近畿日本鉄道の特急車両である80000系「ひのとり」用車両が、2020年度グッドデザイン・ベスト100賞を受賞しました!
グッドデザイン・ベスト100とは、その年の全てのグッドデザイン賞受賞対象の中「審美性、提案性、可能性など総合的に優れている」と高い評価を受けたプロダクト100点だけが受賞する、要はグッドデザイン賞の中でもより特別な賞です。
製造を担当した近畿車輛や、デザイン設計を行ったGKインダストリアルデザインも共同で受賞しています
鉄道車両では唯一の受賞で、乗り物ではこの他トヨタ「ハリアー」、ダイハツ「タフト」、旅客船「シースピカ」などが受賞しています。
その評価は座席にあり
審査員のコメントを見ていると、どうもその評価対象はバックシェル型の座席にあるようです。
近鉄特急は、都市間特急の新しいスタンダードを再定義したと言えよう。都市間特急において乗客の多く
は「寝る」。リクライニング座席を倒すと、その後ろの乗客が不快に思うことが多かった。逆に気を使って、十分にリクライニングを倒すことができない乗客も多かった。そんなきめ細かいニーズ分析から生まれたバックシェル座席が、全座席に展開されている。そのぶん定員が減ったが、これは経営側も相当に覚悟しただろう。近鉄は車両を30年以上、末永く大事に使い続ける会社だ。長く飽きられない普遍的なデザインと空間、経営が一体になって、未来に向かって覚悟を決めたフラッグシップを高く評価したい。
ーグッドデザイン賞審査委員(根津 孝太、内田 まほろ、川西 康之、森川 高行 )による評価
開発にあたって、近鉄側はこのような説明をしています。
●開発に際してはマーケットインの考え方を重視し、複数回にわたるアンケート調査により、お客様のニーズを広く吸い上げることで、新しい時代にふさわしい特急車両を目指した。
●特に、座席のリクライニングについては約8割の方が後ろの方に気を遣うという結果が得られたことから、シートを最大までリクライニングさせた範囲を覆い、気兼ねないリクライニングを可能にする「バックシェル」を全座席への導入を決断した。
●また、インバウンド需要の拡大も意識し、海外のお客様でも快適に利用できるよう設備・案内標記に配慮した。
●エクステリアデザインは、名阪特急のリブランドを意識しながらも、決して流行や瞬間的なインパクトなど表層的なスタイリングではなく、利用者や沿線住民の記憶に残る原風景を創る重要な要素の一つとして、30年後も色褪せない、本質的な造形を追求した。
●全座席へのバックシェル設置は、前後間隔拡大による座席数減少につながり、営業面からは反対意見もあったが、「お客様の体験価値向上」を第一義として採用した。併せて、バックシェル自体が圧迫感を与えないよう、客室と調和する形状やCMFに配慮し、これまでにない「くつろぎ空間」を実現した。日本初の全座席バックシェル仕様が今後の有料特急車両の標準になると考えている。
●また、カフェスポット、ベンチスペース(多目的空間)、ロッカーなどサービス空間の設置により、編成全体として、すべてのお客様の体験価値を向上させ、都市間特急の新たなスタンダードにふさわしい車両とした。
●エクステリアデザインでは車体フォルムに加え、それを際立たせる深いメタリックレッド塗装にこだわった。数年毎に再塗装することからの保守性と晴天・曇天時ともに気品ある色合いを実現させることの両立に苦慮したが、数十種類の試作を重ねることで実現した。
近鉄80000系「ひのとり」、受賞おめでとうございます!
今年のブルーリボン賞は、80000系ひのとりが奪取できそうですね!笑