神戸駅は、明治7年(1874年)の開業から今年で150周年を迎えました。
大阪~神戸の鉄道開業時から場所を変えず、東海道本線の終点・および山陽本線の起点として、現代でも欠かすことの出来ない駅です。
150年前の神戸駅の写真…は残念ながらありませんが、その代わりに当時を描いた浮世絵(錦絵)が存在しており、150年記念として神戸駅にそれが展示されています。
文明開化の音
それがこちら。今年の9月28日に取り付けられたばかりのまっさらなものです。
「神戸名所之内 相生橋蒸気車」と題されたこの浮世絵は、非常に大きく引き伸ばされ、ダイナミックに当時の様相を伝えています。
大きさがわかるように、下にある消火栓(幅75cm)を写しましたが、おおよそ7つ分の幅(=5.25m)があります。
この浮世絵の説明書きがそっと添えられてます。
「神戸名所之内 相生橋蒸気車」の原画。描いたのは、大阪・天下茶屋の浮世絵師である「(二代目)長谷川 貞信」です。
相生橋は、鉄道をオーバーパスする為に作られた日本初の跨線橋で、線路を敷いたことによってに分断された元町通と多聞通とを通れるように設置されたものです。
相生橋は機関車を見下ろせるということで神戸の名所となり、多くの人が訪れたそうです。この浮世絵からも、人がたくさん集まっている様子が伺えます。
また西洋文化が流入した明治維新頃らしく、和装・洋装と様々な格好をした人が描写されています。
このときに牽引していた機関車はイギリス製の「120形」蒸気機関車で、非常に小さなSLでした。
浮世絵で描かれている姿とよく似ていますが、色や車輪の数などに違いが見られます。車輪は見えなかったのかもしれませんが、色はこういうカラーだったんでしょうか。
相生橋があった位置はここ。神戸駅を出た先のすぐの場所にあります。
開業時の鉄道は神戸と大阪を1日8往復し、停車駅は大阪・西ノ京(西宮)・三ノ宮・神戸の4駅でした。(詳細なダイヤはこちらから)
これ以外にも
今回神戸駅に掲示された「神戸名所之内 相生橋蒸気車」以外にも、何枚か同じ作者によって神戸周辺の鉄道の風景が描かれています。
こちらは「神戸名所の内 生田川鉄道蒸気」
「生田川」とあることから、おそらくは三ノ宮東部あたりを描いたものと見られます。
機関車は牽引ではなく推進運転をしており、カラフルな客車が描かれています。
「神戸名物鉄道蒸気車之図」
右側の建物に「裁判所」と記載があることから、おそらく神戸市内の様子を描いたものと見られます。
こちらも(乗客が乗っているのに)推進運転で運行されていますね。
おわりに
浮世絵って意外に正確な描写で、高輪築堤の発掘の際にも、浮世絵がそのまままるまる出てきたような構造に大きく驚かされました。
この神戸駅を描いた浮世絵も、当時の姿が正確に描かれていると考えて良いのかもしれません。
関連リンク
参考文献
所蔵:神戸市立中央図書館貴重資料デジタルアーカイブ