度々話題になる「日本一短い鉄道」
これには様々な定義があり、鉄道事業者としては「和歌山県」だったり、普通鉄道では神戸高速鉄道の南北線だったりと色々あるのですが、
名実ともに全てを含んだ日本一短い鉄道が、京都の鞍馬に存在します。
それは鞍馬山鋼索鉄道(鞍馬山ケーブル)。
全長僅か0.2kmで、山頂にある「山門駅」と「多宝塔駅」を結んでいます。
そんな日本一短いケーブルカーへ、実際に乗ってきました。
厳格な雰囲気の駅
鞍馬山鋼索鉄道は、叡山電鉄の終点である鞍馬駅から歩いて10分程度のところに位置しています。
珍しい宗教法人が運営している鉄道としても著名です。それだけに、立派な門が出迎えてくれます。
中は非常に美しく、貴船神社のような灯籠がずらーっと並んだ階段と自然が見事に調和していますね。
そんな浮世離れしたような場所をいくと…ありました。俗世から急に現実っぽくなりました
多宝塔駅全景。思ったより立派な建物でびっくりです。
鉄道事業法で運営されていることもあり、ちゃんと時刻表も掲示されていました。
8:40を始発に20分ごとに運転、終電は16:20となっているようです。
一応建前としては「なるべくケーブルカーには乗らず、本殿までの急勾配である九十九折参道を歩いて登ってほしい」とのこと。
しかし今回はケーブルカーの為に来たので、真っ先に駅へと向かいます。
上りはケーブルカー利用者が圧倒的に多かったですが、下りは歩かれる人もちらほら見られました。
乗車運賃は片道200円。名目上は「鞍馬寺への寄進」で、その御礼としてケーブルカーに乗れるということになっています。
駅には寄進の為(?)の券売機も用意されていました。自動券売機で寄進するのはなんともシュールですね
待合室は結構広めに取られていたのですが、秋のシーズン時には大量の人で埋まり、1時間待ちになることもあるんだとか…。
ケーブルカーは20分おきの発車。
発車までは待合室で待機することになり、発車3分前になると作務衣を着た駅員さん(?)がドアを開けて改札を始めます。
いよいよ電車がお出迎え
そして…こちらが車両である「牛若號IV」。
2016年に登場した最新モデルで、先代に引き続き安全索道株式会社と大阪車輌工業株式会社にて製造されました。
安全索道は滋賀県守山市、大阪車輌工業は大阪市住之江区南港に本社を置く会社です。
特に大阪車輌工業は、数々の大阪メトロの車両改造も受け持っています。
車内の様子。座席は8席が用意されていて、定員は32名とのこと。
車内には観光案内のスピーカーも設置されていますが、鳴動するのはなぜか上りのみ…
銘板は「牛若號IV」と安全索道のロゴ「ansaku」が掲示されています。
安全索道と大阪車輌工業の受け持ち分担が不明ですが、おそらく巻き上げ機や線路などのハード面を安全索道が、車両を大阪車輌工業が受け持っているものと思われます。
全員が乗り込むと、コンビニの入店音のようなメロディを流して出発。
標高差100mをひょいひょい登っていきます。
一般的なケーブルカーと異なり車両はこの1台のみで、途中で列車の交換することはありません。
200m程度の短い距離なことや、沿線が森に覆われているので、外から撮影できるスポットは残念ながらなさそうでした…。
2分で山上駅となる山門駅へ到着。こちらは麓の駅よりも簡易的な雰囲気ですが、それでも寺院の建物なだけあって雰囲気があります。
山門駅の待合室。時間になるまで駅構内には入れず、こちらで待つことになります。
パイプ椅子が所狭しと並べられていました。
今回はケーブルカーの為だけに来たので、寺の様子は全スルーですぐに降りました。
列車は山上到着後3分後にすぐ発車していくので、次の列車まで17分待つことになります。
日本一短い鉄道、鞍馬山鋼索鉄道。いかがでしたでしょうか。
京都駅からも1時間程度かかる秘境の地と呼べる場所ですが、皆さんも是非一度行ってみてくださいね。
鞍馬山ケーブル車体仕様
名称:牛若號IV
サイズ:車体長 6280mm、幅1905mm、高さ3633mm
重量:4100kg(4.1t)
定員:32名(着座12名、立席19名、乗務員1名)
軌間:1200mm
車輪径:⌀457 ゴムタイヤ製
関連リンク
参考文献
- 大阪車輌工業株式会社「営業品目」(注:鞍馬山ケーブルの車両あり)
- 東洋経済オンライン「乗らずに歩いて…「鉄道事業者」鞍馬寺の願い」、森口 誠之 、2019年5月26日