10月30日、南海電気鉄道は2020年度における中間決算(2020年4月1日~9月30日までの収支)を発表しました。
JRをはじめとした鉄道系企業はどこも厳しい決算が続いていますが、南海電鉄においてはやや事情が異なるようです。
…なんと、営業利益において黒字化を達成しています。
営業利益とは?
その企業が、本業の仕事をして儲けた金額のこと。売上高から仕入れたモノの原価・人件費・光熱費などを差し引いた商売における基本的な数字。
決算内容
売上高 | 営業利益 | 純利益 | |
2020年度9月まで | 909億円 | 2億円 | ▲19億円 |
2019年度9月まで | 1168億円 | 211億円 | 133億円 |
上が2020年、下が2019年の数値です。
かろうじて…ではありますが、2億円の営業利益達成。しかしながら他の鉄道事業者が過去に例を見ない大幅な赤字を出すこのご時世で、この数字は立派としか言いようがありません。
尚、営業利益から税金などを引いた純利益では19億円の赤字になります。
その理由は?
端的にいうと「鉄道以外の事業が全て好調だった」ことに尽きます。
「不動産業」「流通業」「レジャー・サービス業」「建設業」…これら全てが黒字化を達成し、コロナの打撃を受けた鉄道を支えました。
代表的な事業の収支
運輸部門(鉄道・バス)
売上:307億5200万円(41.3%減)
営業利益:▲88億300万円(前年は93億8800万円の黒字)
不動産部門
売上:216億6000万円(6.7%減)
営業利益:+70億1900万円(7.3%減)
流通部門(なんばパークス等)
売上:119億1300万円(28.9%減)
営業利益:+7億6100万円(65.3%減)
レジャー・サービス部門(ビルメンテナンス等)
売上:156億3300万円(24.0%減)
営業利益:+6億6900万円(58.9%増)
建設部門(南海辰村建設等)
売上:202億100万円(13.5%増)
営業利益:+3億5300万円(38.9%減)
昨今のインバウンドの追い風を受けて鉄道各社は軒並みホテル事業を拡大しましたが、今回のコロナ騒ぎで客足が伸びず、非常に重荷となっています。
しかしながら南海電気鉄道は、自社経営ホテルをほんの僅かしか持たず、他社に追従していません。派手さはないものの、不動産などを筆頭に極めて堅実な稼ぎ方をしています。
例えば「レジャー・サービス業」という部門を見てみましょう。
レジャーというものの、内訳には「ビルメンテナンス」「ボートレース(住之江競艇場)」「葬祭事業(葬儀会館ティア)」と電鉄企業としては異色の、不況に強い事業割合が多いのです。
堅実なビジネスモデルへ転換中
こういった「同業他社で当たり前の事をやらない逆張り」と「徹底したリスクオフの姿勢」が、今回の決算に結びついているようですね。
かつては野球球団の南海ホークスやみさき公園など鉄道企業らしい事業も展開していましたが、いずれも既に手放し、堅いビジネスモデルへの転換を図っています。
以前の記事でも書きましたが、南海は京阪へホテル事業を任せるなど、自社ではホテルを建設しない方針を現在でも貫いています。
関連リンク
【決算】JR西日本、中間決算発表。売上高は前年度比-48%
【決算】JR東日本・JR東海、収入激減。中間決算の売上高は去年の半分にも届かず…
参考文献
南海電鉄「2021年3月期 第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」