現在、大阪と京都の路面電車におけるターミナル駅のリニューアル工事が進んでいます。
どちらの駅も「延伸計画があって手を付けられなかったが、取りやめ/有耶無耶になった」経緯があるという点で共通しています。その辺の事情も踏まえて詳しく見てみましょう。
大阪…阪堺「恵美須町駅」
大阪では、阪堺電気軌道の恵美須町駅で工事が行われています。2020年2月1日の移転を予定しています。
新ホームは1面1線のホームになる予定で、南方に100m短縮・移転する計画です。
同駅は開業後100年に渡って、この位置で営業を続けてきました。
当初は2路線のターミナル駅でしたが、のちに1路線(平野線)の縮小に伴って阪堺線のホーム2本が機能するようになりました。昨年10月ごろからはこのうち1本が削られ、現在は1番線のみで運用されている状態です。
阪堺では天王寺駅前駅のリニューアル（2016年）に続く、ターミナル駅のブラッシュアッププランとなります。
延伸構想：停滞中
出典：「日本橋にトラムを通してにぎわいを進める会」 公式facebookページ
阪堺線は、2015年頃に堺筋を北進して「なんさん通り」に入り難波へ到達する構想がありましたが、現在も手つかずのままとなっています。
一応2019年6月3日に大阪市会の都市経済委員会において陳情書が出されてはいるので、現在も引き続きそのような動きはあるようです。
出典：「日本橋にトラムを通してにぎわいを進める会」 公式facebookページ
同ページによると、恵美須町駅から恵美須交差点を跨いで堺筋へ進入します。
そこから地下鉄恵美須町駅北側改札口周辺、日本橋四丁目、日本橋三丁目南（ポポンデッタ日本橋店前）、日本橋三丁目（高島屋別館前）までを複線で建設、そこから単線として難波中2丁目、終点難波駅前までをつなぐルートとなっています。
最新の工事状況
【2020.1】阪堺恵美須町駅の工事状況…駅舎工事が進む
京都…嵐電「北野白梅町駅」
京都では嵐電（京福電気鉄道）の北野白梅町駅で工事が進行中です。2020年3月の竣工を予定しています。
新ホームは2面1線の単線ホームになる予定で、西方に短縮・移転と共にバリアフリー化やバスターミナルの併設を行う計画です。
北野白梅町駅は、「北野駅」と「白梅町駅」の統合によって昭和30年頃に出来た駅です。開業後半世紀ほどに渡って営業されてきましたが、建物や設備にかなり年季が入っていました。
新駅のイメージ。阪堺と違ってこちらは完成予想図が公開されています。
嵐電では、嵐電天神川駅・撮影所前駅の開業に続く嵐電のネットワーク強化の一環として、今回この北野白梅町駅のリニューアル事業に取り組んでいます。
延伸構想：頓挫
出典：京都市「今出川通におけるＬＲＴ交通社会実験 実施結果の概要」
嵐電北野線は「今出川線構想」として、京都市が北野白梅町駅と叡山電鉄出町柳駅・銀閣寺間に新規LRT路線を建設して、そこに両線をつなぐというプランを立てたことがありました。
このプランでは金閣寺や銀閣寺・北野天満宮、京都大学・同志社大学などを経由することになり、現在バスで交通麻痺をするレベルの京都市交通におけるインフラ整備としても有用かと思われ、実際にバスを用いて交通実験も行われました。
実験結果としては以下の意見が挙がっています。
・沿線住民の約６割が日常生活への影響は「なかった」と回答。
・一方，約３割が，影響は「あった」と回答し,「市バスの遅れ」や，「配送の遅れ」等の渋滞による影響を指摘。
・ 沿道商業者は約 65％が実験による影響があったと回答。
・ 具体的な影響として，「客足が減った」「荷物の配送が遅れた」ことなどを指摘。・沿線住民の約６割が，交通渋滞が「気になった」「少し気になった」と回答。
・ また，沿道商業者の約８割が，交通渋滞が「気になった」「少し気になった」と回答。
・ この他，乗車モニターも，約８割が交通渋滞が「気になった」「少し気になった」と回答。
これらの理由から、特に沿線住民からの反対の意見が多く（50%超え）、沿道商業従事者に至っては7割が反対意見に回るなどの結果となりました。
ただ、今回の北野白梅町駅のリニューアル工事ではある程度延伸も見越した構造にはなっているようで、今後の動き次第では中間駅へ返り咲く可能性もあるかもしれませんね。
最新の工事状況
【2020.1】北野白梅町駅の工事の状況…駅舎が完全になくなる
関連リンク
【コラム】谷町線と阪堺（南海）電車は直通計画が構想されていた
