「GANTZ」といえば、地下鉄の線路へ落ちた酔っ払いを救出しようとホームへ降りた主人公があわや轢かれるという時に、突如謎の球体がある部屋へと転送されるというシーンから始まる漫画作品です。
実は南海電車で、この「GANTZ事件」が起きたことをご存知でしょうか。
こういう話はすぐ都市伝説扱いになっちゃうので、その前にまとめました。
泉大津駅にて
事件が起きたのは2014年11月16日16時18分頃、南海本線の泉大津駅でのこと。
走行していた空港急行なんば行き(1000系1005F)が駅に差し掛かろうとした時、女性が奇声を発しながらホームから線路へ飛び込んだとの目撃情報がアップされました。
電車は急ブレーキをかけて停車したものの、飛び込んだらしき人は見えなかったのだそうです。
当時の画像。大阪府警の方が現場検証をされていますが、1005Fを見てみると確かに窓ガラスは割れていないし、血痕の類もありません。
駅員さんは「飛び込むのを見た」と証言し、運転士は「目の前で消えた」という…
まさに「神隠し」「幽霊」「GANTZ」とも言える出来事だと、当時ネットで大きく話題になりました。
実態は…
しかしながら、実際には(当たり前ですが)消えてはいませんでした。
1005Fは泉大津駅停止線の15m手前で停止し、女性との接触を回避したのです。その女性は自分からホームへと上がり、「飛び降りたんや」とだけ言い残して改札から出ていった…というのが真相でした。
その後、J-CASTニュースや産経新聞などが南海電鉄広報に確認して事の真相が明らかになったのですが、拡散された「GANTZのようだ」という話が先行して「実際どうだったか」の話が今一つ拡散されませんでした。
8年が経った2022年現在でもまとめアカウントなどを通じ、都市伝説としてこの話が独り歩きし始めているようです。
現地に訪れてみる
前々からこの「GANTZ事件」が気になっていたので、実際に南海泉大津駅を訪れてみました。
女が抜けて(逃げて?)いった改札。
泉大津駅の改札はここだけなので、間違いなくこのルートから抜けていったものとみられます。
それにしても、線路からホームへそう簡単に上がれるものかな…と思って反対ホームから現場を眺めていたんですが、ちょうど緊急停止した位置の近くに黄色いハシゴがあるんですね。
これなら確かにすぐ上がれそうです。
撮影されたアングルと同じ場所から。
あれから8年が経過しますが駅ホームは当時と殆ど変わっておらず、現場を見つけるのは非常に容易でした。
同様の事件は山形でも
ちなみにこの「突然人が消えた」という類の話は、同じ年に山形県でもありました。
現場は酒田市の羽越本線 南鳥海駅。11月15日の10時25分頃、線路脇に居た人が貨物列車と接触し、運転士さんは非常ブレーキをかけたのだそうです。
JR羽越本線南鳥海駅で、下り貨物列車が人と接触したようだとJR東日本から110番通報があった。酒田署が調べた結果、線路周辺に人の姿はなく、列車に人とぶつかった形跡もないため約1時間40分後に運転を再開した。
同署とJR東日本山形支店によると、運転士は同駅ホームの約25メートル先を通過した際、線路脇に人影を見つけ、緊急停車したという。現場確認のため、特急いなほと普通列車の上下計4本が最大1時間43分遅れ、450人に影響した。
出典:山形新聞「「人と接触した」貨物列車が緊急停車 酒田の南鳥海駅、羽越本線が遅れ」、2014年11月16日
しかし、現地を捜索してもそれらしき人の姿はなかったのでした。
また、過去には山手線や東北本線、名古屋市営地下鉄でも同様の事例があったという話があります。
こちらは典拠が確認できていないので、参考程度に記載しておきます。
・1996年(平成8年)10月16日17時26分、JR御徒町の山手線3番ホームにて事故。24-25位の女性と衝突したらしきものの、事故後捜索しても見つからず。
【参考】毎日新聞に掲載?・2007年12月13日19時25分、青森市奥野付近で貨物列車とおばあさんが衝突。しゃがみこんでいたとの運転士の証言があるものの、おばあさんは発見できず。
毎日新聞 2007年12月15日・2017年5月1日、名港線東海通駅にて50代の男性が人身事故未遂。
関連リンク
参考文献
J-CASTニュース『南海本線で「列車にはねられた人が忽然と消えた」 まるでマンガの1シーンのようなデマが拡散し大騒ぎに』
山形新聞「「人と接触した」貨物列車が緊急停車 酒田の南鳥海駅、羽越本線が遅れ」、2014年11月16日