東山動植物園の園内に、かつて走行していた東山公園モノレールの保存車が留置されています。
このモノレールは、現在湘南や千葉で走っている「サフェージュ式」と呼ばれる懸垂型モノレールと同じ規格で、名古屋にて日本で初めて登場した偉大な存在です。
蒸し暑い8月の名古屋を汗だくになりながら、この偉大な車両を見てきました。
遠い…
この保存車の場所はかなり遠く、東山動植物園の入口からは徒歩15分ほどの距離にあります。
地図で指すとこのあたり。東山公園駅からは20分近くの距離となります。
広大な敷地ということもあり、園内には輸送用の小さいおもちゃのようなモノレール「スカイビュートレイン」が走っており、それに乗ると早く着きます。
車両は比較的小型の5両編成車両で、昭和62年(1987年)に登場しました。
扉は外側に設置される自動式で、どちらかというと遊具施設に近い乗り物です。
このモノレール、小型ということもあるのかめちゃくちゃ揺れます。アトラクションに近い感じです笑
また冷房装置もないので、乗車中はめちゃくちゃ暑かったです…
ただ、公園内を高台から望む景色は本当に素晴らしく、「スカイビュートレイン」の名に恥じない乗り物でした。
暑ささえなんとかなればなぁ…
いよいよご対面…
そんなスカイビュートレインの「植物園駅」を降り、道路を横断して徒歩5分歩くと……おお!
サフェージュ式懸垂型モノレールの始祖である東山公園のモノレール「1A形」とご対面!
現在湘南や千葉で走っている、懸垂型モノレールのご先祖様です!
1A形という名称はこの地にはありませんが、以前ご紹介した地下鉄博物館の展示内容に「1A形」という名称を見ることが出来ます。
模型もこの地下鉄博物館に置かれています。せっかくなら東山公園に置けばいいのなぁ…
閑話休題。実地の車両へ戻りましょう。
車体はアルミ製の銀色に赤色のラインカラーを巻いた、当時の先端スタイルです。
実はこのカラーは最近(2016年)二復活したもので、それまでは銀色一色となっていました。
現在はレールの一部・駅と共に保存されています。
ここは実際に植物園駅として使っていた場所なのですが、そのせいか建物自体もしっかりしている印象です。
試験的な設置ということもあって、この植物園駅と動物園駅の2箇所のみで運行されていました。
駅には、当時の銘板も掲載されています。
路線長さ 471m
車両全長 17,000m
〃 全幅 3,145m
〃 自重 23 ton
定員(地方鉄道法による) 120名(座席40 立席80)
電気方式 直流600V
最高速度 80km/h
特殊装置 自動列車停止装置
軌道及び車両の製作者 三菱重工業株式會社
電気品及び変電所の製作者 三菱電機株式會社
使用鋼材製作者 八幡製鉄株式會社
富士製鉄株式會社
日本鋼管株式會社
竣工年付月日 昭和39年1月 名古屋市交通局協力会
時速80km/hと結構なスピードで走行出来ることにびっくり。今の名古屋地下鉄東山線よりも早いじゃないですか…
ただ、実際の運用では500m程度の距離で80km/hを出せるはずもなく、最高速度60km/h、実際の運用速度は20km/h程度でゆっくりと走っていた…との談話が残っています。
正面から見てみましょう。木で隠れがちなのでもう少し近づきます。
お顔とご対面。
同じ東海エリアで1962年開業の犬山モノレール(日立が主導)より、2年後輩な東山公園モノレール(三菱が主導)。
デザインセンスも似たような雰囲気を感じます。
この東山公園モノレールは、開業後2年こそ物珍しさで多くの名古屋っ子を運んだのですが、昭和41年からブームも落ち着いて赤字に転落。
以後は一度も黒字に転換せず、昭和50年1月1日をもって廃止されました。
意思は関東で受け継がれる
先述の通り、現在では湘南と千葉でこのDNAが受け継がれ、懸垂型モノレールとして現役走行しています。
特に千葉では、非常に近未来的なフォルムの最新式「0形電車」が、千葉の街を闊歩しています。
試験設置だったのでのぞみは薄いとは思いますが、もし東山公園モノレールが成功していたら、名古屋市中を走っているのは0形電車のような最新式の懸垂型モノレールだったのかもしれませんね。
関連リンク
参考文献
日本モノレール協会「モノレール(82)」、三木忠直『モノレール45年の追憶』、1994年8月
まるはち交通センター「東山公園モノレール」