日本で信用乗車を実現させる2つの方法【コラム】

日本で信用乗車を実現させる2つの方法【コラム】

信用乗車制度ってご存知ですか?

これは毎回切符の料金支払いを確認せず、あくまで乗客の誠実さを信用して運行する制度のこと。

この信用乗車制度を導入すればどの扉から乗り降りしても良くなるので、路面電車やローカル線などでの運賃収受率向上や、ラッシュ時での迅速な乗降による運行時間短縮が期待できます。

 

信用乗車制度は欧州で盛んなのですが、一方でもしその信用を裏切り無賃乗車・不正乗車を行っていた事が露見した場合には、かなり高い罰金を支払う必要があります。

日本でも導入出来ればもっと効率よく電車の乗降が出来るはずなのですが、未だにあいの風とやま鉄道など僅かに留まります。

国内の鉄道事業者が信用乗車制度を導入するには、どうすればいいでしょうか。

 

 

1.罰金を引き上げる

現行の法令(鉄道営業法)では、不正乗車が露見しても罰金は運賃の3倍(乗車料+罰金2倍)までと定められています

新幹線ならまだしも、1乗車200円程度の路面電車では3倍でもせいぜい600円と低額で、あまり抑止力になりません。

スイス・チューリッヒの鉄道では罰金が100スイスフラン(=12,000円)となっており、これぐらいの罰金がないと抑止力にはなりえないでしょう。

Nはるさんの試算では、後述する広島電鉄でのケースでおよそ6,000円程度が妥当なラインと見積もられています。

 

コラム:日本の不正乗車率

一般的に日本人は規則を守り人徳が高いと言われがちですが、実際は全然そんな事ありません。 

広島電鉄では試験的に信用乗車制度を導入したものの1日150人(1.1%)が不正乗車を行い、年間6,000万円の減収に晒されるようになりました。2)

・上品なイメージを持つ阪急電鉄でさえ、現行のフェアライドシステムを導入する前は非常に不正乗車率が高く、導入で年間推定7億5000万円の増収効果があったとしています。 3)

伊賀鉄道では200系投入のタイミングで信用乗車制度をやめ運賃徴収に務めたところ、これまで赤字だった会計が黒字になったというもありますが、文献が確認できず眉唾もののように思います。  1) 4) 5)

 

しかし、先述のように日本の鉄道は法令によって罰金額が定められており、これを改正するのは相当な社会的エネルギーが必要になってきます。

例えば「不正乗車が多発したせいでJRが倒産してしまった」ぐらいの実例があれば動くかもしれません。

 

罰金に対する法的根拠

鉄道…鉄道運輸規程第19条(3倍罰金事項)。および鉄道営業法29条(科料、および書類送検・逮捕の事項)
路面電車…軌道運輸規程第8条(3倍罰金事項)。科料や逮捕についてはなし

 

 

2.無料にする

これまで岡山電気軌道やとさでん交通(高知)が行った政策。そもそも無料にすれば信用乗車もへったくれもなく、いわば横に動くエレベーター的な扱いになります。

とさでん交通では無料にした結果、2.4倍もの利用者が利用したそうです。

 

ただし言うまでもなく莫大なコストがかかりますし、その面倒を誰が見るのか…という話にもなってきます。

先の岡山や高知も「1日だけ」という限定ですし、やはり非現実的な話ではありますね。

 

 

総評

ということで、有力なのは1の「罰金を引き上げる」ですね。

上でも書いたように日本の法律はなかなか動かないので、法改正を行うには相当な社会的エネルギーが必要となってきます。

 

但し、日本の鉄道では「乗越精算」という便利な制度があり、信用乗車制度を導入すれば乗越精算式の存在意義が危うくなるリスクもあります。

法改正を行い、欧州のように信用乗車制度を導入する日がやってくるのか、それとも何か別の技術的ブレイクスルーで信用乗車制度が達成される日が来るのでしょうか。

 

関連リンク

【広島電鉄】信用乗車制度を試験導入→1日150名が不正乗車するようになったという話

 

参考文献

1)  国士舘大学地理学報告『地方ローカル鉄道の上下分離に伴う変容と地域住民―伊賀市・伊賀鉄道を事例に』、川﨑 遼平、2014年3月

2)  当サイト「【広島電鉄】信用乗車制度を試験導入→1日150名が不正乗車するようになったという話

3) 阪急電鉄「キセル乗車防止システムの導入効果」、森裕之

4)  伊賀市政運営会議資料『伊賀鉄道伊賀線の現況と今後について』、7p

5)三重夕凪さんのツイート

西日本新聞『「今度払う」無人駅で不正乗車相次ぐ JR九州は良心頼み…憤りも

Nはるさんのツイート①

 




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