「サインシステム」と呼ばれる言葉があります。鉄道駅においてはある程度統一されたデザイン・ルールに基づいて作られた案内標示のことを指します。俗に言う「駅の看板」です。
サインシステムは、その鉄道企業の世界観を演出するものであり、デザインの理解力をも示すものです。
例えばブランディングに古くから熱心な阪急では、いち早く丸文字「ナール」を採用しましたし、南海では関西空港の開港にあわせてサインシステムを新しく制定。
現在でも使用フォントの差異はあれど、1992年当時のサインマニュアルのまま使用されるなどデザイン・完成度の高いものとなっています。
サインシステム≠ピクトグラム
で、この「サインシステム」という言葉なんですが、文献などを調べるとどうも昔のものが出てこない。
最初のサインシステムは1964年の東京オリンピックと言われていますから、少なくとも1964年ぐらいまではあって然るべきはずなんですが、見つからないのです。
「サインシステム」でもっとも古い文献は、「京王帝都電鉄のサインシステムについて (照明・負荷設備特集)」という論文で、1988年5月のものです。
【追記】
https://twitter.com/denshageek/status/1094692446233980928
もじ鉄の石川さんからこのような御意見を頂きました。1972年に営団地下鉄で使用されていたとあります。ただし、文献としては「新設計書体〈ゴシック4550〉」が1980年に出版されているものとなります。
また、別の方からは「大阪市交通局75年史(1980年)」、320ページに「案内表示・サインシステム」との表記があるとのこと御意見を頂きました。
文献として最も古いといえばこの2冊のどちらかのようで、1980年以前では見つかっていません。
追記ですみません。
— ぶるーばーど@旅とまちなみとパインどうでしょう~ (@pinenoame) March 3, 2019
化粧室やきっぷうりばの位置を示す案内は、『鉄道に関する技術基準(土木編)p.575』では位置サインというそうです。
ただ、207さんの記事に書かれてるこれら案内表示を一括したサインシステムのような用語は、技術基準にはないようです。
また、別の文献(鉄道に関する技術基準(土木編)では、誘導サインという呼ばれ方をしているようです。
また、80~90年代では「印刷用書体」のことを「タイプフェイス」と読んでいる文献も見られます。
1979年以前は?
1980年以前にまで遡る場合、どうも「サインシステム」を指す言葉が他にあるようです。
・案内標示
・案内標識
あたりが怪しいと思っていたのですが
・ピクトグラム
が一番多くヒットしました。
厳密にはピクトグラムは絵文字のことを指し、サインシステムよりも狭い範囲を指す言葉なのですが、「ピクトグラムを活用した自動出改札への誘導案内(1983年)」という論文があります。
古いサインシステム関係の文献を探しておられる方は、「ピクトグラム」であたってみるとよさそうです。
結論
ということで、「サインシステム」についての古い文献をあたる際にサーチできそうな言葉は、
・誘導サイン
・駅サイン
・タイプフェイス
が挙がり、更に古い1979年以前だと
・ピクトグラム
・案内標示
・案内標識
あたりだと良好な結果を得られそうです。
参考ツイート・文献
サインシステムの大家、赤瀬先生の本が手元にあったのでみてみると、おおむね東京五輪から万博までは「サイン計画」、73年の営団「サインシステム検討PT」からはサインシステムの語が出てきた。だいたい70年代以降なのかな。https://t.co/iWx7ncxhwR
— N.(はるさん) (@haru9629) February 12, 2019
「ピクトグラムを活用した自動出改札への誘導案内(1983年)」
「京王帝都電鉄のサインシステムについて (照明・負荷設備特集) (1988年5月)」
「大阪市交通局75年史(1980年)」、pp.320に「案内表示・サインシステム」との表記ありとのこと
「新設計書体〈ゴシック4550〉(1980年2月)」