2024年現在、私鉄業界のトップに君臨する近鉄と、関西私鉄で2番手に位置する阪急が、それぞれに新しい新車を導入しています。
近鉄は8A系、阪急は2300系です。
この2つは同期の通勤電車ということになりますが、方向性がかなり逆を向いている印象です。
近鉄:革新性
20年ぶりの新形式となる近鉄の8A系は、何もかもがこれまでの近鉄とは異なっています。
まずはその前面形状。先代のシリーズ21の印象をほんのり残しつつも、
・鋭角的でイカついヘッドライト
・上下でこれまでと入れ替わったヘッドライト・種別灯/尾灯
、大型化したフルカラーLED行先表示機
・高く採られたおでこ部分
…など、そのどれもが近鉄らしからぬ出で立ちとなっています。
こちらが先代のシリーズ21。このモデルも従来とは大きく塗装を変えたことで当時は話題になったそうです。
唯一、塗装だけは原点に立ち返ったレッドとホワイトが採用されていますが、「塗装だけが近鉄を物語っている」と言うべきほど革新性を見せていますね。
阪急:保守的
一方、阪急2300系は驚くほど保守的、キープコンセプトなスタイルです。
こちらが先代の1300系ですが、殆ど違いが見られませんね。
2300系も1300系も、
・上部まで続く窓
・横長の種別灯
など、バブル期に登場した8300系から続く顔立ちは殆ど変わっていません。
詳しくない人が見るとマイナーチェンジモデルと勘違いするレベルです。
車内インテリアカラーは、これまで阪急伝統の木目化粧板と住江織物製の深緑のモケットの組み合わせです。
「ア」は革新的
一方で、最も大きく変わったのは、やはり「ア」ことプライベース車両(2350形)でしょう。 これは阪急初の有料座席車となります。
旧型1等車を思わせるような独立した小型窓は、栗色の車体も相まって気品が漂っていますね。
伝統を保持しつつ、革新的な車両として登場した好例といえるでしょう。
昭和の時代に「庄内事件」で痛い思いをしている阪急は、長らく主要3線で用いられる車両差をなるべくつけてこないようにしてきましたが、並走するJRや京阪が相次いで有料座席車を出す中、阪急もようやく重い腰を上げた格好です。
2024年に登場した両形式。
来年5月には鉄道友の会「ローレル賞・ブルーリボン賞」の投票が行われますが、果たして革新vs保守のどちらに軍配が上がるでしょうか。
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