【書籍レビュー】昭和モダンの百貨店文化が麗しい「百貨店ワルツ」

【書籍レビュー】昭和モダンの百貨店文化が麗しい「百貨店ワルツ」

世界第六位の都市にまで上り詰め、大大阪時代(だい・おおさかじだい)と呼ばれた大正~昭和初期の大阪は、まさしく大正ロマン・昭和モダンな百貨店文化の時代でありました。

と活字や古いモノクロ写真では知っていても、今ひとつイメージしづらい…という方も多いかもしれません。

そんな昭和モダンの百貨店文化を、漫画とイラストでスッとイメージできる、マツオヒロミ氏著作の「百貨店ワルツ」を今回Kindleで購入しました。

百貨店ワルツ (リュエルコミックス)
実業之日本社 (2016-02-19)
売り上げランキング: 98,758

 

Twitterで「買うべきか?」とアンケートを取ってみても100%の方が「買うべき」と判を押してくださった本です。笑

ほらね?笑

 

書籍概要

仮想の百貨店である「三紅百貨店」を舞台にした、20世紀初頭の物語。作者はあとがきで「大丸心斎橋店をイメージした」と書いています。

1冊を百貨店に見立てて、各階のフロアごとにそれぞれのエピソードや商品イラストで構成されています。それはまるで、読者が本当に三紅百貨店を闊歩しているかのよう。

二十世紀初頭、ある地方都市にある虚構のデパート「三紅百貨店」が舞台。
壮麗な建物の屋上には巨大観覧車。華やかで近代的な店内装飾に囲まれた各売場にはモダンとロマンチックが散りばめられています。
一階から六階、そして屋上…。各売場の様子、そこにいる人々や商品を漫画とイラストでご紹介。ひとつひとつにこだわりをもって描かれたディテールには思わず見とれる美しさ。鮮やかな色づかいと繊細な筆致で描かれた東洋と西洋が混ざりあう近代浪漫をお楽しみください。

■一階……服飾品部・雑貨部イラスト、漫画「売場迷宮」
■二階……美粧部・化粧品部イラスト、漫画「遠つ国の花の香は」
■三階……呉服部イラスト、漫画「秋をそぞろ歩けば」
■四階……婦人服部、漫画「初めての洋装」
■五階……紳士服部・文具部・喫茶室
■六階……大食堂、漫画「商いに就いて」
■屋上……屋上庭園
●各階にミニコラム付き
■宣伝部資料室……三紅百貨店のPR誌やポスターを展示

建物から商品のひとつひとつまで、まるで実在したかのように描かれた「三紅百貨店」。1900年代初頭にタイムスリップしたかのような錯覚に陥りながら、モダンでロマンチックなお買い物のひと時をお楽しみください!

出典:Amazon商品説明欄より

 

 

商に就いての答

出典:マツオヒロミ『百貨店ワルツ』(2016.1) より

この中で、特に惹かれたのが「6階 大食堂」の部分。実在の人物で詩人であった尾形亀之助の詩「商いに就いて」を引用した漫画が素敵過ぎました。

出典:マツオヒロミ『百貨店ワルツ』(2016.1) より

 

作中でも彼らしきモチーフのイケメンが、取り巻きの女の子にそれを語るシーンがあるのです。

もしも私が商(あきなひ)をするとすれば
午前中は下駄屋をやります
そして
美しい娘に卵形の下駄に赤い緒をたててやります

午後の甘ま[#「ま」に「ママ」注記]つたるい退屈な時間を
夕方まで化粧店を開きます
そして
ねんいりに美しい顔に化粧をしてやります
うまいところにほくろを入れて 紅もさします
それでも夕方までにはしあげをして
あとは腕をくんで一時間か二時間を一緒に散歩に出かけます

夜は
花や星で飾つた恋文の夜店を出して
恋をする美しい女に高く売りつけます

出典:尾形亀之助『色ガラスの街』内、「商に就いての答」より
青空文庫:http://www.aozora.gr.jp/cards/000874/files/3213.html

 

出典:マツオヒロミ『百貨店ワルツ』(2016.1) より

 

見てくださいこの美しいイラスト。この伏し目がちな美しいお嬢様がもう素敵すぐる…

どこか現実離れした、まるで夢の中のような当時の世界観を現代で楽しむことの出来る良書です。

 

 

Amazonのレビューでも星5レビューが70%、全体平均値が4.2と絶賛されています。

正直、ためらいながら手に取りました。
ああ。。デパートの楽しさってこうなんだなあと思いましたよ。
イラストがとても素敵。
架空のデパートですが、イラストですが、デパートのイリュージョン感が写真より伝わります。
眺めては楽しい気持ちになっています。

出典:Amazon商品レビューページ (2018年5月6日閲覧)

 

この世界観、感動しました
なんて夢のある世界なんだろ、、、
今までヨーロッパの古い物が好きだったけど
日本人に生まれて良かったと思えた本

出典:Amazon商品レビューページ (2018年5月6日閲覧)

 

もう、見て! 感動して! としか言いようがないです。
あのイラストが、百貨店の広告になっていたり、ポスターになっていたり。当時、百貨店で売られていたであろう商品がちりばめられていたり、当時の、少女の夢と希望と憧れが詰まっていたり。溜め息がでちゃうくらいに美麗なんです。
惜しむらしくは、本のサイズが小さいことぐらいでしょうか。

モダンガールとか着物とか、大正時代のあの雰囲気が好きなひとには超絶オススメな作品です!!!!

出典:Amazon商品レビューページ (2018年5月6日閲覧)

 

地下鉄と百貨店と昭和モダン

namba

当時は大正ロマンから昭和モダンへの移行が完了した頃合いです。大正モダンの方が知名度がありますが、昭和モダンはより時代が進み、和洋折衷な文化や建築が進んだ素晴らしい時代です。作中でも和の着物と洋の洋服とをマッチングさせた人物が多数登場しています。

当時は最先端のハイテクな…いや、ハイカラな乗り物である地下鉄(御堂筋線)が開業したのも、この昭和モダンまっただ中の昭和8年(1933年)でした。

 

心斎橋には華やかな「大丸百貨店」「十河(そごう)百貨店」が開業し、梅田にも初のターミナル形百貨店「阪急百貨店」が開店し始めていました。

更に長堀橋に出店していた「高島屋」が難波に移転、天王寺には阪急と同じくターミナル形百貨店である「大鉄百貨店(現在の近鉄百貨店)」と、この頃の大阪は矢次早に百貨店が開業していました。

さらに心斎橋では大丸・そごうが地下鉄との出口を一体的に整備、地下鉄側も集客のためにそれに協力するという、お互いの利益が一致していました。東京でもこれは同様で、まさに地下鉄は百貨店文化と切っても切れない関係だったのです。

 

私は地下鉄趣味が高じてこの時代の新聞などの古い文献を調べていたのですが、そこからこの昭和モダンな世界に興味が湧いてきまていました。そこにこの「百貨店ワルツ」という良書を見つけたことで、ますますこの時代への理解が深まったように思います。

 

 

百貨店ワルツ (リュエルコミックス)

百貨店ワルツ (リュエルコミックス)

posted with amazlet at 18.05.06
実業之日本社 (2016-02-19)
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