾配と豪雪の難所です。新幹線が開通する1990年以前は、普通列車がスイッチバックで登っていました。
駅構内はポイントなどの施設を雪から守るための「スノーシェルター」があり、全長200mにも及ぶ巨大なもの。それが駅全体をすっぽりと覆い、独特の雰囲気を作り上げているのです。
駅はトンネル内(正しくスノーシェルター)にプラットホームがある、ちょっとした異世界に迷い込んだ気分が味わえます。
現地にたどり着くと峠駅への矢印はあるものの、ホームや線路はすぐに見えません。初めて訪れた人は、駅の存在に気付かないかもしれません。
普通列車は少ないものの…
写真:宗方 湊
また、駅構内には思いも付かないような注意書きが貼り出されています。
『駅構内でのキャンプ、バーベキュー禁止』
そんなことをしたくなる場所ということでしょうか。
駅構内を写真に収めたい方も線路内の撮影は危険です。電車は1日に6本程度しか止まりませんが、新幹線の通過駅であることをくれぐれもお忘れなく。
新幹線全線で、トンネルを含めて携帯電話が圏内になってきています。秘境駅で有名な峠駅周辺も圏内になるのかもしれませんが、不便さもまた魅力の一つ。
峠の力餅を味わいながら、往時に思いを馳せたいものです。
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Writer・Photo:宗方 湊