なぜ近鉄「青の交響曲」は新車で作らなかったのか?

なぜ近鉄「青の交響曲」は新車で作らなかったのか?

阿倍野橋~吉野間を走る、近鉄南大阪線の観光列車として導入された「青の
交響曲
シンフォニー

大阪・名古屋~伊勢を結ぶ路線には新しい50000系「しまかぜ」が新造されましたが、青の
交響曲
シンフォニー
は通勤電車(6200系)の改造車です。

そのおかげで、乗ってるとポンポンはねるはねる……

「しまかぜ」と異なり、「青の交響曲」はいったい何故新しい電車として製造されなかったのでしょうか。

 

 

理由は簡単

ズバリ、その答えはコストにあります。

 

編成あたり 1両あたり
しまかぜ(先行編成) 18.5億円 3億円
しまかぜ(量産編成) 14億円 2.3億円

モデルとなった「しまかぜ」の導入費用には、設計・開発費がかかる先行編成(2本)で37億円、設計費がかからない量産分の増備編成で14億円もの費用がかかっています。

しまかぜの走るルートには近鉄関連の施設も多いことから、近鉄電車単体としてではなく「近鉄グループ全体として」投資を行ったそうです。

また、沿線にある伊勢神宮の式年遷宮にあわせて新型の特急を作る文化があるので、反対する人も少なかったのだそうです。

 

式年遷宮(しきねんせんぐう)とは?

伊勢神宮で20年に1度行われている、神社の建替え工事のこと。莫大な費用がかかるにも関わらず、西暦690年から20年に一度行われています。
前回は2013年で、しまかぜもこれにあわせて作られました。次の式年遷宮は2033年なので新型近鉄特急もそこにあわせて登場する可能性があります。

 

 

回収できない

一方、「青の
交響曲
シンフォニー
」を新車として導入した場合、設計から車両費まで6億円以上の費用がかかる見込みであったといいます。

「しまかぜ」と異なり6億円以上のコストを掛けて新車を導入しても、南大阪線ではその投資費用を回収できない可能性がありました。

 

南大阪線特有の特急事情として「吉野桜で有名な春はたくさんの人で賑わうものの、それ以外はそこまで乗車されない」という点があります。

平日朝ラッシュ時には看板特急の「さくらライナー」が8両を組むほどですが、ラッシュ時以外の乗客はまばらで2両の特急が行き交うほどに空いています。(何故2両でも特急を動かすのかは、以前にもご紹介しましたね。

また、伊勢方面と異なり吉野方面にはあまり近鉄グループの施設がないことから、「近鉄電車単体としての投資」とする必要もありました。

 

・繁忙期は毎年桜の咲く季節だけ
・朝夕ラッシュはそれなりにいるものの、データイムは2両のみ
・近鉄関連施設が少なく。グループとしての投資は行えない

 

ましてや観光専用に特化させた場合、日常的な電車としては使えなくなり、乗車定員も少なくなることから更に費用を回収できません。

このことから、当初はさくらライナーのように「観光”にも”使える電車」を要望していたそうです。

 

編成あたり 1両あたり
しまかぜ(量産編成) 14億円 2.3億円
青の交響曲(新車の場合) 6億円 2億円
青の交響曲(改造の場合) 2億円 0.6億円

 

結果的にはその意見は退けられて「観光専用列車」として竣工するのですが、先述のように投資費用の回収が難しいことから青の交響曲は改造車として竣工しました。

その費用は3両編成で僅か2億円だったそうで、先程のしまかぜ(量産編成)の1/7になります。

 

また、改造の種車に特急ではなく通勤電車が選ばれたのは、「2両では短すぎ4両では長すぎる」という理由からです。

南大阪線特急は原則的に2両か4両でのシステムが組まれており、改造の種車となる3両の適当な列車が見当たらなかったのです。

 

 

関連リンク

なぜ近鉄は特急を2両でも運転するのか?

【近鉄】1名乗車も可能!新型観光特急「あをによし」の料金を発表

 

参考文献

堀内 重人『「しまかぜ」「青の交響曲(シンフォニー)」誕生の物語―魅力ある観光特急の開発をし続ける大手民間鉄道・近畿日本鉄道の挑戦!!

 



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