南海特急ラピート。「南海はしらんけど、ラピートは知ってる」と言われるほどに、南海電鉄の顔ともいえる圧倒的な存在です。
造形もさることながら、鮮やかな雲母入りの青色が特徴のラピートですが、この色は車の「スバル・インプレッサ」の影響を受けた…という都市伝説があります。
また、別説には「インプレッサの色を見たおえらいさんが気に入ったから採用された」…というのも。
果たして本当でしょうか、詳しく調べてみました。
何色にする?
結論からいうと、ラピートはインプレッサの色が参考にされています。
ただ、上記の言説には細かいところで少し誤りも見られます。順を追って説明します。
ラピートの開発が始まったのは、関西空港の開業を見据えた1992年(平成4年)1月のこと。
デザイン設計を任されてデザイナーの若林広幸氏は、まず色候補として以下の3つを提示しました。
・ブルー
・グリーン
・タスマニアブラウン
この3色を候補としてあげたところ、南海内の会議において全会一致でブルーとなります。
青って200色あんねん
続いて、そのブルーはどういった青色にするのか。ここで、先に挙げたインプレッサが登場します。
若林氏が挙げた色サンプルの例として、「スバルのインプレッサが良い」と挙げられたのです。
これはすなわち「重量感のある濃い青色」のことを指していて、「雲母(マイカ)入りの効果を発揮させるにはこの色を…」という意味合いで指定したのだそうです。
その後、千代田工場に留置されていた、大井川鉄道へ輸送予定だった21000系(21002F)車両をサンプルに、塗装試験を行いました。
実車に塗ってみると、濃い色では薄暮・夜間時に昼間とは全くイメージが異なることがわかり、結果的に提案された色よりももう少し明るい色へ調整されました。
ちなみに、当時走っていたインプレッサは、初代の「GC形」になります。
ノーマルモデルかWRC(レース)参戦モデルかは明らかになっていませんが、上記の「元々濃い色でやや薄くした…」という発言を見ると、濃い青色が採用されていたグループA時代のWRC参戦モデル(インプレッサ・555)の方ではないかと思われます。
まとめ
つまり、今回の都市伝説は以下の結論となります。
・「スバル・インプレッサ」の影響を受けた
→事実。インプレッサのブルーマイカが参考にされている・「インプレッサの色を見たおえらいさんが気に入ったから採用された」
→フェイク。インプレッサの色を提示したのはデザイナー側。おえらいさんが決めたのは「青」という点。
ということになりました。
ラピートに乗車する際は、モデルとなったインプレッサの青色も、たまには思い出してあげてください(笑)
関連リンク
鉄道都市伝説バックナンバー
参考文献
- 大坂 直樹『南海電鉄、ガンダムコラボ列車の劇的効果 「シャア」仕様のラピートはどう受け止められたのか』、東洋経済オンライン、2014年7月19日
- 大門庸郎『開拓者たち 『ラピート』誕生の回想録』、運転協会誌、2004年1月
- 大門庸郎「南海電鉄『ラピート』誕生秘話」『鉄道ファン』No.520(2004年8月号)、交友社