近鉄ではそのややこしすぎる形式名の多さから、「電算記号」と呼ばれるアルファベット1~3文字で形式を呼びます。
例えば大阪メトロ中央線へ乗り入れしてくるオレンジ色の電車は「HL」と呼ばれる他、ひのとりは「HV」、伊勢志摩ライナーは「iL」、アーバンライナーは「UL」と言います。
しかし、こういった近鉄の電算記号はちゃんとした文献が見当たらず、ちょっと頭を抱えています…。
「ある」ことは証明されている
ただ、近鉄内部で使用されている用語ではあるようです。
というのも、近鉄から発信されているプレスリリースでその用語が頻繁に用いられています。
以前ご紹介したY08という電車。こちらは引退を記念したツアー列車のチラシにて用いられています。
ご覧のように、近畿日本鉄道株式会社名義で「Y08Y51」というワードが用いられています。
これ以外にも「XT01・XT02」、「NS34・39・49・51・543」(12200系)などの発表もあることから、
・近鉄の車両にはアルファベット1-3文字で付けられた記号がある
・概ねファンが解説しているものと一致している
というのは間違いなさそうです。
由来がわからぬ
ただ、気になるのは付けられたものの意味。
例えば冒頭で書いた「iL」なんかは「Ise-shima Liner」の略字なのかな…となんとなく察するところですが、
7000系の「HL」はどういう意味なのか、上に書いた「Y」や「XT」は???…などなど、このあたりが不明です。
Wikipediaでは80000系について『「Hinotori」と「Vista car」に由来するHV』と書かれていますが、これも出典がありません。
本当にそこから来ているのか、それとも何か別の由来なのか…というものを探す手立てを探しています…。
【典拠を探しているもの】
・電車ごとの電算記号
・また、その記号の由来
・そもそも「電算記号」という呼称は正しいのか
追記
この記事を公開したところ、リプライやDMなどで非常に沢山のご意見を頂きました。ありがとうございます!
その中で、くるはとさんから頂いた意見に「編成記号みたいな呼び方をしているのでは?」というヒントがありました。
このワードで調べてみたところ、見事に近鉄関係の文献から多少ではありますが、特定することが出来ました。
最も詳細な掲載があったのは「近畿日本鉄道技術研究所技報 24」で、車輪のフラットを検出する装置を開発する…という文献の中に掲載されています。
編成記号C25…車両番号6025
編成記号C31…車両番号6032
編成記号U01…車両番号6202
編成記号U03…車両番号6203
これらは「何故この記号なのか」まで記されたものではありませんが、近鉄からの文献として明確にCが6000系、Uが6020系という事が明示された文献となります。
また、同名文献の31号にも以下の記載があります。
AS22…22122
UL01…21101
X15…6139-6058-6057
VC56…1256
VC23…1223
AL01…22101
また、ぼーんさんから「鉄道ファン」の2000年9月号にもその詳細が記載されているとの情報を頂きました。
実際に参照してみたのですが、以下のフォーマットで2000年までに竣工した車両の全編成が記載されていました。
MT21 6721 6671 6771 6621…
くるはとさん、ぼーんさん、本当にありがとうございました。
呼称や由来は不明なまま
編成に記号が割り振られているのは上記文献から明らかになりましたが、一方でこれらの記号が本当に「電算記号」というのか、それとも違う呼び方をされているのかは未だに不明なままでした。
「電算記号」と呼ばれる根拠は現在見つかっていない一方で、「編成記号」と呼ばれていることは下記で明らかになっています。
・近畿日本鉄道技術研究所技報 24(1993年3月)
・近畿日本鉄道技術研究所技報 31(2000年6月)
・R&M : Rolling stock & machinery 8(5)(596)(2000年5月)
・JTBパブリッシング「近鉄電車」、三好好三(近鉄が協力)
正式には電算記号ではなく「編成記号」というのでしょうか…?
また、記号の由来についても未だ一切の文献がなく、現在も調査中です。
引き続き、こちらも調べてみたいと思います。
関連リンク
参考文献
調査した文献
- 運転協会誌
- JREA 日本鉄道技術協会
- 国立国会図書館デジタルコレクション
- 近鉄技術研究所「近畿日本鉄道技術研究所技報 24」(1993年3月)
- 交友社「鉄道ファン」2000年9月号
- 近畿日本鉄道 100年のあゆみ
- 電気車研究会「鉄道ピクトリアル」各号(1992年12月、1988年12月)