名古屋市営地下鉄の東山線は、大阪で言う御堂筋線のような名古屋市におけるメインの地下鉄路線であるにも関わらず、車幅2,550mm、高さ3,450mmとかなり小さく作られています。
その影響で、随一の利用者数を誇る名古屋駅はもうパンパンで、駅の島式ホームは苦肉の策として南北にズラした形となっています。
参考データ
・名古屋市営地下鉄東山線:車幅2,550mm、高さ3,450mm
・大阪市営地下鉄御堂筋線:車幅2,900mm、高さ3,750mm
・東京メトロ銀座線:車幅2,800mm、高さ3,500mm
なぜ小さいのか?
名古屋の主力路線である東山線が、何故こんなにも小さく作られたのでしょうか?
最初で実績がなかった東京の銀座線・大阪の御堂筋線とは異なり、既に先例があり十分なデータを取れる環境であったにも関わらず、東山線が小さくなった理由としてはこんな記載があります。
(a)無音電車とするため車両構造上から車両重量を軽くする必要があり、そのため車両を小型とする
(b)地下隧道の建設費をできるだけ少なくするため隧道断面を小さくする。
(c)東京および大阪と名古屋の都市の大きさ、あるいは周辺都市の分布状況などから考慮して小型でも十分である。出典:名古屋市交通局高速度鉄道建設部計画課『名古屋市高速度鉄道建設史』92-93p
1つ1つ解説していきましょう。
理由その1:路面電車の技術を応用したから
(a)の無音電車というのは、名古屋市電(路面電車)である1900形電車の設計思想で、いわゆる「PCCカー」のことを指します。
最新の路面電車「PCCカー」の技術を応用して東山線の初代車両を作ろう…という構想からスタートすると、自ずと小型軽量の電車が必要になる、だから小さくしたのが1つ目の理由です。
理由その2:トンネル建設費を安くするため
2つ目は(b)の項目。地下鉄で最も初期費用がかかるのはトンネルの掘削費です。
これを少なくするには、なるべく小さい径のトンネルを掘る必要が出てきます。東山線はコスト圧縮のため、敢えて小さいトンネルを掘ったことが2つ目の理由です。
理由その3:東京・大阪と比較した結果
3つ目の理由としては、既に地下鉄が出来ていた東京・大阪と都市そのものの大きさ、周辺都市の状況を比較して「この大きさで十分」と結論づけたのが理由です。
理由2・3のどちらも費用的な問題や将来の不安を鑑みてのことであったようですが、この時代の名古屋の方は今日の名古屋・愛知経済の発展ぶりがここまでになるとは思いもよらなかったのかもしれません。
まとめ
つまり、東山線のサイズが小さいのは「路面電車の技術を応用する為」と「将来の費用的な不安視」のためといえます。
昔から名古屋の方はこういった堅実な経営思想があり、バブル崩壊期には殆ど被害を受けなかったそうです。
私は、名古屋・中京圏の方のこういった堅実な経営思想や文化を心からリスペクトしています。
名古屋市営地下鉄ギャラリー
のちの記事使用の為に、ここへアップロードしておきます…
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